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2025/11/01

(雇用保険)出生後休業支援給付金、育児時短就業給付金の創設

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(雇用保険)出生後休業支援給付金、育児時短就業給付金の創設

目次

はじめに

 ASCOPE News Letter 2025年月3月号(※1)でも解説させていただいたところではありますが、2025年4月1日から施行される雇用保険法の改正により、雇用保険における育児休業等給付の給付金は、従来の出生時育児休業給付金、育児休業給付金に加え、新たに「出生後休業支援給付金」と「育児時短就業給付金」が創設されます。
 本稿では、新設される「出生後休業支援給付」、「育児時短就業給付」について解説いたします。(2024年7月31日号においても概要を解説させていただいたところではありますが、本号では最新の詳細情報をもとに、あらためてご案内します。)
 これにより、育児休業に関する給付金は4種類となり、より手続きが複雑化しますので、4月になって慌てることがないよう、あらかじめ制度内容を把握しておきましょう。

(※1)本稿は2025年3月号のニュースレターにて執筆されたものです。
 ASCOPEでは企業活動に関わる法改正や制度の変更等、毎月耳よりの情報をニュースレターの形で顧問先の皆様にお届けしております。
 会社法務に精通した社会保険労務士、顧問弁護士をお探しの企業様は、是非ASCOPEにご依頼ください。

両制度の概要

・出生後休業支援給付金

 この給付金は、特に男性の育児休業取得を促進し、共働き・共育てを推進するため、子の出生直後の時期に両親がともに育児休業を取得する場合、従来からある育児休業給付金に加えて支給する給付金です。
 具体的には、子の出生後8週間以内(女性の場合は産後休業後8週間以内)に、本人と配偶者の両方が14日以上の育児休業を取得した場合、最大28日間について、休業開始時賃金の13%相当額が既存の育児休業給付金(67%)に上乗せされ、合計で給付率80%(手取額の100%相当)とするものです。なお、ひとり親家庭や配偶者が専業主婦(夫)の場合など、配偶者による育児休業の取得が困難な場合については、配偶者の休業取得要件は問わないことになっています。

・育児時短就業給付金

 この給付金は、仕事と育児の両立支援の観点から、育児中の柔軟な働き方として時短勤務制度を選択しやすくすることを目的に、育児のために時短勤務を行い収入が低下した場合、その収入を補うために給付金を支給する制度です。
 具体的には、2歳未満の子を養育するために時短勤務をした場合、時短勤務中の賃金の約10%が支給されるものです。

(2025年4月1日以降の育児休業に関する給付金の体系図)
※赤枠が新設される給付金

出典:育児休業等給付について(厚生労働省)赤枠は弊所で加工
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000135090_00001.html

1.「出生後休業支援給付金」の内容と支給申請手続

(概要)
両親ともに一定期間内に通算して14日以上の育児休業(出生時育児休業を含む。)を取得し、一定の要件を満たすと最大で28日間「出生後休業支援給付金」の支給を受けることができるようになります。

(1)支給要件

被保険者(雇用保険の一般被保険者及び高年齢被保険者をいいます。)が、次の①および②の要件を満たした場合に、「出生後休業支援給付金」が支給されます。

①被保険者が、対象期間※に、同一の子について、出生時育児休業給付金が支給される出生時育児休業または育児休業給付金が支給される育児休業を通算して14日以上取得したこと。

②被保険者の配偶者が、「子の出生日または出産予定日のうち早い日」から「子の出生日または出産予定日のうち遅い日から起算して8週間を経過する日の翌日」までの期間に通算して14日以上の育児休業を取得したこと、または、子の出生日の翌日において「配偶者の育児休業を要件としない場合」(下記、(3)参照)に該当していること。

(※対象期間)
・被保険者が産後休業をしていない場合(被保険者が父親または子が養子の場合)は、「子の出生日または出産予定日のうち早い日」から「子の出生日または出産予定日のうち遅い日から起算して8週間を経過する日の翌日」までの期間。
・被保険者が産後休業をした場合(被保険者が母親、かつ、子が養子でない場合)は、「子の出生日または出産予定日のうち早い日」から「子の出生日または出産予定日のうち遅い日から起算して16週間を経過する日の翌日」までの期間。

➡2025年4月1日より前から引き続いて育児休業をしている場合は、下線部分を「2025年4月1日」として要件を確認します。

(2)支給額

支給額=休業開始時賃金日額※1×休業期間の日数(28日が上限)※2×13%

※1同一の子に係る最初の出生時育児休業または育児休業の開始前直近6か月間に支払われた賃金の総額を180で除して得た額。
※2支給日数は、対象期間における出生時育児休業給付金または育児休業給付金が支給される休業の取得日数であり、28日が上限。

育児休業中は申出により健康保険料・厚生年金保険料が免除され、勤務先から給与が支給されない場合は雇用保険料の負担はありません。また、育児休業等給付は非課税です。このため、休業開始時賃金日額の80%の給付率で手取り10割相当の給付となります。
(ただし、休業開始時賃金日額には上限額有(2025年4月1日時点:15,690円(毎年8月1日に改定)))

(3)配偶者の育児休業を要件としない場合

なお、子の出生日の翌日において、次の1~7のいずれかに該当する場合は、配偶者の育児休業を必要としません。被保険者が父親の場合は、子が養子でない限り、必ずいずれかの事由(主に4,5,6のいずれか)に該当することとなりますので、配偶者(母親)の育児休業取得の有無は要件になりません。

1.配偶者がいない 配偶者が勤務先において3か月以上無断欠勤が続いている場合または災害により行方不明となっている場合も含む。)
2.配偶者が被保険者の子と法律上の親子関係がない
3.被保険者が配偶者から暴力を受け別居中
4.配偶者が無業者
5.配偶者が自営業者やフリーランスなど雇用される労働者でない
6.配偶者が産後休業中
7.1~6以外の理由で配偶者が育児休業をすることができない
配偶者が育児休業をすることができない場合や、育児休業をしても給付金が支給されない場合(育児休業給付の受給資格がない場合など)が該当。単に業務の都合で育児休業を取得しない場合等は含まない。

(4)支給申請手続

・出生後休業支援給付金の支給申請は、原則として、出生時育児休業給付金または育児休業給付金の支給申請と併せて、同一の支給申請書を用いて行うこととなります。
・出生時育児休業給付金または育児休業給付金の申請後に、出生後休業支援給付金の支給申請を別途行うことも可能ですが、その場合は、出生時育児休業給付金または育児休業給付金が支給された後に申請することになります。

出生後休業支援給付金の支給要件を満たす場合は、支給申請書にある次の項目のいずれか一つを記入してください。

Ⅰ「配偶者の被保険者番号」欄
配偶者が雇用保険被保険者であって、出生時育児休業給付金または育児休業給付金が支給される休業を一定の期間に14日以上取得した場合は、「配偶者の被保険者番号」欄を記入します。ハローワークにおいて、記入された番号における出生時育児休業給付金または育児休業給付金の支給日数が要件を満たしているかの確認がなされます。
配偶者が出産してる場合は、配偶者が一定の期間に育児休業をすることはありませんので、被保険者が父親の場合は、子が養子でない限り、この欄を記入することはなく、「配偶者の状態」欄を記載します。

Ⅱ「配偶者の育児休業開始年月日」欄
配偶者が公務員(雇用保険被保険者である場合を除く。)であって、各種法律に基づく育児休業を一定の期間に14日以上取得した場合は、「配偶者の育児休業開始年月日」欄を記入してください。この場合、育児休業の承認を行った任命権者からの通知書の写しや共済組合からの給付金の支給決定通知書の写しなど配偶者が一定の期間に14日以上の育児休業の取得していることが確認できる書類の添付が必要です。
「配偶者の被保険者番号」欄と同様、被保険者が父親の場合は、子が養子でない限り、この欄を記入することはなく、「配偶者の状態」欄を記載いただくこととなります。

Ⅲ「配偶者の状態」欄
子の出生日の翌日において「配偶者の育児休業を要件としない場合」に該当する場合は、「配偶者の状態」欄に該当する番号を記入してください。この場合、配偶者の状態を確認できる書類を添付する必要があります。

※添付書類の詳細は以下ご参照ください。
出生後休業支援給付金において配偶者の育児休業を要件としない場合の添付書類について https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001372704.pdf

2.「育児時短就業給付金」の内容と支給申請手続

(概要)
育児時短就業給付金
2歳未満の子を養育するために所定労働時間を短縮して就業した場合に、賃金が低下するなど一定の要件を満たすと「育児時短就業給付金」の支給を受けることができます。

(1)支給要件

育児時短就業給付金は、次の①・②の要件を両方満たす方が対象です。
①2歳未満の子を養育するために、育児時短就業する被保険者(雇用保険の一般被保険者及び高年齢被保険者をいいます。)であること
②育児休業給付の対象となる育児休業から引き続いて※1、育児時短就業を開始したこと、または、育児時短就業開始日前2年間に、被保険者期間※2が12か月あること

加えて、次の③~⑥の要件をすべて満たす月について支給します。
③初日から末日まで続けて、雇用保険の被保険者(雇用保険の一般被保険者及び高年齢被保険者)である月
④1週間あたりの所定労働時間を短縮して就業した期間がある月
⑤初日から末日まで続けて、育児休業給付または介護休業給付を受給していない月
⑥高年齢雇用継続給付の受給対象となっていない月

(2)支給額

原則として育児時短就業中に支払われた賃金額の10%相当額を支給します。
ただし、育児時短就業開始時の賃金水準※3を超えないように調整されます。また、各月に支払われた賃金額と支給額の合計が支給限度額※4を超える場合は、超えた部分が減額されます。

なお、次の①~③の場合、給付金は支給されません。
①支給対象月に支払われた賃金額が育児時短就業前の賃金水準※3と比べて低下していないとき
②支給対象月に支払われた賃金額が支給限度額※4以上であるとき
③支給額が最低限度額※5以下であるとき

(3)支給対象期間

給付金は、原則として育児時短就業を開始した日の属する月から育児時短就業を終了した日の属する月までの各暦月(以下「支給対象月」という。)について支給します。

ただし、以下の①~④の日の属する月までが支給対象期間となります。
①育児時短就業に係る子が2歳に達する日(2歳の誕生日の前日)の前日
②産前産後休業、育児休業または介護休業を開始した日の前日
③育児時短就業に係る子とは別の子を養育するために、育児時短就業を開始した日※6の前日
④子の死亡その他の事由により、子を養育しないこととなった日

(4)その他、注意事項

①育児時短就業給付金の支給を受けるためには、被保険者を雇用している事業主の方が育児時短就業開始時賃金の届出、受給資格確認及び支給申請を行う必要があります。育児時短就業開始時賃金の届出、受給資格確認と初回の支給申請を同時に行うことも可能です。
②育児休業給付の対象となる育児休業から引き続き※1、同一の子について育児時短就業を開始した場合は、育児時短就業開始時賃金の届出は不要です。
③支給申請は、原則として2か月ごとに(2つの支給対象月について)行います。(被保険者が希望する場合は、被保険者の方が自ら支給申請を行うことや1か月ごとに支給申請を行うことも可能です。)

(5)経過措置(2025年4月以前から時短就業をされている方)

2025年4月1日より前から2歳未満の子を養育するために育児時短就業に相当する時短就業を行っている場合は、2025年4月1日から育児時短就業を開始したものとみなして、上記(1)②の要件や(2)①の育児時短就業前の賃金水準を確認し、要件を満たす場合は、2025年4月1日以降の各月を支給対象月として支給します。

※1育児時短就業に係る子について育児休業給付の支給を受けていた場合であって、当該育児休業給付に係る育児休業期間の末日の翌日(復職日)から起算して、育児時短就業を開始した日の前日までの期間が14日以内のときをいいます。
※2賃金支払基礎日数が11日以上ある(ない場合は、賃金の支払いの基礎となった時間が80時間以上ある)完全月。
※3原則として育児時短就業開始前6か月に支払われた賃金(臨時に支払われる賃金と3か月を超える期間ごとに支払われる賃金を除く)の総額を180で除して得た額(2025年7月31日までは、上限額:15,690円、下限額:2,869円。以後毎年8月1日に改定予定。)に30を乗じた額をいいます。ただし、育児休業給付の対象となる育児休業から引き続き育児時短就業を開始した場合は、育児休業給付の支給に用いた賃金月額をいいます。
※4「支給限度額」:459,000円(2025年7月31日までの額。以後毎年8月1日に改定予定。)
※5「最低限度額」: 2,295円(2025年7月31日までの額。以後毎年8月1日に改定予定。)
※6同じ月において、子Aの育児時短就業を終了し、別の子Bについて育児時短就業を開始した場合、その月は別の子Bの育児時短就業の支給対象期間となり、子Aの育児時短就業は前月までが支給対象期間となります。

(6)Point!特別な労働時間制度の適用を受けている場合などの取扱い

①フレックスタイム制の適用を受けている場合
清算期間における総労働時間を短縮して就業するときは、育児時短就業と取り扱います。清算期間における総労働時間は変更せずに、フレキシブルタイムの一部または全部の勤務を行わないことで、清算期間毎に欠勤控除を受けるときは、育児時短就業と取り扱いません。
②変形労働時間制の適用を受けている場合
対象期間の総労働時間を短縮して就業するときは、育児時短就業と取り扱います。対象期間の総労働時間を変更しないときの対象期間中の1週間の平均労働時間を下回る期間(いわゆる閑散期)は育児時短就業と取り扱いません。
③裁量労働制の適用を受けている場合
みなし労働時間を短縮して就業するときは、育児時短就業と取り扱います。
④いわゆる「シフト制」で就労する場合
実際の労働時間に基づいて1週間当たりの平均労働時間を算定し、短縮が確認できるときは、育児時短就業と取り扱います。
・「シフト制」とは、労働契約の締結時点では労働日や労働時間を確定的に定めず、一定期間ごとに作成される勤務割や勤務シフトなどにおいて初めて具体的な労働日や労働時間が確定するような形態をいいます。

おわりに

「出生後休業支援給付」および「育児時短就業給付」の施行に向け、手続きを滞りなく進められるよう、従業員への情報提供などの準備が必要です。今後Q&Aなど更なる詳細が行政から公開される可能性はありますが、少しずつでも現状でわかっている範囲で必要な準備を進めていきましょう。

改正内容等についてご不明な点がある場合や、法改正に伴うご相談は社会労働保険手続きの専門家である弊所社労士にお気軽に相談ください。

社会保険労務士法人ASCOPE 監修

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