2021年1月12日
肺がんの病態と救済手続きについて
2021年1月4日
船舶の修繕作業に従事した結果、中皮腫に罹患して死亡した従業員の遺族が提起した訴訟において、元請会社の責任が認められた事例(大阪地裁平成23年9月16日判決)
2020年12月28日
石綿肺の病態と救済手続きについて
2021年1月12日
アスベスト被害
2021年1月4日
アスベスト被害
「船舶の修繕作業に従事した結果、中皮腫に罹患して死亡した従業員の遺族が提起した訴訟において、元請会社の責任が認められた事例(大阪地裁平成23年9月16日判決)」を追加
2020年12月28日
アスベスト被害
アスベストの粉塵を吸い込むことで、中皮腫等の深刻な病気を引き起こすことが知られています。しかしながら、発症までの期間が長い一方で、その利便性や経済性等から企業や国による有効な対策がとられないまま大量の使用が続けられてきました。その結果、近年になって、アスベスト製品の製造工場・造船工場・建築現場等で働いていた方やそのご家族、アスベスト工場等の近隣住民の方などを中心に、アスベストを原因とする重篤な病気を発症され、長年苦しまれている方、亡くなる方が増えています。
私たちは、このような重大な健康被害が生じてしまったことについては、アスベストの危険性を認識しながら問題を先送りにし、対策を怠ってきた国・企業に大きな責任があると考えます。被害の救済・回復を図るため、各種救済制度のご案内、各申請のサポート及び企業または国に対する損害賠償等について取り組んでいます。
【悪性中皮腫とは】
悪性中皮腫は、内臓を覆う膜(肺を覆う胸膜など)の表面をさらに覆う中皮細胞に発生する悪性腫瘍です。その大半は胸膜に発生し、次いで腹膜に多く発生します。他の発生部位としては心膜、精巣鞘膜が挙げられます。
【症状】
悪性中皮腫の中でも特に多い胸膜中皮腫の場合、まずは肺を覆う胸膜の中皮細胞に悪性の腫瘍が発生し、徐々に腫瘍化が広がります。胸膜全体や肺・心膜・リンパ節に腫瘍が広がるほか、進行した場合には脳・肝臓・骨等にまで転移することもあります。
胸膜中皮腫の代表的な症状としては、胸水貯留、悪心、胸痛・背部痛、息切れ・咳・呼吸困難等が挙げられます。胸水貯留については自覚症状がないことがほとんどであるため、胸痛等の自覚症状が現れた場合には既に病期が進行しているおそれがあります。
腹膜中皮腫では腹痛、腹部膨満など、心膜中皮腫では不整脈、息切れなどの症状が見られます。
【石綿ばく露との関係】
中皮腫と石綿ばく露は強く関連しており、「中皮腫の70%が職業性アスベストばく露による」との指摘もされています(岸本卓巳編「改訂版アスベスト関連疾患 早期発見・診断の手引」一般社団法人日本労務研究会、2013年、17頁)。また、職業性の高濃度の石綿ばく露を受けるアスベスト工場・建設現場等で働く労働者に限らず、その家族や工場の近隣住民等、極めて低濃度の石綿ばく露しか受けていない方でも発症する場合があります。
中皮腫は、30年~40年程度の長い潜伏期間を経て発症します。日本では、高度経済成長期に入るとアスベストの輸入量が激増したため、1990年代後半以降、中皮腫による死亡者数は増加の一途を辿っています。
【肺がん(原発性肺がん)とは】
肺がんとは、気管、気管支及び肺胞の上皮等に発生する悪性腫瘍を指します。肺がんは、(悪性)中皮腫とは異なり、石綿だけでなく、喫煙も肺がん発生の原因であることが知られています。
【症状】
代表的な症状としては、咳、痰、血痰、呼吸困難、胸痛などが挙げられます。また、自覚症状がなくても胸部エックス線検査や胸部CT検査を行った際に、肺がんと診断される例もあります。
【石綿ばく露との関係】
石綿ばく露量が増加した場合、肺がん発生の頻度が高くなるとの指摘がなされています。石綿を原因とする肺がんは、最初のばく露から30年~40年程度の長い潜伏期間を経て発症すると言われています。
【びまん性胸膜肥厚とは】
びまん性胸膜肥厚とは、石綿へのばく露によって肺を覆う胸膜(臓側胸膜)が慢性的に線維化し、炎症を引き起こすことで胸膜が肥厚した状態をいいます。ただ、胸膜が肥厚する原因は石綿ばく露に限られるものではありません。また、広範囲の胸膜プラークとの鑑別が必要です。
【症状】
びまん性胸膜肥厚の症状について、自覚症状が無いことも多いようですが、進行すると呼吸機能の低下による呼吸困難や胸痛、発熱等を伴うことがあります。また、石綿へのばく露が原因の場合、石綿肺が合併していることもあります。なお、びまん性胸膜肥厚は良性石綿胸水から生じることもあるので注意が必要です。
【石綿ばく露との関係】
比較的高濃度の石綿へのばく露により発症すると考えられており、潜伏期間は30年~40年といわれています。労災認定では3年以上の職業性のばく露が一つの基準となっています。
【石綿肺とは】
石綿肺は、石綿粉じんを吸入することによって発症する、肺が線維化する疾患(肺線維症のひとつ)です。肺が線維化する原因は、粉じんや薬品等さまざまなものがありますが、石綿粉じんのばく露を原因として発症するものを石綿肺と呼んでいます。
【症状】
主な症状は、労作時の息切れ、咳、痰、乾性咳嗽(痰を伴わない乾いた咳)、疲労などです。症状が更に進行すると、呼吸不全や肺がんを発症する場合もあります。石綿肺の患者は、石綿肺がない場合に比べて高い頻度で肺がんを発症するといわれており、喫煙者は更に高リスクであると言われています。
【石綿ばく露との関係】
石綿肺は、石綿の高濃度ばく露が原因で発症する職業性の疾患です。また、石綿肺の潜伏期間は通常10年以上、一般に15~20年といわれています。
【良性石綿胸水とは】※救済法との関係では対象外の疾病となりますのでご注意ください。
胸水は胸腔内に体液が貯留してしまうことをいい、そのうち特に石綿粉じんを吸引したことを原因として胸膜炎が発生することにより胸水が生じたものが良性石綿胸水と呼ばれています。
【症状】
自覚症状は呼吸困難や胸痛、発熱等といったものが挙げられますが、自覚症状がない場合もあります。
【石綿ばく露との関係】
最初の石綿ばく露から10年内に発症することもあれば、40年以上経って発症することもあります。また、比較的高濃度の石綿曝露状況があった場合に生じるものとされています。ただし、胸水は肺炎や悪性腫瘍等によっても発生する可能性があるため、良性石綿胸水と診断するにはこれら他原因を排斥する必要があるとされています。
1
工場型アスベスト被害
石綿(アスベスト)製品の製造に従事していた従業員の方が典型例です
2
建設型アスベスト被害
石綿(アスベスト)を使った建物等の建設・解体等によって、アスベスト被害を受けられた方が典型例です
(参考資料) 厚生労働省「石綿ばく露作業による労災認定等事業場一覧表」
※なお、上記典型例以外のアスベスト被害についても、ご相談を受け付けております。
アスベスト被害についての救済手続きは、
大きく分けて下記の手続きがあります。
補償・給付手続き
1
労災制度による補償
2
石綿健康被害救済制度(石綿救済法)による給付
企業・国に対する
損害賠償請求
1
「企業」に対する損害賠償請求
2
「国」に対する損害賠償請求
「工場型アスベスト被害」については、アスベスト工場内の作業に従事しアスベスト被害を受けた人々が国家賠償請求を提起し国の賠償義務が認められるに至りました(泉南アスベスト訴訟最高裁判決。最判平成26年10月9日)。現在では、同様の状況によりアスベスト被害を受けた人々についても、上記最高裁に示された基準に従い、和解により、国が症状に応じて一定の賠償金を支払う運用がとられています。
「建設型アスベスト被害」においても、国の賠償義務が認められるに至りました(令和2年12月14日の最高裁決定により、東京高裁判決平成30年3月14日で認定された国の責任について確定)。今後、同様の被害を受けた方についても上記の基準で解決されることが予想されますが、同種の裁判が最高裁判所に複数係属中であり、引き続き注視していく必要があります。
お気軽にご相談ください。
1
工場型アスベスト被害の場合に
大阪泉南最高裁判決に基づき、以下の基準を満たすことにより国が一定の賠償金を支払う運用が取られています。
①昭和33年(1958年)5月26日から昭和46年(1971年)4月28日までの間に、局所排気装置を設置すべき石綿工場内において、労働者として、石綿粉塵に曝露する作業に従事したこと
②その結果石綿(アスベスト)関連疾患(石綿肺、肺がん、中皮腫、びまん性胸膜肥厚等)に罹患したこと
③提訴の時期が損害賠償請求権の期間内(原則として現在の病態になったときから20年以内)であること
1,150万円
管理4、肺がん、中皮腫、びまん性胸膜肥厚の場合
1,200万円
石綿肺(管理2・3で合併症なし)による死亡の場合
1,300万円
石綿肺(管理2・3で合併症あり又は管理4)肺がん、中皮腫、びまん性胸膜肥厚による死亡の場合
550万円
じん肺管理区分の管理2で合併症がない場合
700万円
管理2で合併症がある場合
800万円
管理3で合併症がない場合
950万円
管理3で合併症がある場合
※遅延損害金等は除いた額になります。
2
建設型アスベスト被害の場合に
令和2年12月14日の最高裁決定により、東京高等裁判所平成30年3月14日判決で認められた国の責任が確定しました。
具体的には、
①昭和50(1975)年10月1日から平成16(2004)年9月30日までの間に、
②建設現場の屋内作業従事によって石綿(アスベスト)粉じんにばく露し(注1)
③石綿関連疾患(管理4または管理2・3で合併症のある石綿肺、中皮腫、肺がん、びまん性胸膜肥厚、良性石綿胸水)を発症した
④労働者・一人親方等(労災保険の特別加入資格を有する者)ないしそのご遺族(注2)
に対して、国の責任が認められました。
(注1)屋内作業の例:吹付工、左官、塗装工、タイル工、エレベーター設置工、サッシ工、墨出し大工、防災シャッター工、ALC工、空調設備工、ダクト工、保湿工、築灯煉積工、大工、内装工、電工、電気保安工、配管工、ブロック工、鉄骨工、溶接工、解体工、とび、はつり工、現場監督、清掃作業等
(注2)屋外作業従事者については国家賠償請求は認められていません。
建設型アスベスト国賠訴訟の国の責任(負担分)
※東京高判平成30年3月14日及び最高裁決定による
約433万円
じん肺管理区分の管理2で、合併症がある場合
600万円
管理3で合併症がある場合
約733万円
肺がん、中皮腫、びまん性胸膜肥厚、良性石綿胸水または管理4の場合
約833万円
石綿関連疾患による死亡の場合
※遅延損害金等は除いた額になります。
※上記病状に該当しても、喫煙歴等がある場合や上記国の責任期間において職業ばく露期間を満たしていない場合には、減額される場合があります。
代表弁護士 阿部 豊
(東京弁護士会所属)
ASCOPEでは、
1
工場型アスベスト被害
2
建設型アスベスト被害
これらに限定されず、業務上に起因してアスベスト被害を受けた方々
(及びご遺族の方)のご相談を幅広く受け付けております。
お気軽にご相談ください。
メールでのお問い合わせはこちら