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2021.10.08

救済法認定資料の開示方法

田畑 優介

本稿執筆者 田畑 優介(たばた ゆうすけ)
法律事務所 ASCOPE所属弁護士

愛知学院大学法学部 卒業
明治大学法科大学院 修了

弁護士の職務は困った立場にある方のお話に傾聴し、寄り添い、よりよい解決に向けた道しるべを提供することであると考えています。お困りごとを抱えていらっしゃる方は一度お話をお聞かせください。よりよいアドバイスができるよう誠意努力いたします。

【ポイント】 ・アスベストが起因の疾病を患い救済法上の認定をされた方が、国家賠償請求等を検討している場合、救済法認定時に環境再生保全機構が作成した調査資料等を取得し、調査する方法が考えられます。 ・救済法認定の調査資料等の開示決定がなされるまで、1か月以上かかることがあります。 ・肺がんや中皮腫の病態で認定されている場合には、調査資料等の開示を受けた後、改めてばく露作業に関する調査を行う必要があります。

〈目次〉

救済法認定資料の開示方法
第1 はじめに
第2 救済法認定時の調査資料等の開示請求先について
第3 開示請求に必要な書類について
 1 申請書類
 2 本人確認書類について
  (1) 直接窓口にて開示請求を行う場合
  (2) 郵送による開示請求の場合
 3 手数料について
第4 救済法認定資料の開示・不開示決定が通知される期間について
第5 留意点

第1 はじめに

 アスベストに由来した疾病を患い救済法(石綿による健康被害の救済に関する法律をいいます。以下同じ。)上の認定を受けた方が、国家賠償請求や企業賠償等を検討している場合、まずは、救済法の認定時に環境再生保全機構(救済法認定機関)が作成した調査資料等を取得し、同資料を検討することから始まります。
 そこで、以下では環境再生保全機構が作成した調査資料等の取得方法を紹介します。

第2 救済法認定時の調査資料等の開示請求先について

 環境再生保全機構の作成した調査資料等の開示請求先は、同じく独立行政法人環境再生保全機構です。

第3 開示請求に必要な書類について

 環境再生保全機構の作成した調査資料等の開示を行うためには、以下の書類が必要となります。

 1 申請書類
  ・保有個人情報開示請求書(※環境保全機構のホームページに書式があります。)    ※日付・ご住所・お名前を記入し、項目1~4に必要事項を記載します    「開示を請求する保有個人情報」について、以下の(記載例)をご参照ください。
(記載例)
私の亡夫 ○○○○(昭和○年○月○日生)が、アスベストにより健康被害を被ったことで石綿健康被害救済制度救の対象となっている医療費給付(受給者番号:●●●●(※1))について、貴法人が亡夫のアスベストが同救済制度の対象と決定した理由がわかる調査関係文書一式。
※1 「受給者番号」●●●●部分には、たとえば石綿健康医療手帳(ピンク)をお持ちの場合、表紙に記載のある番号を記入してください。

 2 本人確認書類について
 (1) 直接窓口にて開示請求を行う場合
    直接窓口にて開示請求を行う場合には、窓口で本人確認を行いますので、本人確認書類(本人の住所地が記載されている運転免許証や健康保険被保険証等を持参する必要があります。
 (2) 郵送による開示請求の場合
    郵送による開示請求を行う場合、保有個人情報開示請求書と一緒に本人確認書類(運転免許証、健康保険証など)の写し、請求者となる方の住民票の写し、及び請求者がアスベスト被害にかかる患者様のご遺族である場合には「戸籍謄本」等の患者様との身分関係を証する資料も併せて郵送する必要があります。

 3 手数料について
    開示請求手数料は、1件につき300円となります。なお、郵送により開示請求を行う場合、郵送の費用(郵便切手代など)も別途生じます。
    ※開示請求手数料の支払い方法は、
①現金(窓口での請求の場合のみ)、②現金書留、③郵便為替のいずれかです。

    ※切手、収入印紙による支払いはできません。
    ※なお、現金書留の場合には手数料がかかってしまうので、郵送請求の場合には郵便為替を利用する方法をお勧めします。

第4 救済法認定資料の開示・不開示決定が通知される期間について

 救済法認定資料の開示・不開示の決定は、法律の定めにより30日以内に行わなければならないとされています。
 ただし、法律上、事務処理上の困難その他正当な理由により30日以内に開示・不開示の決定を行うことが困難な場合には、更に30日延期できるとされており、救済法認定資料の枚数が多くなると、この規定により開示決定まで30日以上かかる場合もあります。

第5 留意点

 以上に述べたとおり、救済法の認定を受けた方による国家賠償請求や企業賠償等の検討にあたっては、まず救済法認定時の調査資料等の開示を受け同資料を精査することから始めますが、調査資料等の開示を受けても必ず石綿ばく露歴に関する有益な資料を得られるわけではありません。特に、肺がんや中皮腫の病態で認定されている場合、ばく露作業歴の申告書の提出が不要となっていることから、国家賠償請求等を検討する際には、改めてばく露作業に関する調査を行う必要がありますので、この点は予め注意が必要です。

【弁護士への相談について】

 救済法認定資料がある場合、弁護士が救済法認定資料に基づいて速やかに調査を開始することができるため、弁護士に相談する前に予め救済法認定資料の開示をしておくことをおすすめします。もっとも、救済法認定資料の開示手続きをご自身で行うことが困難である場合、開示方法のアドバイスができますので、お気軽にご相談ください。

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