ラオスにおける飲食事業に関する規定

 ラオスでは観光業の成長に伴い、飲食店の数も増加している。ラオス情報文化観光省の2020年の統計によると、ホテルの数はラオス全国において2500件以上である。2020年4月から、コロナウイルスの流行により国境が2年間閉鎖されたために、多くの飲食店は休業又は廃業に追い込まれた時期もあったが、国境往来の再開により観光客が徐々に増加し、休業となった飲食店も営業を再開し、また、新しくできた、または建設中の飲食店も見られる。中には、Texas Chicken、 Lotteria、Starbucks等、有名外資系のホテルもある。
 飲食事業関連法令として、2021年12月14日付の宿泊施設に関する情報文化観光大臣の決定第986号が公布され、同決定は宿泊施設事業の設立、外資規制、優遇措置等が定められている。以下、その内容を紹介する。

I.概要
 1.飲食店の種類
  同決定書によると、飲食店は二つの業種に分類されている。
   ①一般飲食店
    一般飲食店とは宿泊施設、娯楽施設、または観光関連事業に付属せず、独立的に事業活動を行える、法人資格を有する飲食店のことを言う。
   ②観光関連事業付属の飲食店
    観光関連事業付属の飲食店とは、宿泊施設、娯楽施設、観光施設等、観光関連事業に付属している飲食店のことをいう。
    この種類の飲食店の場合は、新たな企業登録又は事業許可を取得する必要はない。

 2.飲食事業の型式
  同決定書によると、飲食事業は二つの型式に分類されている。
   ①無店舗型飲食事業
    無店舗型飲食事業とは、祭典、博覧会、伝統儀式、結婚式やその他のイベント等に食事を提供するタイプの事業をいう。
   ②店舗型飲食事業
    店舗型飲食事業とは、当該飲食店の施設内において飲食サービスを提供するタイプの事業をいう。

 3.外資規制
  ラオス政府は、49席以下の飲食事業は、多くの資金を要しない小規模の飲食事業として、ラオス国籍者に保全し、外国資本の参入を認めない。

II.飲食店事業に対する税優遇
 ラオス投資奨励関連法令に基づき、投資奨励地域は以下のとおり、3地域に区分され、それぞれの地域において受けられる優遇内容が異なる。

 1.第1地域
  貧困地域、僻地、経済・投資活動やビジネス活動について、経済的・社会的インフラが整っていない地域であり、下記の23郡が第1地域に分類されている。

  第1地域において活動する宿泊施設事業は、利潤税、輸入関税及び付加価値税の税優遇を受けられる。
  利潤税については、その宿泊施設のグレードによって、事業許可を取得してから1年間から5年間の免税優遇を受けられる。

  各宿泊施設のグレードは、事業許可を取得後1年以内に、宿泊施設のグレード評価委員会により評価及び決定される。その後、5年ごとに評価の見直しが行われる。

  輸入関税及び付加価値税については事業許可を取得から1年間、ラオス国内で調達することができない、宿泊施設の運営に直接関係する器具、食品加工、製造機器などの輸入に関して、輸入関税の免税、及び付加価値税の0%税率の税優遇を受けられる。

 2.第2地域
  経済・投資活動やビジネス活動について、経済的・社会的インフラが整っているとされている地域であり、第1地域に分類されている郡以外の郡が第2地域に分類されている。
  第2地域において活動する宿泊施設事業は税優遇を受けられない。

 3.第3地区
  経済特区内を指す。税優遇はそれぞれの経済特区の規定に従う。

III.飲食事業の設立
 1.事業者資格要件
  飲食事業を行う個人及び法人は以下の要件を満たさなければならない。
   1.ラオスの法律に従い、飲食事業を登記登録した個人又は法人であること
   2.関連法令が定めた登録資本金の要件を満たしていること
   3.法令により規制されている個人又は法人でないこと

 2.登録資本金
  飲食店の登録資本金は、清潔・安全基準のグレード付けの要素の一つである。
  登録資本金は実在しているものであり、かつ、関連法令に従いラオス国内にある銀行により確認できるものでなければならない。
  宿泊施設事業は、その規模によって以下の通りの制定登録資本金が規定されている。

   ・100 席以上の飲食店:US$50,000以上
   ・50から99席までの飲食店:US$100 ,000以上
   ・20~49席までの飲食店:US$10,000以上
   ・19席以下の飲食店:登録資本金の規定なし

  外国資本によるコンセッション事業の登録資本金は投資奨励法および関連法令の規定に従う。

 3.飲食事業の設立
  1.設立手続の流れ
   飲食事業を起業するには、事業者資格要件を満たしたうえで、下記の手続きを行わなければならない。

    ①所管の商工局にて企業登録すること
    ②企業登記簿が発行された後、最寄の情報文化観光局のワンストップサービス窓口にて後述の事業許可申請書類を提出すること
    ③ワンストップサービス窓口は申請書類を受理したあと、2公務日以内に当該申請書類を所管の情報文化観光局に送達しなければならない。
    ④当該情報文化観光局はその他関連機関と連携して当該申請について迅速に検討し、申請書類を受理してから7公務日以内に申請者に対し、許可する場合はその旨とともに許可の発行費用並びに手数料等を通知し、また、不許可の場合はその法的根拠を示して通知しなければならない。
    ⑤発行された事業許可証の使用期限は無期限であるが、1年ごとに事業継続の確認手続きをしなければならない。

  2.事業許可の申請書類
   ア.新規申請の場合
    ①事業許可申請書 1枚
    ②企業登録書の写し 1枚
    ③企業登録申請書一式の写し 1セット
    ④企業定款の写し 1セット
    ⑤事業主の証明写真(3cm x 4cm) 2枚

   イ.事業継続の確認手続きの場合
    ①事業許可の更新申請書 1枚
    ②最新の納税証明書

(以上)

出典
 2021年12月14日付、第986号の飲食事業に関する情報文化観光大臣の決定
 2021年5月14日付、第0767号の法人税および国土のリース・コンセッション費に係る投資優遇についての計画投資省大臣ガイドライン