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確約手続について

執筆者
青田敏輝(弁護士)/愛知県弁護士会

はじめまして、弁護士の青田敏輝です。
私は、法的紛争に巻き込まれた方々とのコミュニケーションを大切にしています。真の問題点を把握し、ベストな解決に導きたいと考えています。
お困りの方は、お気軽にご相談ください。
どうぞよろしくお願いいたします。

●プロフィール
埼玉県立杉戸高等学校 卒業
明治大学法学部法律学科 卒業
東京大学法科大学院 修了

CHAPTER1

はじめに

1 確約手続の概要

環太平洋パートナーシップ協定の締結及び環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律(平成28年法律第108号)により、独占禁止法違反の疑いについて、公正取引委員会と事業者(事業者団体等及び事業者、事業者団体等の代理人を含む。以下同じ。)との間の合意により自主的に解決するため、独占禁止法第48条の2から第48条の9までに規定する手続(以下「確約手続」といいます。)が導入されました。
確約手続は、排除措置命令又は課徴金納付命令(以下「法的措置」と総称します。)と比べ、競争上の問題をより早期に是正し、公正取引委員会と事業者が協調的に問題解決を行う領域を拡大し、独占禁止法の効率的かつ効果的な執行に資するものとされています。
確約手続は、公正取引委員会が独占禁止法の規定に違反する事実があると思料する場合において、その疑いの理由となった行為(以下「違反被疑行為」という。)について、確約手続に付すことが適当であると判断するとき、すなわち、公正かつ自由な競争の促進を図る上で、必要がある(違反被疑行為が既になくなっている場合において公正かつ自由な競争の促進を図る上で特に必要があるときを含む。以下同じ。)と認めるときに、違反被疑行為を行っている又は行っていた事業者(以下「違反被疑行為者」と総称します。)に対し、独占禁止法第48条の2又は第48条の6の規定により、
①違反被疑行為の概要、
②違反する疑いのある又はあった法令の条項
③及び違反被疑行為を排除するために必要な措置の実施に関する排除措置計画又は違反被疑行為が排除されたことを確保するために必要な措置の実施に関する排除確保措置計画(以下「確約計画」と総称する。)の認定の申請(以下「確約認定申請」という。)をすることができる旨を記載した書面による通知(以下「確約手続通知」といいます。)
を行うことにより開始します。

2 確約手続の流れ

出典:公正取引委員会ホームページより引用(2023年8月8日に閲覧)
確約手続

違反被疑行為者は、確約手続を利用する場合は、確約手続通知がなされてから、「60日以内」に、確約認定申請をする必要があります。

3 確約計画について

⑴ 基本的な考え方

確約計画に記載する排除措置又は排除確保措置(以下「確約措置」と総称する。)の内容は、被通知事業者が個々の事案に応じて個別具体的に検討することとなります。
被通知事業者は、一定の行動に関する措置や事業譲渡等の構造的な措置の申請をすることができるところ、確約計画の認定に当たっては、競争秩序の回復の確保又は将来の不作為の確保の観点から、当該確約計画における確約措置が
①違反被疑行為を排除する又は違反被疑行為が排除されたことを確保するために十分なものであること(以下「措置内容の十分性」といいます。)
②確実に実施されると見込まれるものであること(以下「措置実施の確実性」といいます。)
 を満たす必要があります。

ア 措置内容の十分性

公正取引委員会は、確約措置が措置内容の十分性を満たしているか否かについて、個別具体的な事案ごとに判断しますが、この判断に当たっては、過去に排除措置命令等で違反行為が認定された事案等のうち、行為の概要、適用条項等について、確約手続通知の書面に記載した内容と一定程度合致すると考えられる事案の措置の内容を参考にします。

イ 措置実施の確実性

措置内容の十分性を満たしても、確約措置が実施されないのであれば、違反被疑行為を排除すること又は違反被疑行為が排除されたことを確保することはできません。よって、公正取引委員会は、確約措置が実施期限内に確実に実施されると判断できなければ、確約計画の認定をしません。
例えば、確約措置の内容が契約変更を伴うなど第三者との合意が必要な場合には、当該第三者との合意を確約認定申請時までに成立させなければ、原則として、措置実施の確実性を満たすと認められません。

⑵ 確約措置の典型例

典型的な確約措置として公正取引委員会が考えるものは、後記アからキまでに掲げるものですが、確約措置がこれらに限られるものではありません。また、事件によっては、単独の確約措置で認定要件に適合する場合もありますが、複数の確約措置を組み合わせなければ認定要件に適合しない場合もあります。

ア 違反被疑行為を取りやめること又は取りやめていることの確認等

被通知事業者が
①違反被疑行為を取りやめること又は取りやめていることの確認を行うこと及び
②違反被疑行為を行わないこと
の2点を取締役会等の被通知事業者の意思決定機関において決議することは、措置内容の十分性を満たすために必要な措置の一つとされています。

イ 取引先等への通知又は利用者等への周知

例えば、被通知事業者が取引先等に対して自己の競争事業者との取引を禁止していたことが違反被疑行為に該当する場合などにおいて、競争秩序の回復を確保するためには、前記(ア)について取引先等に通知又は利用者等に周知を行う必要があると考えられます。
このため、前記(ア)について取引先等への通知又は利用者等への周知を行うことが措置内容の十分性を満たすために必要となる場合があります。

ウ コンプライアンス体制の整備

違反被疑行為を取りやめること又は取りやめていることの確認等を確実にするためには、被通知事業者のコンプライアンス体制の整備(定期的な監査及び従業員に対する社内研修の実施を含む。)を行う必要があると考えられています。
このため、違反被疑行為を取りやめること又は取りやめていることの確認等を行う場合は、併せて、コンプライアンス体制の整備を行うことが措置実施の確実性を満たすために必要となる場合があります。

エ 契約変更

例えば、被通知事業者が取引先に対して自己の商品をどの程度取り扱っているか等を条件とすることにより、競争品の取扱いを制限する効果を有するリベート(一般的には、仕切価格とは区別されて取引先に制度的に又は個別の取引ごとに支払われる金銭をいう。)を供給していることが違反被疑行為に該当する場合など、違反被疑行為が既存の契約を背景に行われており、当該契約内容を変更しなければ競争秩序の回復が確保できない場合もあると考えられています。
このため、被通知事業者が当事者となっている契約内容を変更することが措置内容の十分性を満たすために必要となる場合があります。

オ 事業譲渡等

例えば、被通知事業者が自己の競争事業者の株式の保有等をすることが違反被疑行為に該当する場合など、保有する株式の売却等の措置を行わなければ競争秩序の回復が確保できない場合もあると考えられています。
このため、被通知事業者の事業譲渡、保有する株式の売却等を行うことが措置内容の十分性を満たすために必要となる場合があります。

カ 取引先等に提供させた金銭的価値の回復

例えば、被通知事業者が取引先に対して、商品又は役務を購入した後に契約で定めた対価を減額することや、当該取引に係る商品又は役務以外の商品又は役務を購入させることが違反被疑行為に該当する場合には、被通知事業者が収受した利得額や当該取引先の実費損害額を当該取引先に返金することが措置内容の十分性を満たすために有益なものとされています。

キ 履行状況の報告

確約措置が措置内容の十分性を満たす場合であっても、実際に確約措置が履行されないのであれば、競争秩序の回復が確保できないものとされています。
このため、確約措置の履行状況について、被通知事業者又は被通知事業者が履行状況の監視等を委託した独立した第三者(公正取引委員会が認める者に限ります。)が公正取引委員会に対して報告することは、措置実施の確実性を満たすために必要な措置の一つであるとされています。
なお、報告の回数は、確約措置の内容に応じて設定する必要があります。

CHAPTER2

確約計画が認定された事例(ケーススタディ)

1 楽天トラベル事件

公正取引委員会が、A社に対し、A社の後記2の行為が独占禁止法第19条 (不公正な取引方法第12項〔拘束条件付取引〕)の規定に違反する疑いがあるものとして、令和元年7月23日、確約手続通知を行いました。

2 被疑違反行為の概要

A社は、自らが運営するウェブサイトに宿泊施設を掲載する宿泊施設の運営業者との間で締結する契約において、当該ウェブサイトに当該運営業者が掲載する部屋の最低数の条件を定めるとともに、宿泊料金及び部屋数については、他の販売経路と同等又は他の販売経路よりも有利なものとする条件を定めていました。

3 確約計画の概要

  • ⑴A社が自らが運営するウェブサイトに宿泊施設を掲載する宿泊施設の運営業者との間で締結する契約において、当該ウェブサイトに当該運営業者が掲載する部屋の最低数の条件を定めるとともに、宿泊料金及び部屋数については、他の販売経路と同等又は他の販売経路よりも有利なものとする条件を定めている行為を取りやめること。
  • ⑵前記⑴の行為を取りやめる旨及び今後3年間前記⑴の行為と同様の行為を行わない旨を取締役会において決議すること。
  • ⑶前記⑴及び⑵に基づいて採った措置を、前記⑴記載の運営業者に通知し、かつ、自社の被疑違反行為に関する事業に係る従業員に周知徹底すること。
  • ⑷前記⑴及び後記⑸について、一般消費者に周知すること。
  • ⑸今後3年間、前記⑴の行為と同様の行為を行わないこと。
  • ⑹次の事項を行うために必要な措置を講じること。
    ア 前記⑴記載の運営業者との取引に関する独占禁止法の遵守についての行動指針の作成及び自社の被疑違反行為に関する事業に係る従業員への周知徹底
    イ 前記⑴記載の運営業者との取引に関する独占禁止法の遵守についての自社の被疑違反行為に関する事業に係る従業員に対する定期的な研修及び監査担当者による定期的な監査
  • ⑺ 前記⑴から⑷まで及び⑹の措置の履行状況を公正取引委員会に報告すること。
  • ⑻ 前記⑸の措置及び⑹イに基づいて講じた措置の履行状況を、今後3年間、毎年、公正取引委員会に報告すること。

4 確約計画の認定

公正取引委員会は、前記3の計画が独占禁止法に規定する認定要件(注:措置内容の十分性及び措置内容の確実性)のいずれにも適合すると認められたことから当該計画を認定しました。

CHAPTER3

確約認定を受けるためには

1 公正取引委員会の考え方

公正取引委員会は、確約手続に関する対応方針 において、以下のように述べ事業者に対して、確約手続通知を行う前の段階でも、意思疎通を密に行うことが有益であると考えています。
「確約手続は、違反被疑行為について、公正取引委員会と事業者との間の合意により自主的に解決するものであり、公正取引委員会と事業者との間の意思疎通を密にすることは、迅速な確約手続に係る法運用を可能とし、公正取引委員会と事業者の双方にとって有益であると考えられる。
このため、確約手続をより迅速に進める観点から、公正取引委員会が確約手続通知を行う前であっても、独占禁止法違反の疑いで公正取引委員会から独占禁止法に基づく調査を受けている事業者は、いつでも、調査を受けている行為について、確約手続の対象となるかどうかを確認したり、確約手続に付すことを希望する旨を申し出たりするなど、確約手続に関して公正取引委員会に相談することができる。」

2 弁護士へのご相談について

公正取引委員会は、上述のように、公正取引委員会が確約手続通知を行う前の段階から、事業者との間で確約手続に向けた密な意思疎通を図ることが有益だと考えています。
そして、事実上、確約手続通知を受けて60日以内に、第2で説明した確約計画を策定・実施することは、非常に困難であると考えられます。
そのため、独禁法違反の疑いがある事業者が、確約認定を受けるためには、公正取引委員会から確約手続通知を受け取った段階ではなく、会社内部で問題が発覚した段階または公正取引委員会から調査を受けた段階で、速やかに弁護士に相談・依頼し、弁護士の専門的アドバイスを通じて公正取引委員会と密に連絡を取ることが有益であると考えられます。

以上

Point

  • 確約手続を利用する場合、確約手続通知から60日以内に、確約認定申請をする必要があること
  • 確約計画の認定を受けるには、措置内容の十分性及び措置内容の確実性を満たす必要があること
  • 弁護士への迅速なご相談は、確約認定を受けるうえで有益であること

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