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社会人になってすぐに結婚して、15年連れ添った夫から離婚を切り出されました。最近夫婦関係が上手くいっていなかったので、私もこれには応じようと思っていますが、夫が「財産分与としてあなたの財産の半分をください」と要求してきました。
財産分与という言葉を初めて聞いたのですが、本当に私の財産の半分も渡さないと離婚できないのでしょうか。夫は地方公務員をしていて年収も500万円台なのでそこまでの預貯金はないと思うのですが、私は10年以上前に立ち上げたネイルサロンがおかげさまで好調で、私名義の預貯金だけでも5000万円くらいはあるのですが…。
ご相談者様にとってはショックかもしれませんが、財産分与という制度が民法768条に定められており、結婚生活期間中に築いた双方の財産を離婚するに際して(又は離婚後に)清算する権利が夫婦にはございます。
財産分与にはこのような清算的な要素以外にも、慰謝料的な要素などを考慮することもできますが、専ら実務で問題となるのは、この清算的な要素になります。そして、財産の清算の具体的なプロセスは以下のとおりです。
分かりやすく説明するために、分与の対象となる財産が預貯金だけである場合を例にとって考えてみましょう。
(1)① 分与の対象となる財産の確定
ご相談者様の預貯金は5000万円くらいあるとのことですが、当然夫名義の預貯金もあるはずです。このように、まずは分与の対象となる双方の財産を確定することから財産分与は始まります。
そして、いつの時点の財産が分与の対象になるかというと、実務上は、離婚成立まで同居している場合には離婚成立時、離婚成立前に別居している場合には別居時が基準時になることが多いです。
本件の場合、離婚の話を切り出されているとはいえ同居して生活を共にしているようですので、理論上は離婚成立時点の財産が分与対象財産だと考えることになりそうですが、実際には離婚成立まで財産が確定しないとなると話し合いが進まないので、どこかで日付を区切ってお互いに合意した時点を基準時として考えることになるでしょう。
(2)②分与対象財産の金銭評価
次に、分与対象財産の金銭評価が問題となりますが、預貯金の場合には財産分与の基準時時点の残高で清算することが多いです。
つまり、本件では基準日時点におけるご相談者様の約5000万円の預貯金が分与対象財産となり、同じく妻の同じ時点における預貯金額が分与対象財産になります。ここでは分かりやすくするため、夫の預貯金額は1000万円あったことにしましょう。そうすると、二人の分与対象財産の合計金額は5000万円+1000万円=6000万円になります。
(3)③分与する割合の認定
これは実務上よほど例外的な事情がない限りは2分の1ずつとされます(通称「2分の1ルール」)。
ご相談者様は収入が多いように見受けられますが、財産分与ではお互いの年収格差は分与割合の認定においてあまり考慮されません。
(4)④具体的な双方の取得金額の算定
そうすると、具体的な双方の取得金額は、6000万円を2で割って、双方が3000万円ずつということになります。
(5)⑤財産を分与する方法の決定
最後に、清算すべき金額が決まったら、具体的にどうやって清算するのかを決めることになります。
本件の場合、ご相談者様の名義の預貯金5000万円の方が清算した際の金額である3000万円より多いので、差額の2000万円を夫側に支払うことにより清算することになるでしょう。これで、双方が3000万円ずつ保持することになります。
この際、預貯金だけの財産分与であれば、その支払いについて受領した側(本件の場合は夫側)に贈与税は原則として発生しないとされております。
以上がおおまかな財産分与のやり方になります。
しかしながら、財産分与ではそもそもどの財産を分与対象とすべきなのか以外にも、株式や不動産がある場合にはその金銭評価も問題となり、結婚前から有していた財産の処理についても紛争になることがよくあります。財産分与は法律問題の宝庫ですので、当事者間で話を進めるとしても、まずは弁護士までご相談していただければ、ご依頼者様の納得のできる解決ができるように誠心誠意対応させていただきます。
先月から妻と別居して現在財産分与をどうするのか協議していますが、私が結婚前から積み立てていた定期預金口座について、妻がこの半額を渡せといって争いになっています。確かにこの口座には結婚後に積み立てたお金も入っていますが、大部分は結婚前からの積立金で、今まで一度も引き出したことはありません。
結婚前の財産は結婚と関係ないのですから、定期預金が財産分与の対象となってしまうのは不当なように思いますが、こういった場合でも、定期預金全額について財産分与の対象としなければいけないのでしょうか。
結論からいうと、定期預金も分与対象財産になってしまうと思いますが、別居時点の残高から、結婚時点の残高を差し引いた金額だけが分与対象財産になると考えることも十分できますし、そのように主張すべきでしょう。
そもそも、本件のようなケースで財産分与を考える上では、特有財産という概念を知る必要があります。特有財産とは、夫婦の一方が名実ともに単独で有する財産のことで、これは財産分与の対象財産とはみなされません。そして、本件のように結婚前から有していた財産や、結婚後であっても両親からの贈与や相続によって得た財産が特有財産の典型例だと言われています。
それでは、本件の定期預金はどう考えるべきでしょうか。
本件の定期預金は結婚時において既に存在していたものなので、その後共有財産が混じらなければ純粋な特有財産として考えることができたといえますが、実際には結婚後の収入が混じってしまっているため、本件は、特有財産に夫婦共有財産が混じっている状態であるといえます。
この場合の考え方は、主に2つに分かれます。
一つ目は、財産分与の基準時である別居時の金額から、結婚時(又は内縁関係の開始時)の金額を控除するという考え方です(名古屋家審平成10年6月26日・判タ1009号241頁)。この考え方でいくと、本件においても、別居時の残高から結婚時の残高を控除した金額のみが分与対象財産になるとして、その半額だけを妻に支払えばよいことになります。
二つ目の考え方は、特有財産である預貯金と婚姻中に取得した収入が混じり合った場合、その時点で特有財産は存在しなくなった、あるいは、夫婦財産形成のために全額が費消されたと考える見解です(山本拓「清算的財産分与に関する実務上の諸問題」家月第62巻第3号35頁)。この考え方でいくと、本件の特有財産は結婚後の収入が混じった時点で特有財産性が失われたので、別居時の残高全額が分与対象財産になります。
しかし、この二つ目の考え方は、あくまで結婚後の収入が混じって預貯金の出入金が繰り返された場合を想定していますので、本件のような定期預金で、一度も引き出さずに積立を続けていた場合、預金口座はただひたすら増額されていく一方で、結婚前までの積立と結婚後の積立が明確に区別できるのですから、あえて特有財産性がなくなったと評価することはできないでしょう。これはあくまで私見ですが、本件のようなケースでは特有財産性が維持されていると主張すべきだと思いますし、そのような主張には十分理由があるといえます。
しかしながら、実際にこういった主張をすることは法律の専門家ではない方には難しいと思いますし、これが調停や裁判になった場合には以上述べたような理論的根拠をしっかりと主張立証していく必要があります。そこで、まずは弁護士に是非ご相談ください。
私は結婚してからずっと専業主婦をしていましたが、現在夫と別居して離婚協議中です。離婚すること自体に双方争いはないのですが、今年50歳になる夫は、退職金について財産分与の対象に含まれないと言って全く譲ろうとしません。
私としては、夫は大企業に務めていてあと10年待てば5000万円くらいの退職金が出るそうなので、これを全く財産分与に含めないということは許されないと思うのですが、確かにまだ手元にあるお金ではないので、どう考えればよいのか分からなくなっています。法的にはどう考えることになるのでしょうか。
(1)退職金が分与対象財産になるのかについて
退職金の支給までに相当の期間(10年以上)がある場合、特に私企業に務められている方の場合には、支給の蓋然性が低くなるとして、財産分与の対象とできないという見解が昔は有力でしたし、実際にそのように判断した裁判例もあります。
しかし、最近の実務では、支給時期が相当先であっても、これを対象財産とすることが多いです(松本哲泓著「離婚に伴う財産分与」109頁参照)。
本件でも、支給時期が約10年先ということであれば、退職金を分与対象財産に含めて考えるべきだと十分理由をもって主張できると思います。
ただし、現状任意の交渉では全く譲ろうとしないとのことですので、弁護士に相談された上で、裁判所に調停を申し立てて、ある程度法的な主張が通じる土俵に持ち込むことが重要だと思われます。
(2)実際の計算方法について
調停に持ち込んで夫側を説得することができたとしても、実際に退職金をいくらだと算定して、それをいつ支払うのかと決める作業も本件ではかなり紛糾することが予想されます。
最近の実務では、財産分与の基準時である別居日において自己都合退職したと仮定して退職金を算定し、その金額から結婚時に退職したと仮定した場合の退職金を控除したり、勤続期間を同居期間で按分する(勤続期間30年で同居期間20年なら退職金を3分の2にして計算する)方法がよくとられますが、過去の裁判例にはこれ以外の計算方法を用いた裁判例もあり、未だに統一的な見解はない状況にあります。
このような状況において、退職金を分与してまとまった金額の支払いを要求する交渉は難しいものとなりますので、このような交渉の経験のある弊所の弁護士にまずはご相談ください。
現在中小企業を経営する夫と離婚協議をしています。別居はしていません。
夫は自分の経営する会社の株式以外にも投資目的で多数の株式を保有していましたが、これらは全て財産分与の対象になるのでしょうか。ちなみに、夫の経営する会社は夫が100%株主のようですが、従業員は10人ほどしかおらず、代々家族経営をしているようです。
財産分与の基準時に存在する株式であっても、その株式を結婚する前から保有していた場合には、いわゆる特有財産として扱われるため分与対象財産からは外れることになります。したがって、本件ではまず、現在夫が保有している株式をリストアップして、そのうち結婚前から保有しているものと、そうでないものを区別する作業が必要となります。
おそらく投資目的で保有されている株式は上場株式だと思いますので、分与の対象となる財産を確定したら、現在の株価からその金額が概ね見積もれると思います。既にどの会社を何株持っているのか知っているのであれば、この計算はご自身でも調べられるので、是非やってみてください。
次に、おそらく上場していない夫の経営する会社の株式について考えると、まずその株式を結婚後に取得したのかどうかが大きな分岐点になります。仮に結婚前に取得していたのであれば、財産分与の対象にはならないでしょう。
また、仮に結婚後に取得していたとしても、代々家族経営しているとのことですので、親から贈与を受けたのかもしれません。この場合、一般にその株式は特有財産であると考えることになるため、やはり分与対象財産にはならないでしょう。
しかしながら、以上は全ての情報が明らかになった状況での議論を想定していますが、実際の離婚協議ではなかなか情報を相手方が詳らかにすることはないため、どうやって資料収集をしていくのかという方針を考える必要があります。例えば、株式の証券口座が分かっている場合には、弁護士会の手続を使って夫の保有する株式を調査できる場合もあります。また、仮に夫の経営する会社の株式が分与対象財産になるとしても、どうやってその金額を算定すればよいのかというのは大変難しい問題であり、逆にいえば、妻側にとっては大きな交渉のカードを得ることになります。
こういった具体的な戦略を考えるためにも、まずは是非弁護士にご相談ください。
婚姻届は出していませんが、夫婦同然に暮らしてきた男性がいます。その相手から別れたいと言われましたが、一方的な関係の解消が認められるのでしょうか?また、関係の解消に伴い、慰謝料や財産分与は請求できますか?
結論からいうと、内縁関係は、当事者間の合意がなくても、一方的な意思表示で解消することができます。もっとも、内縁関係を正当な理由なく一方的に解消された場合には、相手に対して慰謝料を請求できますし、正当な理由の有無にかかわらず、財産分与を請求できることもあります。
まず、「内縁関係(又は事実婚)」とは、社会通念上夫婦となる意思をもって夫婦共同生活を送っているものの、婚姻の届出を欠くために、法律婚とは認められない男女の関係(前田陽一ほか著「民法Ⅵ 親族・相続 第2版」有斐閣、2012年3月、106頁)を言います。法律婚に準ずるような内縁関係があるか否かは、①当事者の婚姻意思という主観的要素と、②夫婦共同生活が営まれているか(同居や扶養関係の有無等)という客観的要素から判断されます。
内縁関係は、法律婚とは異なり、当事者がその関係の存続について法的な義務を負うものではない(最高裁平成16年11月18日第1小法廷判決判時1881号83頁)ため、法律婚と異なり、当事者の意思の合致や法律上の離婚原因がなくても、一方的に関係を解消することができます。
もっとも、法律上の婚姻に準ずる内縁関係は、一定の保護を受け、正当な理由なく内縁関係を解消された場合には、相手方に対して慰謝料を請求することができます。裁判上認められる慰謝料額は、50万円前後の場合から、300万円を超える場合まで様々です。慰謝料の増額事由としては、共同生活の期間が長いこと、親族・友人・職場等周囲への紹介を行っていたこと、挙式や新婚旅行又はその準備をしたこと、妊娠・出産・中絶をしたこと、相手に異性との肉体関係があったこと、暴力・虐待を受けていたこと等が挙げられます。
さらに、内縁関係においては、民法上の法律婚における財産分与の規定(民法第768条)が準用されるため、内縁関係があった期間において2人で形成した財産が存在すれば、その名義を問わず、関係解消時に財産分与の対象となり得ます。ただし、内縁解消後2年以内に申し立てを行う必要があります(民法第768条第2項但し書き、大阪家審平成元年7月31日家庭裁判月報42巻7号45頁)。
財産分与は、共同生活において2人で形成した財産をどのように分けるかという問題であり、関係の解消によって受ける精神的苦痛とは別個の問題ですので、正当な理由なく内縁関係を解消された場合であっても、財産分与は行う必要があります。
なお、内縁関係の解消時も、法律婚における離婚時と同様、関係解消までの生活費の請求や、年金分割の請求をできる場合があります。
このように、理由なく内縁関係を一方的に解消されたときには、慰謝料や財産分与等を請求することができます。しかし、これらの請求を行う際には、交渉においても裁判においても、法的な知識に基づき、事実を効果的に主張することが重要です。弁護士が介入することで、当初相手方が認めていた額よりも多くの慰謝料や財産を受け取ることができたというケースも多々ありますので、お悩みの方は、一度弊所までご連絡ください。
結婚を考えている相手がいますが、お互い事業を営んでおり経済的に独立しています。離婚時には、財産の名義にかかわらず財産分与をしなければならないと聞いたことがありますが、万が一離婚をするときに、お互いが稼いだ財産はそれぞれに帰属させ、財産分与が発生しないようにする方法はありますか?
結論からいうと、婚姻前に夫婦財産契約を締結しておくことで、万が一離婚をした場合であっても、婚姻中にそれぞれが取得した財産について、財産分与を行わないようにすることも可能です。
まず、夫婦間における財産関係(夫婦財産制)について、民法の規定によると、夫婦間で財産に関する契約がある場合には当該契約に基づいて処理され(契約財産制)、夫婦間の契約がない場合には法律の規律が適用される(法定財産制)という関係にあります。
法律の規定によると、夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中に自己の名で得た財産(特有財産)以外の財産は、夫婦の「共有財産」とみなされ、離婚時には財産分与を行う必要があります。婚姻後に取得した財産が「共有財産」となるか否かについて、単純に財産の名義や原資の負担者によって判断せず、夫婦が共同して築いた財産と言えるか否かによって判断する裁判例もあります。
一方、夫婦間に財産に関する契約(夫婦財産契約)が存在する場合には、その契約の内容が優先されるため、「婚姻後も原則として財布を分け、それぞれが取得した財産は各自の特有財産とする。夫婦共同の口座を作り、共同口座から婚姻費用を支出し、共同口座から購入したものだけを共有財産として財産分与の対象とする。」といった内容を規定し、「共有財産」となる財産を明
確にすることも可能です。
ただし、夫婦財産契約は以下の条件を満たす必要があります。
上記の要件を満たせば、基本的には自由に契約内容を決めることができますが、夫婦財産契約の内容を夫婦の承継人又は第三者(財産の譲受人等)に対抗するためには、婚姻の届出前にその登記をする必要があります(登記がなくても、夫婦間では契約は有効であると考えられます。)。
夫婦財産契約によって、夫婦間の財産の処理方法等について、当事者間で柔軟に決まり事を作ることができます。一方で、契約の内容が公序良俗に反しないように注意する必要がありますし、また、婚姻成立後は契約内容を変更することができない(民法758条第1項)ため、その内容は慎重に検討する必要があります。
専門家である弁護士が介入することで、法的に問題がなく、また、より当事者の意思を反映させた契約を作成することができますので、夫婦財産契約の作成を検討されている方は、是非一度弁護士にご相談ください。
別居をする際に、財産分与を求めない旨の書面を書いてしまったが、財産分与は請求できないか?
結論からいいますと、このような書面があったとしても、その効力を否定して、財産分与を請求することは可能です。
まず、大抵このような書面の効力を否定したい側が、民法754条を主張して契約の取り消しを主張するのですが、それほど簡単に取り消しは認められないのが実情です。
裁判例にも、婚姻が実質的に破綻している場合には、それが形式的に継続しているとしても、同上の規定により、夫婦間の契約を取り消しすることは許されない、と判断しているものがあります。
大切なのは、「当該合意内容が表意者の真意であったかどうか」を、別居に至る経緯、当該書面作成の経緯、当事者間の財産関係などから検討をすることです。
事案によっては、一方が他方に無理やり書かせたとようなケースがあり、そのような場合には強迫による取り消しが可能なものもあります。また事案によっては、錯誤による取り消しが可能な事案もあります。
どちらの立場に立つにせよ、作成経緯に問題がある書面には疑義が生じますので、このような書面があるから大丈夫、ダメといったことではなく、まずは一度ご相談いただければと思います。
内縁関係にあった女性から別れを切り出されました。私たちの間には子供がいるのですが、内縁関係の解消時に、子供の親権を得ることはできますか?
結論からいうと、内縁関係にある2人の間に生まれた子について、原則として父親との親子関係は発生しません。当事者間の合意がないときに父親側が親権を取得するためには、認知の手続を行った上で、家庭裁判所に対する親権者変更調停の申立てを行い、親権を獲得する必要があります。
まず、内縁関係にある2人の間で産まれた子は、法律婚の場合と異なり、民法上の嫡出の推定(嫡出子とは、法律上の婚姻関係にある父母から生まれた子を意味します。)がはたらかないため、戸籍上、父親とは何ら関係を有しないこととなります。生まれた子は母親側の戸籍に入り、母親の単独親権となります。
父親によって認知がされて初めて、生まれた子と父親との間で親子関係が発生し、非嫡出子(未婚の男女の間で生まれた子)となります。しかし、認知をされても当然に父の戸籍に入るわけではありません。父親が子を認知すると、非嫡出子として、父親と子の間に扶養関係や相続関係が発生しますが、当然に子が父親の戸籍に入ったり、父親に親権が発生したりするわけではありません。親権は依然として母親の下に残り、共同親権にもなりません。
そこで、内縁関係において生まれた子について、父親が親権を取得するためには、まず、母親の単独親権から父親の単独親権に変更する手続が必要となります。親権の変更について、父母間で協議が整わなければ、家庭裁判所に親権者変更調停を申立てる必要があります。調停が不成立になった場合には審判手続に移行します。裁判所において、親権者の変更は無制限に認められるわけではなく、養育環境や子の通学状況等に鑑みて、子供の福祉や利益のために必要な場合にのみ認められます。
さらに、父親が親権を取得しても、何も手続を行わなければ、子は母親の戸籍に入ったままの状態です。子を父親と同じ戸籍に入れるためには、家庭裁判所に対して子の氏の変更申し立てを行い、裁判所の許可を得たうえで、子の氏を父親の氏に変更する必要があります。
このように、当事者間で合意がまとまらなければ、内縁関係にある2人の間に生まれた子について、父親が親権を取得するためには、家庭裁判所に申し立てを行い、父親が親権を取得した方が子の利益にかなうと認められる必要があります。親権の決定時には様々な事情が考慮されますが、多くのケースでは母親側に親権が認められており、父親側が親権を獲得するためには、時には困難が伴います。専門家が介入することで、より法律的に効果的な主張立証を行うことが可能ですので、まずは一度ご相談いただければと存じます。
現在夫と離婚調停中で別居しています。子供は私と一緒に暮らしていましたが、夫が、幼稚園から子供を連れ帰ってしまいました。子供をこちらに連れ返すためにはどのような手段がありますか?
結論からいうと、子の引き渡しを求める手段としては、主に、①家事事件手続法による子の引き渡しと、②人身保護法による子の引き渡しという方法が用いられます。
子の引き渡しを求める手段としてまず検討されるのが、「家事事件手続法による子の引き渡し」、つまり、家庭裁判所に対して、子の引渡を求める調停又は審判を申し立てる方法です。調停で当事者間の話し合いがまとまらない場合には、自動的に審判に移行します。また、調停手続を踏まずにいきなり審判を申し立てることも可能です。
子の引渡審判においては、いずれの当事者による監護が子の利益にかなうか・どちらが適切な監護者かという観点から、引き渡しを認めるか否かが判断されます。その際には、両当事者の精神状況、経済状況、居住・教育の環境、従来の監護状況、子に対する愛情、親族等の支援体制、子の年齢や性別、従前の環境への適応状況等の様々な事情が考慮されます。
子の引き渡しを命じる審判が確定してもなお、子を連れ去った配偶者が引き渡しに応じない場合の手段としては、「間接強制」(一定期限までの引き渡しを履行しない場合に一定期限までの金員の支払いを命じること)により子の引き渡しを促すという方法がとられることが多いですが、場合によっては、「直接強制」(執行官が、子を連れ去った親から直接子を取り上げて、監護者に引き渡すこと)が認められる場合もあります。
上記のような家事事件手続法では対応できない事例においては、「人身保護法に基づく人身保護請求」を行うという手段がとられることもあります。
この請求を行う条件として、①子の身体が拘束されていること、②拘束が違法であること、③拘束の違法性が顕著であること、④救済の目的を達成するためほかに適切な方法がないことが必要とされます。
条件を満たし、「人身保護命令」が出された場合には、被拘束者(子供)の身柄が裁判所の支配下に移り、拘束者(連れ去った配偶者)は、裁判所の指揮下で引き続き監護をすることになります。拘束者は、被拘束者を監護する義務審問期日に出頭させる義務等を負い、これに反したときは勾引・勾留されたり、過料に処せられたりします。
この他に、離婚を求める訴訟を提起している場合には、当該請求と併せて子の引き渡しを請求することもできます。また、子の連れ去りが、刑法上の略取誘拐罪における略取行為に該当する場合もあります。そのため、場合によっては、連れ去り行為について告訴をして警察に介入してもらうというのも一つの手段です。
それぞれの手続には一長一短ありますが、法的な知識がなければ、子の引き渡しを求めるにあたっていずれの手段が適切かの判断が難しいこともあるかと存じます。また、特に子の引き渡しを求める審判においては、自身の方が適切な監護者であることを効果的に主張する必要があります。弊所にご依頼いただければ、手続の選択の検討から、実際の手続における主張、そして実際にお子様が引き渡されるまで継続的にサポートをさせていただきますので、是非一度ご相談ください。
妻と協議離婚し、子供の親権は妻にあります。離婚のときに、月に1度は面会交流を行うと口頭で約束しましたが、妻が「子供が嫌がっているから」と言って、私と会わせようとしません。面会交流を確保する手立てはあるのでしょうか。
結論からいうと、当事者間での話し合いによって面会交流を実施できない場合には、家庭裁判所に対して、面会交流の実現を求めて審判を申し立てることになります。その中で、子の真意として面会交流を拒否していないと認められれば、面会交流の実施が命じられる可能性があります。ただし、審判等で面会交流の実施に関する取り決めがされてもなお相手方が面会交流に応じない場合に、強制的に面会交流を実施させることは難しいです。
まず面会交流とは、離婚後、または別居中に、子の監護養育をしていない親が、子と面会したり、手紙や電話等で交流したりすることを指します。離婚時に面会交流の回数や方法について取り決めがなされても、その後、監護親がその取り決めに従わないという事態も多々起こり得ます。
当事者間での話し合いによって面会交流を実施できない場合には、家庭裁判所に対して、面会交流を求めて調停や審判を申し立てることになります。
家庭裁判所においては、子の福祉の観点から、面会交流を行わせても問題がないか否かや、面会交流の適切な実施方法(頻度、場所等)について検討が行われます。子供に対する虐待や連れ去りのおそれがある場合には、面会交流は実施自体が禁止・制限されます。
子供自身が面会交流を拒絶している場合も、面会交流を行うことが「子の福祉」に反すると判断され、面会交流の実施が認められないことがあります。もっとも、子供の拒絶が本心によるものなのか、それとも誤解や監護親への迎合等が原因なのかは、専門家によって慎重に判断されます。
そして、調停や審判において、面会交流の取り決めがされたにもかかわらず、監護親が面会交流の実施に協力しない場合には、以下のような措置をとることが考えられます。
面会交流の実現を求める調停や審判においては、面会交流の実施が「子の福祉」に反しないことを適切に主張しなければなりません。また、特に調停においては、仮に面会交流を実施することとなったとしても、その後の間接強制も見据えて詳細な条件決めを行う必要があります。弁護士にご相談いただければ、調停・審判後もなお相手方が面会交流に応じないといった事態まで見据えて対応をさせていただきますので、まずは一度ご相談いただければと存じます。
結納を交わした婚約相手の女性から、突然、「ほかに好きな人ができたから結婚したくない」と告げられ、結婚式の直前に婚約を破棄されました。慰謝料は請求できますか?また、結婚式の準備費用や、2人で使うための家具等の購入費用を相手に請求できますか?
結論からいうと、ご相談のケースでは、相手方が「正当な理由」なく婚約を破棄したとして、相手方に対する慰謝料の請求が認められる可能性が高いです。また、結婚式の準備費用や家具の購入費用等、婚姻生活に向けた準備行為に要した費用の請求も認められる場合があります。
まず前提として、婚姻後の離婚と異なり、婚約の解消自体は、片方の当事者から一方的に行うことができます。しかし、その婚約の一方的な破棄に「正当な理由」がない場合には、婚約破棄に対する慰謝料を請求できます。単に「ほかに好きな人ができた」という理由だけでは、通常「正当な理由」に該当しませんので、その他に、ご相談者様による暴力や不貞行為等の事情がないようでしたら、相手方に対する慰謝料請求が認められる可能性が高いです。
つぎに、婚約破棄に対する慰謝料として裁判上認められる金額は、数十万円から300万円程度と幅があります。裁判において、慰謝料額は、交際・同居の期間の長短や、妊娠・出産・中絶の有無、婚約破棄がされた時の年齢(婚姻適齢期であること)、婚姻に向けた準備行為(挙式や周囲への紹介等)、婚約破棄に至った理由の内容・程度等の、様々な事情を総合的に判断して決定されます。
離婚慰謝料と比べると、全体的には認容される金額が低い傾向にありますが、他の異性との肉体関係や暴力等の、離婚事由に準じるような帰責性がある場合には、200万円を超える慰謝料が認められることもあります。
さらに、婚約後に婚姻の準備行為のために費用を支出していた場合、婚約の解消によって無駄になってしまった婚姻の準備行為のための費用を、相手方に請求できる場合があります。
例えば、婚約解消を受けて結婚式や新婚旅行をキャンセルし、キャンセル費用を負担した場合には、その費用を相手方に請求することができます。
また、婚姻後の共同生活のために購入したものの、婚約解消により不要となってしまった物(動産・不動産)の購入費用や購入時・売買契約解約時の手数料を負担した場合は、その費用も相手方に請求できる場合があります。もっとも、その物自体が残存している場合には、そもそも損害が発生しているかという点が問題となります。購入した物が残っており使用可能な状態にある以上損害が発生していないと判断した裁判例や、購入費用の一部のみについて支払い義務を認めた裁判例もあります。
弁護士にご相談いただければ、過去の裁判例等に照らし、ご相談のケースでどの程度の慰謝料や損害賠償請求が認められる可能性があるかという見込みをお伝えすることも可能です。また、交渉においても裁判においても、相手方に相応な額の慰謝料や損害賠償の支払いを認めさせるためには、客観的な証拠の準備とそれに基づいた適切な主張を行うことが重要となります。弊所までご相談いただければ、経験豊富な弁護士がお力添えいたしますので、お気軽にお問合せください。
私は独身の20代女性ですが、ある30代の男性Aと愛人関係にありました。この度、その男性との間の子供を妊娠したので、そのことを彼に伝えたところ、子供が出来たことを喜ぶどころか、「堕ろさずに出産してもよいが、認知はしない。勝手に育ててくれ。」と言われ、それ以降音信不通になっています。
あまりにひどいですし、彼には父親としての責任を果たして欲しいのですが、私はどうすればよいでしょうか。
ご相談者様の目的である「Aさんに父親としての責任を果たしてもらう」という方法はいくつかあるのだと思いますが、法的にできる方法としてまず考えられる方法は、Aさんに自身が法律上の父親であると認めさせて、これから生まれる子供への養育費を支払ってもらうということだと思います。
この方法をとるためには、まず子供をAさんに認知させることが重要になりますが、Aさんが任意に応じないということであれば、裁判所に調停を申し立てる方法があります。
この調停の中で、子供とAさんとのDNA鑑定を行い、生物学的な父子関係があることを証明して、認知を認めさせる戦略をとることになります。
もしこの調停の中で子供とAさんのDNAが一致すれば、おそらくAさんも観念するとは思いますが、それでも認知を認めない場合には別途認知の訴えを起こす必要があります。
このようにして認知自体はなされた場合、次にAさんに養育費を請求していくことになりますが、このような一連の流れを行うのは非常に大変ですし、特に養育費の点については法的な知識も必要になってくるため、まずは弁護士までご相談ください。
浮気をしたことが配偶者に知られたことをきっかけに夫婦仲が険悪になり、3年ほど別居状態にあります。別居期間中の妻の生活費は私が払っていますが、夫婦間の連絡はほとんどありません。しかし、妻は、離婚は絶対にしないと言っています。私としては、もう妻に対する気持ちが冷めてしまっており、ほかに好きな人もいるため、離婚をしたいと考えています。私から離婚を求めることはできるのでしょうか。
結論からいうと、原則として、有責配偶者(不貞行為を行った当事者)からの離婚請求は認められません。別居期間が相当程度長期間にわたったときには、有責配偶者からの離婚請求も認められる場合がありますが、ご相談のケースについては、少なくとも現段階では、離婚請求は認められない可能性が高いです。
まず、当事者間の合意による離婚ができない場合には、裁判手続において離婚したいと請求し、裁判所から法定の離婚事由があると認められた場合に限り、離婚することができます。法定の離婚事由の一つに、「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」があり、婚姻関係が破綻しており修復の見込みがないような場合にはこの離婚事由に該当します。
そこで、有責配偶者、すなわち不貞行為等を行い、婚姻関係を破綻させた当事者自身が、「すでに婚姻関係は破綻している」と主張して、離婚を求めることができるのかという問題があります。
最高裁は、過去には有責配偶者、すなわち離婚事由を発生させた当事者自身からの離婚請求を否定していました。しかし、最高裁大法廷昭和62年9月2日判決(民集41巻6号1423頁)は、以下のような3つの条件のもとで、有責配偶者からの離婚請求も認められる場合もあるという判断を示しました。
この昭和62年最高裁判決以降、裁判例では、有責配偶者による離婚請求の可否について、上記3要件に関する事情を総合的に考慮したうえで、有責配偶者からの離婚請求が信義則に照らして許されるかという観点から判断する傾向にあります(東京弁護士会法友全期会家族法研究会「離婚・離縁事件マニュアル第3版」株式会社ぎょうせい、平成30年1月、122頁)が、どのような場合に上記①~③の条件を満たすかについて、具体的な基準は存在しません。
要件①(相当長期間の別居期間)については、10年程度が目安とされています(二宮周平ほか著「離婚判例ガイド第3版」有斐閣、2015年4月、68頁)。しかし、期間の経過が夫婦に与える影響を含め、諸般の事情に照らし判断されるため、別居期間が10年を超えても離婚が認められない場合もありますし、逆も然りです。
要件②(未成熟子の不存在)について、未成熟子とは、親から独立して生計を営むことができない子を指し、未成年者イコール未成熟子ではありません。19歳の大学生が未成熟子ではないと判断した裁判例もあれば、成人していても介護が必要な状態であるため未成熟子と同視できると判断した裁判例もあります。
要件③(特段の事情)については、有責配偶者による過去の生活費の負担の有無や、離婚後の生活を補償する離婚給付が予定されているか否か、離婚を拒否している当事者の生活・収入状況等を踏まえて判断されます。
ご相談のケースでは、お子様がいらっしゃるか否か(いらっしゃる場合には年齢)等にもよりますが、別居期間がまだ3年程度と短いことに照らせば、裁判手続上は離婚請求が認められない可能性が高いです。そのため、任意での離婚の交渉をしつつ、別居期間が相当程度長期に至った段階で裁判手続を行うという対応となります。
もっとも、弁護士が入ることで、合意による離婚の交渉が円滑に進むケースもあります。また、裁判例においては、別居期間が10年に満たないケースでも離婚請求を認めた事案もありますので、そのために必要な事実・証拠の精査等も行わせていただきます。弁護士にご相談いただくことで、早期の離婚の実現が叶う場合もありますので、まずは一度お気軽にご相談ください。
夫が職場の女性と親密なやり取りをしているラインの履歴を見ました。また、最近、仕事が忙しいといって家に帰ってこない日もあるため、その女性との浮気を疑っています。夫の浮気を理由に離婚することはできますか?また、離婚する場合には、慰謝料の額はどの程度見込めますか?
結論からいうと、不貞行為を理由とする慰謝料請求の裁判での認容額は、不貞の期間・回数や子供の有無等の事情に応じて様々であり、100万円前後から300万円を超える場合まであります。
ただし、不貞行為を理由に離婚や慰謝料を請求するためには、配偶者と浮気を疑われる相手が「親密な関係にある」というだけにとどまらず、性的関係・肉体関係があったことや、少なくともそれに準ずる関係があったことを立証するための証拠が必要です。
単に親密なやりとりをしているラインの履歴だけでは、不貞行為があったとは認められない可能性が高いですが、ラインのやり取りやそのほかの証拠に基づいて、配偶者と浮気相手に肉体関係があったことを証明できれば、不貞行為を理由とする離婚や慰謝料請求が認められる可能性もあります。
そして、民法770条1項1号において不貞行為が離婚原因として挙げられているため、配偶者が不貞行為を行ったと立証できた場合には、裁判でも離婚が認められるほか、配偶者のみならず不貞行為の相手方にも慰謝料を請求することができます。
まず、不貞行為の典型例は、配偶者が異性と肉体関係・性的関係を有した場合ですが、肉体関係を伴わない交際が不貞行為又は不法行為を構成するかは、裁判例によって判断が分かれています。一例として、東京地裁平成28年12月28日判決は、抱き合うようにキスをしたり、手を繋いだりしたことは認められるものの、性交渉があったとまでは認められない事案において、不貞行為に該当しないと判断しました。
そのため、確実に不貞行為を理由に裁判で離婚を求めるためには、配偶者が、ほかの異性と親密な関係にあることだけではなく、肉体関係・性的関係まであったことを客観的に証明できることが必要です(ただし、肉体関係までは認められなくても、度を超えて親密な関係にあると認められた場合には、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」という離婚事由に該当する場合もあります。)。
具体的に、肉体関係を裏付ける証拠としては、配偶者と浮気相手がホテルで過ごした事実や、深夜に2人だけで自宅で過ごした事実等がわかる写真等が用いられます。
なお、配偶者の不貞行為が原因で離婚に至った場合の慰謝料額は、100万円前後の場合から300万円を超える場合まで様々です。慰謝料の増額事由としては、婚姻期間が長いこと、不貞関係が単発のものではなく継続的なものであること、不貞の期間が長いこと、不貞の頻度が多いこと、不貞を行った当事者に資力があること、未成年の子がいること、不貞以外の有責事由(暴力等)があること等が挙げられます。
配偶者の浮気が疑われるケースでは、証拠が不十分なまま、焦って離婚や慰謝料を請求してしまった結果、請求が認められないという事案も多々あります。弊所にご依頼いただければ、離婚事件の経験が豊富な弁護士が、過去の裁判例や実務の経験に基づいた適切な資料収集や裁判における主張立証活動を行わせていただくほか、訴訟提起前の浮気相手との連絡交渉、裁判後の強制執行手続、離婚に伴う各種手続等、多方面においてサポートをさせていただきます。
弁護士は守秘義務を負っていますので、ご家族やご友人には話しにくいことでも、安心してご相談いただきたく存じます。
夫との関係が悪化して少し離れたところに家を借りて一人で別居を開始してから、かれこれ5年間が経過しました。
この5年間の間に、夫とは扶養の関係で事務的な連絡をLINEで何度かしただけで、一度も電話や面会はしていません。もう既に夫婦ではないと思っていますし、これから新たな人生に前向きに進むためにも離婚の手続をとりたいと思って離婚調停を申し立てましたが、結局夫は意固地になって離婚に応じず、裁判をするしかない段階にまできています。このまま離婚訴訟を提起したとして、裁判所は離婚を認めてくれるのでしょうか。
結論からいうと、ご相談者様に有責事由(不貞をしていたり夫に暴行していたりしたなど)がある等の特段の事情がない限りは、離婚が認められやすいケースだと思います。
そもそも裁判所が離婚の判決を下すためには法律上の離婚事由が必要となり、本件では専ら「その他婚姻を継続し難い重大な事由」(民法770条1項5号)が存在するのかが争点になると思われます。
この離婚事由は要するに、婚姻関係が破綻し、その回復の見込みがない状態を意味すると言われておりますが、一般に、同居期間に比べて別居期間が長期間にわたっている場合には、それだけで離婚事由になりうると考えられております。そして、この別居期間の長さについては、離婚を請求する側に有責事由がない限り、別居期間が5年間続けば婚姻関係が破綻したと推認して差し支えないという見解もあるくらいです(島津一郎・松川正毅編「基本法コンメンタール親族(第5版)」108頁)。
一つ本件に近い裁判例を紹介させていただくと、別居期間が4年10か月に及んでいたケースである東京高判平成28年5月25日・判タ1432号97頁があります。
このケースでは、第一審の東京家庭裁判所立川支部の判決で、同居期間が約10年間であるのに対して別居期間が第一審の段階では約3年5か月間であったことが「短い」と評価されて、その他の事情も考慮して離婚が認められませんでした。
これに対し控訴審である東京高等裁判所は、控訴審の時点で別居期間が4年10か月間余りとなっていたことを「長期にわたって」いると評価した上で、この「別居期間の長さは、それ自体として、控訴人と被控訴人との婚姻関係の破綻を基礎づける事情といえる」とまで述べて、離婚を認める判決を下しております。
しかしながら、本件のケースでは元々の同居期間がどのくらいなのかが不明ですし、別居期間以外の事情も裁判所は考慮して判決を下しますので、色々と弁護士として聞かなければいけない事情がございます。また、調停まではご自身でされていたようですが、訴訟となると手続が決まっていたり証拠の効果的な提出や法的な議論を色々としなければいけない等、ご本人では対応が難しいケースが多いと思いますので、まずは弁護士までご相談ください。
専業主婦をしていた妻が何も告げずに突然家を出て行ってしまい、ずっと音信不通でしたが、それから半年経過して突然連絡があり、別居後の半年分の生活費を一括で支払うのと、今後の生活費を毎月支払うよう一方的に要求してきました。
こういった生活費は、妻より収入が多い私がいくらか支払う必要があることは知っていますが、音信不通だった半年間分についてまで支払わなければいけないのでしょうか。
結論から申し上げると、本件では別居後半年分の生活費をご相談者様が現時点で支払う必要はないと考えられます。
そもそも、別居後に支払うこのような生活費を法律上は「婚姻費用」と呼びます(民法760条)。
確かに、妻側の収入がなくて(又は少なくて)ご相談者様の収入がある(又は多い)場合には、収入の多いご相談者様側に婚姻費用を支払う義務が生じますが、この婚姻費用について一体いつから支払義務を負うのかという点については議論があります。
この点、多くの裁判例及び調停では、婚姻費用の請求をした時点(多くの場合は婚姻費用の調停や審判が申し立てられた日の属する月)から婚姻費用が発生するとされております(東京高決昭和60年12月26日・判タ603号80頁等)。
したがって、ご相談者様の場合には、少なくとも音信不通であった半年間については婚姻費用の請求を受けていない以上、その支払いを拒絶することに法的な理由があることになります。
もっとも、婚姻費用の請求はその後の離婚や財産分与も見据えた上での初手として行われることが多いため、今後も様々なアクションを妻側が行うことが想定されます。どういったアクションがあった場合にどうリアクションすべきなのかはご相談者様のご意向にもよりますが、無用の不利益を回避するためにも、こういった請求を受けた時点で速やかに弁護士にご相談していただければと思います。
先月専業主婦の妻が2歳の子供を連れて勝手に出て行ってしまい、婚姻費用の調停を申し立てられてしまいました。その申立書の中で、妻は私の年収が2000万円以上あるはずだといって算定表というものに基づいて月40万円もの婚姻費用を要求しています。
しかし、私は個人事業主をしていて確かに昨年度の売上げが2000万円以上ありますが、経費を差し引くと半分以下になりますので、妻の要求する金額は不当に高いと思いますし、何より私が現実的に支払えるような金額ではありません。この場合の私の収入は、算定表の中でどのように計算されるのですか。
確かに、離婚調停の実務では、婚姻費用を迅速に決定するために、ある程度統一的な算定方式を採用して、婚姻費用を決定することになっています。そして、婚姻費用を算定する表は裁判所のウェブサイトに公開されています。
したがって、調停で自分の支払う婚姻費用を話し合うにあたって、まずは、この算定表から考えると婚姻費用がいくらになるのかを知る必要があります。
そうすると次に算定表の読み方が問題になりますが、算定表には「義務者の年収」という欄があり、ここにご相談者様の年収を入れて計算することになりますが、ご相談者様はそもそも個人事業主なので「自営」の欄を使うことになります。
そして、自営業者の年収は、ご相談者様のおっしゃられるとおり売上げでは判断せずに、必要経費等を差し引いた後の金額で考えることになっております。具体的には、確定申告書の「課税される所得金額」の数字に、税法上は控除されているものの現実には支出されていない費用(青色申告控除や基礎控除等)を加算した数字で年収を計算します。
したがって、ご相談者様の場合には、年収は売上げの半分以下にはなるはずです。
しかしながら、確定申告書のどの部分を加算すれば正確な年収になるのか等については、専門知識が必要ですし、何より算定表はあくまで目安として使われるだけで、婚姻費用の算定にあたっては個別の様々な事情が考慮されることがあります。詳しくご相談者様の事情を教えていただければ、正確な算定表の使い方だけでなく、個別の事情に即した婚姻費用の金額や、それに基づく調停での戦略を考えることができますので、まずは弁護士までご相談ください。
私には前妻との間に子供がいて、会社を経営していて2000万円近い年収もあることから、裁判所での調停の結果、前妻の年収も400万円近くあったことが考慮されて、5年前から毎月20万円の養育費を支払っていました。
その後、私は再婚して子供が生まれましたが、それに伴って広い家に引っ越しをしたり生活費が上昇してしまい、なかなか毎月20万円の養育費を支払うのが難しくなってきました。
前妻とその子供には大変申し訳ないのですが、こういった事情に基づいて養育費を減らしてもらうことはできないのでしょうか。
(1)結論
結論から申し上げると、このケースであれば養育費の減額が裁判所でも認められる可能性が高いと考えられます。
(2)一度合意した養育費の減額は事情変更があれば可能であること
ご存じのとおり、裁判所の実務では養育費を算定表に従って計算して、それを元に様々な事情を加味して金額を決めていくことが多いです。そして、双方の年収や子供の数などの事情で算定表上の金額は大きく変動しますので、そういった算定表の考慮要素等に変動が生じた場合で、従前の調停時にはそのことが予見できなかった場合には、養育費の減額や増額をすることができるとされております(於保不二雄・中川淳編「新版注釈民法(25)改訂版」805頁等)。
したがって、5年前に調停で毎月20万円の養育費を支払うと約束したとしても、事情変更があったからという理由でこれを減額する調停を、ご相談者様は申し立てることができると考えられます。
(3)実際の養育費の計算方法
この場合、お互いの年収に特に変動が生じていないと仮定すると、養育費の支払い義務を負うご相談者様に「新しい妻と子供ができた」という事情を、算定表の中でどうやって考慮していくべきなのかが問題になります。
この点、考え方は色々ございますが、一番簡単な考え方をご紹介させていただきます(岡健太郎著「養育費・婚姻費用算定表の運用上の諸問題」(判タ1209号4頁以下)のうち、「(3)義務者が再婚した場合」(同7頁以下)の部分を参考にしております。)。
まず、新しく扶養しなければいけなくなった後妻の生活費と、後妻との間の子供の生活費と、前妻との間の子供の生活費を、3人とも全て同じくらいであると仮定します。そして、ご相談者様が3人の子供を扶養する場合の養育費算定表を用いて、3人分の養育費を算出した後に、その金額を3で割って1人分の金額(つまり前妻との間の子供だけの養育費)を算出するという方法です。
具体例で考えてみましょう。例えば、ご相談者様の年収(給与所得)が2000万円で、前妻の収入(給与所得)が400万円である場合、この回答作成時点の裁判所の算定表(子供3人全員が14歳以下のパターン)では、子供3人分の養育費合計は月32万円~34万円のレンジになります。そうすると、一人当たりの金額は10万円後半~11万円前半になりますので、このあたりの金額をベースとして、その他の事情を考慮して新しい養育費を考えるという方法があり得ます。したがって、現状の月20万円から十分に減額が期待できることになります。
しかしながら、この計算方法はあくまで簡易的に行うものであり、後妻にも収入がある場合には上手くいかなくなってしまうため、算定表の元になった計算式を熟知した弁護士でなければ妥当な数字を計算することは難しいでしょう。また、そもそも減額することに当然前妻は反対すると思いますので、そこでの交渉も難しいものがございます。
そこでまずは、弊所の経験豊富な弁護士に是非ご相談していただければと存じます。
先月、私が一度だけ不倫してしまったことが妻にばれてしまい、激怒した妻から離婚するよう要求されています。その中で、当然慰謝料は支払うと私も言っているのですが、慰謝料とは別に5歳の一人息子の養育費を月60万円支払うように妻から突き付けられてしまいました。
確かに私は会社を経営していて年収が5000万円近くありますが、子供を一人育てるのに月60万円も必要な訳はなく、対応に大変困っています。自分で裁判所のウェブページを調べてみたところ、養育費算定表では年収2000万円が上限になっていて、私の年収ではいくらが妥当なのかよく分からなくなっているのですが、養育費はどのように計算したらよいのでしょうか。
実は、この質問は大変難しい質問であり、弁護士によっても回答は様々なものがあり得ると思います。
大きく分けると2つ考え方があります。
まず1つ目の考え方は、算定表の元になっている計算式に代入する数字を色々代えてみて、いわば表をそのまま延長していくとどうなるのかという計算方法で計算する考え方があります(福岡高決平成26年6月30日・判タ1410号100頁等)。この考え方に立つと、妻の要求している月60万円という数字もあながち間違いではないということになりそうです。
2つ目の考え方としては、そもそも養育費算定表の上限の金額(14歳以下の子供が一人であれば妻の年収が0円であっても26万円が上限になる。裁判所ウェブページであれば、通常の子供1人の養育費としては十分な金額であり、それ以上の養育費を支払う必要はないという考え方があります(岡健太郎「養育費・婚姻費用算定表の運用上の諸問題」判タ1209号・4頁以下参照)。
どちらも十分あり得る考え方だとは思いますので、交渉次第にはなると思いますが、いずれの考え方をとるにしても法的な知識が必要になってくると思いますので、まずは一度ご相談いただければと存じます。
婚約相手がいますが、職場の男性と普通以上に仲が良く、浮気を疑っています。また、浪費癖もあり、結婚後の生活に不安を感じたため、相手にやはり結婚をやめたいと伝えたところ、相手から「婚約破棄は認めない。」と言われました。このような場合でも、結婚を取りやめることはできますか?
結論からいうと、婚約を解消して結婚を取りやめることはできますが、「不貞行為」があることを立証できなければ、正当な理由がない婚約の解消として、相手方から慰謝料を請求される可能性があります。
まず、「婚約」関係の段階では、両者の合意がなくても、片方の当事者の意思によっていつでも一方的に解消することができます。婚姻は双方の合意に基づいて成立するものである以上、当事者の意思に反して婚姻を強制することはできないためです。
しかし、一旦婚約が成立すれば、当事者に将来の婚姻成立に対する期待・信頼が発生するところ、一方的な婚約解消はこのような期待・信頼を裏切ることとなります。そこで、「正当な理由」なく一方的に婚約を解消した場合には、相手に対する慰謝料の支払義務が発生します。
そして、婚約解消の「正当な理由」は、婚姻後の離婚事由に準じて考えられますが、離婚事由よりは緩やかに認められる傾向にあります。
具体的に、「正当な理由」があると認められた例としては、相手方による不貞行為、多額の借金、虐待・暴行・侮辱があった場合や、結婚式の当日ないし新婚初夜に社会常識を相当程度に逸脱した異様な言動があった場合等が挙げられます。
「正当な理由」が認められなかった例としては、親に反対されたこと、他に好きな人ができたこと、性格や容姿に対する不満、相手の家庭・家風に対する不満、相手の親に前科があったことや、民族差別や部落差別を理由とする場合等が挙げられます。
本件について検討をしてみると、不貞行為を行ったことは婚約破棄の正当な理由となりますが、ただ単に「浮気が疑われる」というだけでは、正当な理由とは認められませんし、相手方が慰謝料請求訴訟を提起するに至った場合には、相手方が不貞行為を行い婚約破棄には正当な理由があるということを主張立証する必要があります。
弁護士にご相談いただければ、過去の裁判例等に照らして、どのような証拠があれば裁判上有利に進められるかのアドバイス等が可能です。また、「正当な理由」の立証が難しい場合であっても、弁護士がご本人に代わって相手方と婚約解消に向けた交渉を行い、裁判手続に至る前に話し合いがまとまる場合もありますので、お困りの方は、お早めにご相談ください。
HP上では、「着手金(税込)33万円~、報酬金(税込)33万円~」との表記がされていますが、具体的にはどのくらいの弁護士費用がかかると考えればよろしいでしょうか。
離婚などの案件では、相手方に請求をしていく内容によって、作業時間数、難易度が異なっていくため、初回相談にて具体的なご意向を伺ってからお見積もりを出せていただいております。
そして、費用設定のポリシーとして、一般民事事件での弁護士費用については、「ご納得いただくこと」が重要なことと考えておりますので、高いスキルをもっているから必要以上に高い弁護士報酬をいただくというようなことはありません。
例として、
①婚姻期間が短く、離婚に伴う諸条件を決める必要がなく交渉案件にとどまる場合は、着手金を、交渉、調停、裁判と段階的にいただく契約として、交渉で離婚成立する場合には「着手金がなるべくかからないような提案」もさせていただいております。
②反対に、離婚請求のみならず、多額の財産分与を請求するケース、不倫相手への慰謝料請求をするケースでは、その難易度も考慮したうえで、得られた経済的利益から一定の割合での報酬金を頂戴しております。もっとも、この報酬金の定めについても、一定の基準として現在も使用されていることの多い、(旧)日本弁護士連合会報酬等基準よりも低い水準での「経済的負担がなるべく少ない提案」をさせていただいております。
③また慰謝料請求をされたような、金銭請求をされた側の場合であっても、争う程度によって着手金、報酬金の設定を変更させていただいており、いずれにせよ納得していただけるような「丁寧なお見積もり」をださせていただいております。
④さらに離婚における離婚合意書のみの作成の場合には、時間制報酬制(1時間当たり2万2千円・税込)の提案をさせていただいており、通常の離婚案件としてご依頼いただくよりも「リーズナブルな費用で対応」させていただくことも可能であります。
初回相談にて、事案の見通し、解決に向けた戦略についてお話しをさせていただき、丁寧な見積もりを出させていただきますので、ぜひとも一度ご相談ください。
HPに書いてあるチームによる相談体制とはなんですか?
弁護士一人での代理活動ではだめなんでしょうか?
弁護士一人による代理活動が悪いとは思いません。
しかし、2点の理由から複数の弁護士が案件に関与するのが望ましいと考えております。
まず1点目は、HP上にも記載しているように、案件を「多角的視点から検討」することができるからです。人の考え方というのは10人いれば10人の考え方があるものであり、自分だけの考えで物事を判断するのは危険であると考えております。
特に自分のことであれば自己責任になるのでいいですが、クライアントの悩みを解決する立場である弁護士としては、「いろいろな視点から柔軟に考えてより良い解決に導く」ことが正しい姿であると考えております。
つぎに2点目は、「できる限り迅速な対応をするには複数のチーム体制で行うのが確実」と考えているからです。
弁護士の仕事は午前中裁判、午後調停などオフィスにいないことが多く、また出張での案件対応となると拘束時間も多く、クライアントからの連絡にすぐに返答できないことが多いです。中にはこのようにすぐに弁護士が捕まらないことにストレスを感じるお客様がいることも事実です。
そこで、複数の弁護士を案件に関与させることで、できるかぎり早く対応をできるようにしております。
以上の点から、弊所では複数の弁護士からなるチームによる相談体制を基本としております。
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