ラオスにおける工場事業に関わる規則の違反行為に対する過料の規定

ラオスにおける

工場事業に関わる規則の違反行為に対する過料の規定

 ラオスは、工業化が進んでいることに連れ、工場事業に関わる法規が徐々に整備されている。2013年には改善版の加工業法が公布され、工場事業の設立や運営等に関する内容の他、工場事業の促進措置、違反者に対する罰則措置等が規定された。
 同法が定めた罰則措置の一つとして、過料措置が挙げられた。犯罪行為とならない違反行為に対し科されるものであるが、その具体的な内容が同法では明らかになっていなかった。
 過料の対象となる違反行為を類型化し、過料の内容を明白化したのは、2023年8月に公布された工商大臣令第1233号であった。本レポートはその内容を紹介する。

I. 工場事業関連規則の違反行為の類型
 以下の行為は、工場事業関連規則に違反する行為として、過料の対象となる。

1.許認可を得ずに工場を設立、移転、運営、又は拡大する行為
2.指定の場所以外、又は禁止されているエリアで工場を設立する行為
3.要登録事業であるにもかかわらず、企業登録をせずに零細自営工場を設立する行為
4.所管の工商局に届け出ずに、零細自営工場事業を行う行為
5.工場規模に応じての、総出力制限を超えた機械を設置する行為、又は許可を得ずに機械を移転する行為
6.許可を得ずに工場を改名、譲渡、売却、貸借、又は事業者名義人の変更をする行為
7.許認可と異なった内容の事業を行う行為
8.許可を得ずに、原料、機械、器具を輸入する行為、又は外国人労働者を採用する行為
9.許可を得ずに危険な化学品を輸入又は工場内で使用する行為
10.当局の命令に従わない行為や妨害する行為(例えば工場の稼働を止めるために工場検査官が機械にかけた錠や鎖を切断する行為等)
11.廃棄物処理に関する技術的認証の取得に先立ち、廃棄物処理システムを建設、修正、又は関連機械を設置する行為
12.法令に定められた処理の基準を満たさずに排気ガスや廃棄物を放出する行為
13.工場技術基準に従わない行為
14.事業許可の有効期間を過ぎてからの事業許可の更新をする行為
15.有効期間が切れた事業許可証の使用行為

II. 違反行為に対する過料の規定
 上記の違反行為をした場合、以下の通り過料が科される。

1.許認可を得ずに工場を設立、移転、運営、又は拡大する行為
   許認可を得ずに工場を設立、移転、運営、又は拡大した工場事業者に対し、次の通り過料が科される。
 ・小規模工場の場合は一回当たり5,000,000キープ
 ・中規模工場の場合は一回当たり10,000,000キープ
 ・大規模工場の場合は一回当たり15,000,000キープ

2.指定の場所以外、又は禁止されているエリアで工場を設立する行為
   指定の場所以外、又は禁止されているエリアで工場を設立した工場事業者に対し、次の通り過料が科される。
 ・小規模工場や零細自営工場の場合は一回当たり5,000,000キープ
 ・中規模工場の場合は一回当たり10,000,000キープ
 ・大規模工場の場合は一回当たり15,000,000キープ

3.要登録事業であるにもかかわらず、企業登録をせずに零細自営工場を設立する行為
   要登録事業であるにもかかわらず、企業登録をせずに零細自営工場を設立した工場事業者に対し、一回当たり2,000,000キープの過料が科される。

4.所管の工商局に届け出ずに、零細自営工場事業を行う行為
   所管の工商局に届け出ずに、零細自営工場事業を行った者に対し、一回当たり1,000,000キープの過料が科される。

5.工場規模に応じての、総出力制限を超えた機械を設置する行為、又は許可を得ずに機械を移転する行為
   工場規模に応じての、総出力制限を超えた機械の設置、又は許可なしの機械の移転を行った者に対し、次の通り過料が科される。
 ・小規模工場や零細自営工場の場合は一回当たり2,000,000キープ
 ・中規模工場の場合は一回当たり4,000,000キープ
 ・大規模工場の場合は一回当たり6,000,000キープ

6.許可を得ずに工場を改名、譲渡、売却、貸借、又は事業者名義人の変更をする行為
   許可を得ずに工場を改名、譲渡、売却、貸借、又は事業者名義人の変更をした工場事業者に対し、次の通り過料が科される。
 ・小規模工場の場合は一回当たり1,000,000キープ
 ・中規模工場の場合は一回当たり2,000,000キープ
 ・大規模工場の場合は一回当たり3,000,000キープ

7.許認可と異なった内容の事業を行う行為
   許認可と異なった内容の事業を行った者に対し、次の通り過料が科される。
 ・小規模工場の場合は一回当たり3,000,000キープ
 ・中規模工場の場合は一回当たり6,000,000キープ
 ・大規模工場の場合は一回当たり9,000,000キープ

8.許可を得ずに、原料、機械、器具を輸入する行為、又は外国人労働者を採用する行為
   許可を得ずに、原料、機械、器具を輸入し、又は外国人労働者を採用した工場事業者に対し、次の通り過料が科される。
 ・小規模工場の場合は一回当たり2,000,000キープ
 ・中規模工場の場合は一回当たり4,000,000キープ
 ・大規模工場の場合は一回当たり6,000,000キープ

9.許可を得ずに危険な化学品を輸入又は工場内で使用する行為
   許可を得ずに危険な化学品を輸入又は工場内で使用した工場事業者に対し、当該危険化学品の差押えとともに、次の通り過料が科される。
 ・小規模工場の場合は一回当たり5,000,000キープ
 ・中規模工場の場合は一回当たり10,000,000キープ
 ・大規模工場の場合は一回当たり15,000,000キープ

10.当局の命令に従わない行為や妨害する行為(例えば工場の稼働を止めるために工場検査官が機械にかけた錠や鎖を切断する行為等)
    工場の稼働を止めるために工場検査官が機械にかけた錠や鎖を切断する行為等のような、当局の命令に従わない行為や妨害する行為を行った工場事業者に対し、次の通り過料が科される。
 ・小規模工場の場合は一回当たり2,000,000キープ
 ・中規模工場の場合は一回当たり4,000,000キープ
 ・大規模工場の場合は一回当たり6,000,000キープ

11.廃棄物処理に関する技術的認証の取得に先立ち、廃棄物処理システムを建設、修正、又は関連機械を設置する行為
    廃棄物処理に関する技術的認証の取得に先立ち、廃棄物処理システムを建設、修正、又は関連機械を設置した工場事業者に対し、次の通り過料が科される。
 ・小規模工場の場合は一回当たり3,000,000キープ
 ・中規模工場の場合は一回当たり5,000,000キープ
 ・大規模工場の場合は一回当たり7,000,000キープ

12.法令に定められた処理の基準を満たさずに排気ガスや廃棄物を放出する行為
    法令に定められた処理の基準を満たさずに排気ガスや廃棄物を放出した工場事業者に対し、次の通り過料が科される。
 ・小規模工場や零細自営工場の場合は一回当たり10,000,000キープ
 ・中規模工場の場合は一回当たり15,000,000キープ
 ・大規模工場の場合は一回当たり20,000,000キープ

13.工場技術基準に従わない行為
    工場技術基準に従わない工場事業者に対し、次の通り過料が科される。
 ・小規模工場や零細自営工場の場合は一回当たり3,000,000キープ
 ・中規模工場の場合は一回当たり5,000,000キープ
 ・大規模工場の場合は一回当たり7,000,000キープ

14.事業許可の有効期間を過ぎてからの事業許可の更新をする行為
    事業許可の有効期間を過ぎてから、事業許可の更新をした工場事業者に対し、次の通り過料が科される。
 ・小規模工場や零細自営工場の場合は一回当たり1,000,000キープ
 ・中規模工場の場合は一回当たり2,000,000キープ
 ・大規模工場の場合は一回当たり3,000,000キープ

15.有効期間が切れた事業許可証の使用行為
    有効期間が切れた事業許可証を使用した工場事業者に対し、次の通り過料が科される。
 ・小規模工場や零細自営工場の場合は一回当たり5,000,000キープ
 ・中規模工場の場合は一回当たり10,000,000キープ
 ・大規模工場の場合は一回当たり15,000,000キープ

III. 加重規定
 上記の違反行為を繰り返した工場事業者に対し、それぞれの罰則規定に基づき、以下の通り加重される。
1.2回目の違反行為をした場合、2倍の過料が科される
2.3回目の違反行為をした場合、5倍の過料が科されるとともに、工場事業許可が取り消される

IV. 工場規模の分類
 上述の工場の規模については、以下の通り、その作業員の数又は機械の総出力に基づき分類される。
 ・小規模工場とは、機械の総出力が10馬力から50馬力、又は作業員が10人から50人の工場をいう
 ・中規模工場とは、機械の総出力が51馬力から200馬力、又は作業員が50人から200人の工場をいう
 ・大規模工場とは、機械の総出力が201馬力以上、又は作業員が201人以上の工場をいう

(以上)

出典:
2013年12月27日付、第48/NA号の加工業法
2023年8月2日付、第1233/MOIC号の加工事業に関わる規則の違反行為に対する過料の措置に関する工商大臣令