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2022/04/15

従業員の副業について

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Question

 就業中に頻繁に居眠りをしている従業員を注意したところ、夜間にアルバイトをしていることが分かりました。

ア 従業員に対しアルバイトを禁止することはできますか。
イ 就業規則に副業禁止の規定があるにもかかわらず無断でアルバイトをしている場合、従業員を懲戒処分できますか。

Answer

ア 労務提供に支障が生じる場合等の一定の場合には禁止することも可能です。
イ 副業により企業秩序を乱したといえる場合には懲戒処分もなし得ます。

ポイント

  • ・労務提供に支障が生じる場合等の一定の場合には、副業を禁止することができる。
  • ・就業規則に副業禁止の規定があったとしても、副業の事実のみをもって直ちに懲戒処分の対象とはならない。
  • ・懲戒処分を行う際には、副業をした結果、企業秩序を乱したか否かという実質的な判断が必要となる。

目次

1.副業に関する法規制

 現在、副業に関する法的な規制はありません(ただし、公務員の場合を除きます)。そのため、企業は副業に関するルールを各自で決定することができます。  もっとも、これまでの裁判例では、労働者が就業時間以外の時間をどのように過ごすかは原則として労働者の自由であり、企業が副業を禁止することができるのは一定の場合のみと判断されています。  そこで、以下では企業が副業を禁止できる場合はどのような場合かをご紹介いたします。

2.企業が労働者の副業を禁止できる場合

(1) 副業を禁止できる場合

 これまでの裁判例に鑑みると、次のような場合には副業を禁止できるといえます。

➀ 労務提供に支障が生じる場合
 労働者は、労働契約上の義務として職務専念義務を負っています。そこで、職務専念義務に反するような副業、すなわち労務の誠実な提供に支障を来すような副業は禁止できるといえます。裁判例においても、会社に無断で就業時間終了後に毎日6時間キャバレーの会計係として二重就職をしていた事案において、「軽労働とはいえ毎日の勤務時間は六時間に互りかつ深夜に及ぶものであつて、単なる余暇利用のアルバイトの域を越えるものであり、……労務の誠実な提供に何らかの支障をきたす蓋然性が高いものとみるのが社会一般の通念であり、……無断二重就職行為は不問に付して然るべきものとは認められない。」と判断されています(東京地裁昭和57年11月19日判決、労判397号30頁)。

➁ 競業避止義務違反・秘密保持義務違反が生じる場合
 労働者は、在職中において使用者と競業する業務を行わない義務(競業避止義務)及び業務上知り得た企業の秘密を守る義務(秘密保持義務)を負っています。そこで、競業避止義務に反するような副業、すなわち使用者の正当な利益が侵害されるような副業や労働者が企業の秘密を漏洩するような副業は禁止できるといえます。食料原料等を輸入・販売する会社の従業員が在職中に競業会社を設立した事案において、このような行為は競業避止義務に違反し、従業員に対する損害賠償請求が認められると判断した裁判例もあります(東京地裁平成11年5月28日判決、判時 1727号108頁)。

➂ 会社の名誉・信用を損なう行為や会社との信頼関係を破壊する行為がある場合
 労働者は、労働契約上の義務として、使用者の名誉・信用を損なわない等、誠実に行動する義務義務(誠実義務)を負っています。そこで、会社の名誉・信用を損なう行為や会社との信頼関係を破壊する行為がある場合の副業は、これを禁止することができるといえます。体調不良による休職中に会社から給与を一部支給されたまま無断でオートバイ店を開店し営業していた労働者を懲戒解雇した事案において、当該労働者の行為は雇用契約における信頼関係を損なうものであるとして、これを有効と判断した裁判例もあります(東京地裁八王子支部平成17年3月16日判決、労判893号65頁)。

(2) 設問の場合

 設問の場合、夜間のアルバイトが原因で就業中に頻繁に居眠りをしているとのことですので、本業の労務提供に支障が生じていることが明らかであると考えられます。そこで、このような場合には、夜間のアルバイトの時間を制限することができると考えます。また、本業の業務内容によっては就業時間以外の時間は労働者の休息に充てた方が望ましい場合もあり、夜間のアルバイト自体を禁止することもできる場合があると考えられます。

3.副業していることを理由に労働者を懲戒処分できるか

 では、就業規則に副業禁止の規定があるにもかかわらず無断でアルバイトをしている場合、従業員を懲戒処分できるでしょうか。  この点については、副業をしているとの形式的な判断ではなく、副業をした結果、企業秩序を乱したか否かという実質的な判断が必要です。裁判例には、就業規則で禁止している二重就職には、会社の企業秩序に影響せず、会社の労務提供に格別の支障を生ぜしめない程度のものは含まれないとしたものがあり(名古屋地裁昭和47年4月28日、判時680号88頁)、二重就職の事実をもって直ちに懲戒処分の対象とはならないと判断しています。そこで、就業規則に副業禁止の規定がある場合に無断でアルバイトをしていたとしても、直ちに懲戒処分とするのではなく、懲戒処分とする合理的理由があるか等を検討することが必要です。

紺野 夏海(こんの なつみ)

本稿執筆者
紺野 夏海(こんの なつみ)
法律事務所 ASCOPE所属弁護士

本稿執筆者からのメッセージ

 政府の働き方改革の一環として、副業・兼業の普及促進が図られるようになりました。もっとも、従業員の副業に伴い、企業では従業員の労働時間や健康管理が必要であり、職務専念義務、秘密保持義務等の確保への対応も必要です。副業を認める場合のルール作りをしたいがどのように作成したらよいか分からない、副業によって問題が生じたがどう対応してよいか分からない、といったお悩みがございましたら、是非一度弁護士までご相談ください。

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