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2021/09/29

高度プロフェッショナル制度について

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Question

 高度プロフェッショナル制度を導入したいと思っているのですが、導入するための条件はどのような内容でしょうか。

Answer

 高度プロフェッショナル制度を導入するための条件は、労働者が高度の専門的知識等を有し特定の業務に従事していること、一定の年収要件を満たすこと、労働者本人の同意があること、労使委員会の決議があること、行政官庁へ届け出があること、年間104日以上の休日確保措置や健康管理時間の状況に応じた健康・福祉確保措置等を講ずること、です。

ポイント

  • ・高度プロフェッショナル制度は「働き方改革」で導入された新しい制度。
  • ・高度プロフェッショナル制度が適用されると労働時間等に関する規制が適用除外となる。
  • ・高度プロフェッショナル制度を導入するためには労使委員会での決議が必要。
  • ・高度プロフェッショナル制度の運用中は労働者の健康確保措置が必要。

目次

1.高度プロフェッショナル制度とは

 高度プロフェッショナル制度は、「働き方改革」で導入された制度です。金融商品開発、金融商品ディーリング、アナリスト、コンサルタント、研究開発など(労働基準法施行規則34条の2第3項)の業務を対象とし、この制度が適用されると、時間外労働、休憩・休日及び深夜の割増賃金に関する規制条項の適用が除外されます(労働基準法41条の2)。いわゆる管理監督者(労働基準法41条2号)には深夜労働の割増賃金の支払が必要ですが、高度プロフェッショナル制度が適用された労働者については、深夜割増も適用除外となる点が特徴です。

2.高度プロフェッショナル制度を導入するためのステップ

 高度プロフェッショナル制度を導入する際の流れは次のとおりです。

(1) 労使委員会を設置する

 労使委員会は、賃金、労働時間その他の労働条件に関する事項を調査審議し、事業主に対し意見を述べる委員会で使用者及び労働者を代表する者が構成員となっているものです。労働者代表委員が半数を占めていることが必要です。

(2) 労使委員会で決議をする

 高度プロフェッショナル制度を導入する際は、労使委員の5分の4以上の多数により、必要な事項を決議する必要があります。決議すべき事項は次のとおりです。

  • 対象業務(労働基準法41条の2第1項1号)
     対象業務は働く時間帯の選択や時間配分について自ら決定ができる広範な裁量が労働者に認められている業務でなければなりません。
  • 対象労働者の範囲(労働基準法41条の2第1項2号)
     対象労働者は、対象業務に常態として従事していることが必要です。また、対象労働者の賃金は労働者の平均給与額の3倍を相当程度上回る水準(=1,075万円以上)であることが必要です。
  • 健康管理時間の把握(労働基準法41条の2第1項3号)
     健康管理時間とは、対象労働者が事業場内にいた時間と事業場外において労働した時間との合計の時間のことです。対象労働者の健康管理時間を把握する措置を使用者が実施することを決議で明らかにしなければなりません。
  • 休日の確保(労働基準法41条の2第1項4号)
     対象労働者に年間104日以上、かつ、4週間を通じ4日以上の休日を与えなければなりません。決議では休日の取得の手続を具体的に明らかにすることが必要です。
  • 選択的措置(労働基準法41条の2第1項5号)
     次のいずれかに該当する措置を決議で定め、実施する必要があります。
    • 勤務間インターバルの確保+深夜業の回数制限(1か月に4回以内)
      (始業から24時間を経過するまでに11時間以上の休息時間を確保する必要があります。)
    • 健康管理時間の上限措置(1週間当たり40時間を超えた時間について、1か月について100時間以内又は3か月について240時間以内とすること)
    • 1年に1回以上の連続2週間の休日を与えること(本人が請求した場合は連続1週×2回以上)
    • 臨時の健康診断(1週間当たり40時間を超えた健康管理時間が1か月当たり80時間を超えた労働者又は申出があった労働者が対象)
  • 健康管理時間の状況に応じた健康・福祉確保措置(労働基準法41条の2第1項6号)
     医師による面接指導や相談窓口の設置などの措置を決議で定めて実施する必要があります。
  • 同意の撤回に関する手続き(労働基準法41条の2第1項7号)
     撤回の申出先となる部署及び担当者、撤回の申出の方法等その具体的内容を明らかにする必要があります 。
  • 苦情処理措置(労働基準法41条の2第1項8号)
     苦情の申出先となる部署及び担当者、取り扱う苦情の範囲、処理の手順、方法等その具体的内容を明らかにする必要があります。
  • 不利益取扱いの禁止(労働基準法41条の2第1項9号)
     同意をしなかった労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならないことを決議しなければなりません 。
  • その他厚生労働省令で定める事項(労働基準法41条の2第1項10号)
     その他、決議の有効期間等を決議することが必要です。

(3) 決議を労働基準監督署長に届け出る

 労使委員会の決議は、所定の様式により所轄の労働基準監督署長に届け出る必要があります。

(4) 対象労働者の同意を書面で得る

 対象労働者に高度プロフェッショナル制度を適用するためには、使用者は決議に従い対象労働者本人の同意を書面で得る必要があります。

(5) 対象労働者を対象業務に就かせる

 使用者は、健康・福祉確保 措置や苦情処理 措置の実施など、法令及び決議に従って対応を行います。なお、使用者は、1週間当たりの健康管理時間が40時間を超えた場合におけるその超えた時間が1か月当たり100時間を超える労働者に対し、医師による面接指導を実施する必要があり(労働者安全衛生法66条の8の4)、対象労働者の健康管理時間や休日についての状況は、決議から6か月以内ごとに所轄の労働基準監督署長に報告をすることも必要です。

(6) 決議の有効期限の完了

 高度プロフェッショナル制度を継続する場合には、再度労使委員会で必要事項について決議を行わなければなりません。

紺野 夏海(こんの なつみ)

本稿執筆者
紺野 夏海(こんの なつみ)
法律事務所 ASCOPE所属弁護士

本稿執筆者からのメッセージ

 このように、高度プロフェッショナル制度の導入には多くの条件があります。高度プロフェッショナル制度が適用されると、対象労働者は部長職などの管理監督者ほど経営側に近いわけではないのに割増賃金規制から完全に外されてしまうため、その分多くの条件を定めることで労働者の健康確保を図っています。高度プロフェッショナル制度を導入する際には、制度を導入することで労働者が能力を存分に発揮し、会社として運用可能なものであるかを考えることが必要です。高度プロフェッショナル制度の導入を含め、現状の制度を変更する際には法律に抵触しないかの確認が必要ですので、ぜひ一度弁護士までご相談ください。

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