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同一労働同一賃金 各論(有期労働者の均衡待遇~諸手当など)

 中小企業でも、いわゆる同一労働同一賃金の対応が必要だと聞いています。ガイドライン等もあるそうですが、当社にはそのまま当てはまらないようにも思えます。あまり人件費をあげることも難しいのですが、具体的にどのように対応すればよいのでしょうか。


 法定の考慮要素について、手当や福利厚生などの「性質、目的」に照らし、ガイドラインや裁判例などをも参照しつつ、説得的な立論ないし制度構築をすることが重要です。


佐々木 将太

本稿執筆者佐々木 将太(ささき しょうた)
法律事務所 ASCOPE所属弁護士

  • 【ポイント】

  • ❶諸手当及び福利厚生については、ガイドラインや過去の裁判例を参考にしながら、その性質、目的を吟味した上で、職務の内容など種々の事情を具体的に検討する必要があります。

  • ❷ガイドラインや過去の裁判例で言及されていない手当や福利厚生制度についても、その性質、趣旨、目的、支給の条件となる事象、職務内容、勤務条件などを具体的に検討し、制度設計をする必要があります。

〈目次〉
1 はじめに
2 諸手当について
3 福利厚生について
4 おわりに




1 はじめに
 平成30年6月29日、働き方改革関連法が成立し、いわゆる同一労働同一賃金制度の拡充を図るため、労働契約法、短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律(以下「パート有期法」といいます。)と、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(以下「派遣法」といいます。)が改正されました。いわゆる同一労働同一賃金制度の概要については、「同一労働同一賃金 総論」をご参照いただき、この記事では、正社員と非正規社員の不合理な待遇差が禁止されていることについて(均衡待遇)、特に、諸手当の支給の有無、福利厚生の利用可否、その他休暇などの待遇の相違が不合理であるかについて説明をします。
 また、同一労働同一賃金の対応については、厚生労働省が、「同一労働同一賃金ガイドライン(短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針)」(以下「ガイドライン」といいます。)のほか、「パートタイム・有期雇用労働法 対応のための取組手順書」、「不合理な待遇差解消のための点検・検討マニュアル」(以下「点検マニュアル」といいます。)、「職務評価を用いた基本給の点検・検討マニュアル」(以下「職務評価マニュアル」といいます。)を作成、公開しています。こちらも適宜ご参照ください。



2 諸手当について
(1) 特定の役職・地位に対する手当~役職手当など~
 特定の役職や地位にあることに基づく役割や責任に対して、役職手当や部長手当などの名称で支給される手当があります。
 このような手当については、「通常の労働者と同一の内容の役職に就く短時間・有期雇用労働者には、通常の労働者と同一の役職手当を支給しなければならない」とされています(ガイドライン9ページ)。その理由は、役職に基づく役割や責任に対して報いるという趣旨は、非正規社員であっても妥当すると考えられるからです。
 もっとも、「役職の内容に一定の相違がある場合においては、その相違に応じた役職手当を支給しなければならない」ともされています(ガイドライン9ページ)。
 したがって、同一名称の役職であっても、その責任や業務の内容、所定労働時間などが異なる場合、それらの相違に応じて役職手当の金額が異なるとしても直ちに不合理であることにはなりません。

(2) 特定の業務への従事に対する手当~作業手当、危険手当など~
 一定の危険な作業や、特定の作業環境で労働に従事することに対して、作業手当や危険手当などの名称で支給される手当があります。例えば高所作業や変則勤務などに従事する労働者に対して支給される手当です。
 このような手当については、「通常の労働者と同一の勤務形態で業務に従事する短時間・有期雇用労働者には、通常の労働者と同一の特殊勤務手当を支給しなければならない」とされています(ガイドライン10ページ)。その理由は、一定の負担に報いるという趣旨は、非正規社員であっても妥当することから、原則として、同様に支給しなければならないと考えられているからです。
 判例においても、特定の作業に対して支払われていた作業手当(ハマキョウレックス事件(※1))や、年末年始に業務に従事したことに対して支払われていた年末年始勤務手当(日本郵便東京事件・大阪事件(※2))につき、非正規社員に支給しないことは不合理であると判断されています。


(※1)最判平成30年6月1日(民集72巻2号88頁)

(※2)最判令和2年10月15日(労判1229号58頁、67頁)


(3) 一定の目標などを達成したことに対する手当~精皆勤手当など~
 一定の目標を達成したことに対して、インセンティブとして支給される手当があります。例えば、一定期間無遅刻、無早退、無欠勤であった場合に支給される皆勤手当などです。
 このような手当については、「通常の労働者と業務の内容が同一の短時間・有期雇用労働者には、通常の労働者と同一の精皆勤手当を支給しなければならない。」とされています(ガイドライン11ページ)。その理由は、出勤者の確保や精皆勤を奨励するという趣旨は、非正規社員であっても妥当することから、原則として、同様に支給しなければならないと考えられているからです。
 判例においても、ハマキョウレックス事件、長澤運輸事件(※3)において、正社員と非正規社員とで職務内容が異ならなかったことから、精皆勤手当を非正規社員に支給しないことは、不合理であると判断されています。

(4) 時間外、深夜、又は休日労働に対する手当~割増賃金~
 時間外労働や深夜労働、休日労働に対して、法定の割増率上回る割増手当を支給したり、法内残業(所定労働時間は超えているものの、1日8時間又は1週40時間以内である残業で労基法上、割増賃金を支払う必要はない残業)に割増手当を支給したりする場合があります。
 このような手当については、「通常の労働者と同一の割増率等で、時間外労働に対して支給される手当を支給しなければならない」とされております(ガイドライン11ページ)。
 法定の割増率を上回る割増率を設定している目的は様々なものがありますが、メトロコマース事件第二審(※4)では、正社員に対して、早出残業について法定の割増率を上回る割増手当を支給していたことについて、時間外労働の抑制がその趣旨であり、同趣旨は非正規社員にも妥当するとして、非正規社員につき法定通りの割増率とすることは不合理であると判断されました(この判断は、上告審で審理されず確定しています。)。


(※3)最判平成30年6月1日(民集72巻2号202頁)

(※4)東京高判平成31年2月20日(労判1198号5頁)


(5) 職務を遂行するために支給される手当~通勤手当、出張手当など~
 職務を遂行する前提として、職場までの通勤や出張先までの移動に対して支給される手当があります。
 このような手当については、「短時間・有期雇用労働者にも、通常の労働者と同一の通勤手当及び出張旅費を支給しなければならない」とされています(ガイドライン12ページ)。
 ハマキョウレックス事件では、正社員と非正規社員とで、交通手段及び距離が同じであったにもかかわらず、通勤手当が異なることについて、不合理であると判断されました。
 もっとも、ガイドラインでは、場所的要因や、所定労働日数の違いに応じて金額に相違が生じることについては、問題とならない例があることを指摘しており、すべての場合について、同額を支給しなければならないわけではありません。

(6) 生活保障のための手当~家族手当、住宅手当、単身赴任手当、地域手当など~
 家族がいる場合に支給される家族手当、住宅の賃料負担に対して支給される住宅手当、単身赴任を要する場合の生活費補助のための単身赴任手当、物価の違いに応じて支給される地域手当などの手当があります。
 このうち、単身赴任手当及び地域手当については、通常の労働者と同一の支給要件を満たす、又は同一の地域で働く短時間・有期雇用労働者には、通常の労働者と同一の単身赴任手当又は地域手当を支給しなければならないとされています(ガイドライン13ページ)。これらの手当の趣旨の多くは、家族を扶養していることによる負担、住宅を賃借していることによる負担、単身赴任していることによる二重の生活費の負担、そして物価が高い地域で生活することの負担に対して手当を支給することで、継続雇用を確保するものであると考えられます。このような手当については、非正規社員であっても相応に継続的な勤務が見込まれる場合には、継続雇用を確保するとの趣旨が妥当すると考えられます。
 日本郵政大阪事件では、正社員にのみ扶養手当が支給されていることについて、郵便業務に従事する非正規社員も相応に継続的な勤務が見込まれることから、継続的な雇用確保との趣旨は妥当するとして、非正規社員に支給しないことは不合理であると判断されました。
 一方、ハマキョウレックス事件では、正社員にのみ住宅手当を支給していたことについて、正社員は転居を伴う転勤が予定されており、転居が予定されていない非正規社員と比べて住宅にかかる費用が多くなることが想定されることから、不合理とは言えないと判断されました。



3 福利厚生について
(1) 福利厚生施設などの使用
 事業所にある食堂、休憩室、更衣室や社宅、保養所といった福利厚生施設を使用できる場合があります。
 このうち、食堂、休憩室、更衣室については、同一の事業所で働き、又は同一の支給要件を満たす場合には、短時間・有期雇用労働者には、通常の労働者と同一の施設の利用を認めなければならないとされております(ガイドライン13ページ)。特に食堂や休憩室、更衣室については、正社員と非正規社員とで使用に差異を設ける理由はあまり想定されないことから、不合理と判断される可能性が高いと考えられます。
 一方、社宅については、住宅手当についてのハマキョウレックス事件の判断同様、正社員と非正規社員とで転居の有無、範囲、頻度に差異がある場合が多く、非正規社員は使用できないとの制度も、直ちに不合理と判断されるわけではないと考えられます。

(2) 特別な休暇、勤務免除~夏期冬期休暇、慶弔休暇、健康診断~
 夏期休暇や年末年始休暇、慶弔休暇が設定されていたり、健康診断の際に勤務免除を行う制度があったりすることがあります。
 このうち、慶弔休暇及び健康診断に伴う勤務免除については、「短時間・有期雇用労働者にも、通常の労働者と同一の慶弔休暇の付与並びに健康診断に伴う勤務免除及び有給の保障を行わなければならない」とされています(ガイドライン14ページ)。夏期休暇や年末年始休暇、慶弔休暇は、国民的な慣習として、労働から離れるべき時期であるとの趣旨から与えられているものと考えられます。健康診断についても、適切な労務の提供のために勤務から離れることを確保する趣旨であると考えられます。
 日本郵便東京事件・大阪事件・佐賀事件(※5)では、正社員にのみ夏期冬期休暇が与えられていたことについて、その趣旨を、労働から離れる機会を与えることによる心身の回復を図るとした上で、非正規社員に付与しないことは不合理であると判断されました。
 これらの休暇は、慶弔休暇も含め、国民的な慣習又は適切な労務提供の確保という趣旨に基づき付与される休暇又は労務の免除であることから、勤務内容などに応じて付与しないとの考え方は馴染まないとも考えられ、ガイドラインにおいても、慶弔休暇及び健康診断に伴う勤務免除については、同一に付与すべき場合について前提条件が記載されておらず、原則として同様に付与しなければならないと考えられます。


(※5)最判令和2年10月15日(労判1229号5頁)


(3) 私傷病に対する対応~休職、休暇~
 私傷病(労働災害ではない病気や怪我など)について、休職制度や有給の休暇を設定している場合があります。
 そのような制度のうち、病気休職については、「短時間労働者(有期雇用労働者である場合を除く。)には、通常の労働者と同一の病気休職の取得を認めなければならない。また、有期雇用労働者にも、労働契約が終了するまでの期間を踏まえて、病気休職の取得を認めなければならない」とされています(ガイドライン14ページ)。その趣旨は、病気によって労務提供ができない場合であっても、解雇を猶予し、療養に専念させることで継続的な雇用を確保することにあると考えられます。
 また、休暇については、「通常の労働者と同一の勤続期間である短時間・有期雇用労働者には、通常の労働者と同一の法定外の有給の休暇その他の法定外の休暇(慶弔休暇を除く。)を付与しなければならない」とされています(ガイドライン14ページ)。このような私傷病休暇制度の趣旨は、病気によって就労できない労働者の生活保障をし、もって継続雇用の確保をするものであると考えられます。
 この私傷病休暇に関して、日本郵便東京事件では、正社員と非正規社員との間で(厳密には、無期転換社員との間でも相違があります。)、私傷病休暇の日数が異なり、かつ、正社員については当該休暇を有給としていたことについて、非正規社員であっても、相応に継続的な勤務が見込まれるのであれば、継続的な雇用の確保という趣旨は妥当するとして、有給か無給かの相違については不合理であると判断されました。もっとも、同判決では、「日数につき相違を設けることはともかく」と判断されており、正社員と非正規社員との間で、所定労働時間などに応じて日数に相違を設けるという制度は採りえると考えられます。
 一方、大阪医科薬科事件では、正社員には私傷病欠勤であっても一定期間は賃金を支払っていたことについて、有期労働者について、更新上限が5年と定められていたことなどから、長期雇用を前提としていないとして不合理ではないと判断されました。
 このように、継続的な雇用の確保を趣旨目的とする場合、相応に継続的な勤務が見込まれるか否かを実態に応じて検討し、当該労働者の雇用区分が非正規社員であっても相応に継続的な勤務が見込まれる場合には、日数は別として、有給とするか無給とするかの相違を設けることは慎重に判断すべきと考えられます。



4 おわりに
 本記事では、代表的な手当や福利厚生制度について説明をしました。世の中には、ガイドラインに記載がなく、判例でも言及されていない手当なども存在しています。例えば、固定残業代、能率給や資格手当などについては、ガイドラインで言及されていません。そのような手当についても、当該手当が支給される趣旨、目的や支給される事象を検討し、不合理であるか判断しなければなりません。また、昨今の新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、在宅勤務が増加したことに伴い、在宅勤務手当が支給されている例も散見されます。このような新しい手当についても、その趣旨や目的を明確にして、正社員と非正規社員との間に違いがあるか、違いに応じて支給されているかを吟味する必要があります。

【弁護士への相談について】
 諸手当や福利厚生趣旨は会社によって、様々な趣旨、目的から異なる制度が作られています。また、正社員と非正規社員との間で期待される業務や勤務時間、日数などもまちまちです。したがって、諸手当や福利厚生については、秘跡社員に支給、付与しないことが一律に不合理であるなどというわけではなく、その金額や支給の条件が異なることまで一切否定するものではありません。それぞれの会社の制度設計の合理性については、ぜひ弁護士にご相談ください。


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