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2020.06.12

アスベスト(石綿)被害の歴史

樋沢 泰治

本稿監修者 樋沢 泰治(ひざわ たいじ)
法律事務所 ASCOPE所属弁護士

アスベスト(石綿)被害の歴史

目次

1 アスベスト利用の歴史
2 クボタ・ショック
3 年々増加する石綿被害者
4 日本における石綿関連年表



1 アスベスト利用の歴史

 アスベストは、耐熱性や防音性、絶縁性など様々な特質を有していることから、非常に有用な鉱物として重宝されてきました。
 上記のような特徴から、アスベストの利用態様は様々でしたが、特に船舶関係や建材製品に多く利用されてきました。
 アスベストの輸入は、明治20年代から始まり、第二次世界大戦中は一旦輸入が途絶えたものの、戦後また輸入が再開されました。日本におけるアスベスト輸入量は、昭和40年代後半(1970~1975年頃)にピークを迎え、年間30万トンを超える量の石綿が輸入されました。
 その後は、国の規制により石綿の使用が禁止されるようになり、それに伴って石綿の輸入量は減少していき、最終的には、平成18年(2006年)にアスベストの輸入が途絶えました。




2 クボタ・ショック

 平成17年(2005年)6月29日、アスベストの危険性が社会に露見する出来事が起こりました。
 大手機械メーカーであるクボタが、アスベストを取り扱う工場で働いていた社員や退職者、請負会社の従業員、地域住民の間で、中皮腫など石綿関連疾患の患者が多数発生し、合計79人が死亡、現在療養中の退職者も18人に及ぶことを発表したのです(この出来事を「クボタ・ショック」といいます。)。
 クボタ・ショック前は、アスベストが肺がんなどを引き起こし、死に至らしめるものであることは、社会の中でさほど浸透していませんでした。
 しかし、クボタ・ショックを受けて、実際にアスベストを取り扱っていた労働者だけでなく、周辺住民にも被害が及ぶことが明らかになり、アスベスト禁止の風潮がより強まることになりました。




3 年々増加する石綿被害者

 石綿関連疾患の診断は、労災等の救済制度の利用者の内、石綿関連疾患による死亡者は1990年代から増加傾向にあり、特に2005年(平成17年)以降は毎年500人を超える患者が亡くなっています(第1図)。この統計上で、これまでに石綿関連疾患で亡くなった患者は、13,564人にのぼります。
 また、アスベストが発症原因の一つとして知られる中皮腫による死亡者数も、2016年の中皮腫による死亡総数は1,550人であり、1995年の死亡総数500人と比較して3倍強に年々増加しています(第2図)。

第1図(「石綿による肺がん・中皮腫・石綿肺・良性石綿胸水・びまん性胸膜肥厚の遺族補償給付及び特別遺族給付金に係る労働者の性別・疾病別・死亡年別一覧(平成30年度以前支給決定分)」(厚生労働省)(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08389.html)を加工して作成)

第2図(「都道府県(特別区-指定都市再掲)別にみた中皮腫による死亡数の年次推移(平成7年~30年)」(厚生労働省)(https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/tokusyu/chuuhisyu18/dl/chuuhisyu.pdf)を加工して作成)




4 日本の石綿関連年表(以下、本章において福岡地判平成26年11月7日の記載を参照)

⑴ 関係法令について
ア 旧労基法・旧安衛則・旧特化則の施行
 昭和22年に施行された旧労基法は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものとして労働条件を確保することを目的として制定されました。
 旧労基法は、使用者に対して、粉じん等による危害防止等のために必要な措置を講じる義務を定め、また、使用者が、労働者を雇い入れた場合にその労働者に安全衛生教育を実施することを義務付けました。なお、旧労基法42条から44条までの規定により使用者が講ずべき措置及び労働者が遵守すべき事項は、命令に委任されており、旧安衛則(同年施行)及び旧特化則(昭和46年施行)が、上記の措置及び事項の具体的内容を定めています。特に、旧特化則では、①局所排気装置の設置、②容器等への取扱注意事項等の表示、③作業主任者の選任、④作業環境測定の実施、⑤保護具の備え付け等の規制の義務付けがなされました。

イ じん肺法の施行
 昭和35年に施行されたじん肺法は、石綿肺をも含むようにじん肺を定義し、事業者に対し、じん肺の予防のための措置を講ずるよう努める義務を課すほか、じん肺に関する予防及び健康管理のために労働者に必要な教育を実施する義務を課しています。

ウ 安衛法・安衛則・特化則の改正
 昭和47年、安衛法が施行され、これに伴い、旧労基法の規定が改正され、労働者の安全及び衛生に関しては、安衛法の定めるところによるものとされました。事業者は、労働者の健康障害の防止等のために必要な措置を講じなければならないものとされ、また、事業者は、労働者を雇い入れたとき及び労働者の作業内容を変更したときにその労働者に安全衛生教育を実施しなければならないものとされました。事業者が講ずべき措置及び労働者が守らなければならない事項は、労働省令に委任されており、安衛則及び特化則が、上記の措置及び事項の具体的内容を定めています。特に、昭和50年に改正された特化則は、石綿の吹付作業の原則禁止、建設・解体現場における対策措置等が規定されました。

エ 廃棄物処理法の改正
 平成4年に改正された廃棄物処理法は、特別管理廃棄物制度を創設し、「廃石綿等」を特別管理廃棄物に指定しました。

オ 安衛法施行令・安衛則の改正
 平成7年、安衛法施行令が改正され、青石綿、茶石綿並びにこれらの含有製品の製造、輸入、譲渡、提供又は使用が禁止されました。
 また、同年には安衛則の改正があり、①耐火建築物等における保護具、作業衣等の使用、②解体工事における石綿等の使用状況の調査、③吹き付けられた石綿等の除去作業における作業場所の隔離等による規制強化がなされました。

カ 大気汚染防止法の改正
 同年には、大気汚染防止法の改正もなされました。これにより、吹き付け材等使用建築物の解体工事が届出制とされました。

キ PRTR制度の実施
 平成13年からPRTR制度が実施されました。PRTR制度は、人の健康や生態系に有害なおそれのある化学物質の排出を抑制するために、事業所から化学物質の排出量等を、事業者が国に届出をし、これを受けて国が排出量等を集計・公表する制度です。同制度において、石綿の排出・移動量の届出義務化がなされました。

ク 安衛法施行令の改正
 平成15年、安衛法施行令が改正され、白石綿の含有製品(建材、摩擦材、接着剤)についても製造、輸入、譲渡、提供又は使用が原則禁止とされました。

ケ 石綿障害予防規則の施行
 平成17年、石綿障害予防規則が施行されました。同規則は、今後、石綿製品が使用された建築物の解体等が増加すること等から、建築物の解体作業等における石綿健康障害防止対策の充実を図るために規定されました。

コ 石綿被害者救済法の施行、石綿関連4法の改正
 平成18年、石綿によって健康被害を受けた方々を救済するため、石綿被害者救済法が施行されました。
 また、同年には、石綿関連4法が改正されました。石綿関連4法とは、大気汚染防止法、地方財政法、建築基準法、廃棄物処理法の4つの法律のことをさします。これらの法律は、健康被害者の救済とは別に、建物からの石綿除去や無害化を進めるために改正されました。

⑵ その他の石綿関連の歴史について
ア 昭和20年~30年代
 欧米では、戦前において既に局所排気装置の研究及び設置が進んでいましたが、戦前の日本では、研究者らによって局所排気装置の原理等が紹介され、わずかな設置例が存在するにすぎませんでした。しかし、昭和26年、国際労働機関(ILO)によって採択された産業安全に関するモデル規程が労働省労働基準局安全課により翻訳されて出版されました。同規程は、国際労働機関が、世界各国の専門家の意見を集め、6年余りの期間を費やして作成したものであり、局所排気装置の構造等についての詳細な規定を含むものでした。
 このような状況を受けて、労働省は、昭和27年から昭和32年まで毎年局所排気装置を含む粉じん除去対策を労働衛生試験研究の課題とし、併せて昭和30年頃から一般的な形で局所排気装置の設置の行政指導を行いました。そして、労働省は、昭和30年度から労働衛生試験研究として、局所排気装置の設計基準に関する研究を専門家に委託し、同研究の成果は、昭和32年9月、「労働環境の改善とその技術-局所排気装置による-」と題する書籍として発行されました。同資料は、日本における最初の局所排気に関するまとまった技術書であり、局所排気装置全般について、研磨作業、粉砕作業等を行う作業場における実例を図や写真入りで紹介しています。また、同資料の末尾の資料編には、昭和32年資料の発行者である日本保安用品協会が推奨することができる局所排気装置の設計施工者として9社が紹介されています。
 昭和30年9月から昭和32年3月にかけて大規模なけい肺健康診断が、昭和31年から特殊健康診断がそれぞれ実施され、相当数の異常所見者がみられたことから、労働省労働基準局長は、昭和33年5月26日付けで、都道府県労働基準局長宛ての「職業病予防のための労働環境の改善等の促進について」と題する通達を発出しました。
 昭和34年9月、労働衛生試験研究の成果等を踏まえ、けい肺審議会の医学部会により、石綿肺を含む粉じんに対する被害の予防と健康管理の必要性が表明され、上記医学部会の意見に基づくけい肺審議会の答申を受けて、昭和35年、じん肺法が制定されました。

イ 昭和40~50年代
 昭和40年代後半以降になり、石綿によって健康被害を受けた方々の救済がみられるようになりました。昭和48年には、石綿による肺がんの労災認定が初めてなされました。また、昭和52年には、労働省によって、石綿肺、肺がん、中皮腫の労災認定基準が策定されました。

ウ 昭和60年代
 昭和60年代には、石綿の危険性が社会的に問題として取り上げられはじめました。
 昭和60年には、水道用石綿セメント管の生産が中止されました。
 昭和61年には、横須賀で米海軍基地での空母ミッドウェー補修工事で発生したアスベストの不法投棄事件が起こりました。
 その翌年には、学校施設の吹付けアスベストとその除去工事が社会問題化して「学校パニック」と呼ばれる事態を引き起こしました。
 この問題を受けて、環境庁大気保全局大気規制課長は、昭和62年10月26日付けで「建築物の改修・解体に伴うアスベストによる大気汚染の防止について」と題する通達を発出し、また、文部省大臣官房文教施設部指導課長は、昭和62年11月11日付けで「アスベスト(石綿)による大気汚染の未然防止等について」と題する通達を発出しました。
 昭和63年には、環境庁大気保全局大気規制課長・厚生省生活衛生局企画課長は、昭和63年2月1日付けで「建築物内に使用されているアスベストに係る当面の対策について」と題する通達を発出し、アスベストを含有する建材が経年劣化等している場合には、除去、封じ込め等の措置を行うこととされました。
 また、同年には、環境省と厚労省が、空気中の石綿繊維の危険性を指摘しており、日本石綿協会もアスベスト含有が5%以上の建材について「a」マークを自主的に表示しました。

エ 平成以降
 平成7年に起こった阪神淡路大震災において、ビル倒壊現場のアスベスト飛散、放置がクローズアップされ、同年には環境モニタリング調査が実施されました。
 平成11年には、環境省により「建築物解体等に係るアスベスト飛散防止対策マニュアル」が作成されました。
 平成17年には、上記のとおり、クボタ・ショックが起こり、アスベスト問題は再度大きな社会問題として取り上げられることになりました。
そして、平成24年には、中皮腫による死亡者が1400人を超え、同年、石綿の使用が全面的に禁止されるに至りました。

日本における石綿関連年表

関連 出来事
1947
(昭和22)
規制 旧労基法施行
規制 旧安衛則施行
1951
(昭和26)
発表 労働省、ILOによって採択された産業安全に関するモデル規程を翻訳し出版(特に局所排気装置に関するもの)
1952~1957
(昭和27~32)
規制 労働省、毎年局所排気装置を含む粉じん除去対策を労働衛生試験研究の課題とし、併せて昭和30年頃から一般的な形で局所排気装置の設置の行政指導を行う
1957
(昭和32)
発表 労働省、「労働環境の改善とその技術-局所排気装置による-」と題する書籍を発行
1958
(昭和33)
規制 労働省、都道府県労働基準局長宛ての「職業病予防のための労働環境の改善等の促進について」と題する通達を発出
1959
(昭和34)
発表 けい肺審議会の医学会により、石綿肺を含む粉じんに対する被害の予防と健康管理の必要性の表明
1960
(昭和35)
規制 じん肺法規制
1971
(昭和46)
規制 特定化学物質等障害予防規則(旧特化則)の施行(①局所排気装置の設置、②容器等への取扱注意事項等の表示、③作業主任者の選任、④作業環境測定の実施、⑤保護具の備え付け等の規則の義務づけ)
1972
(昭和47)
規制 安衛法施行
1973
(昭和48)
救済 初の石綿による肺がんの労災認定
1975
(昭和50)
規則 特化則の改正(石綿の吹付作業の原則禁止等、建設・解体現場における対策措置)
1977
(昭和52)
救済 労働省、石綿肺、肺がん、中皮腫の労災認定基準策定
1985
(昭和60)
規制 水道用石綿セメント管生産中止
1986
(昭和61)
社会 横須賀で米空母ミッドウェー改修工事、石綿含有廃棄物不法投棄
1987
(昭和62)
規制 各自治体宛て通知「アスベストによる大気汚染の未然防止等について」及び「建築物の改修・解体に伴うアスベストによる大気汚染の防止について」
(建築物においてアスベストの除去等を行う際には、飛沫防止の措置を講じること)
社会 小中学校での石綿吹き付けが判明し問題に
1988
(昭和63)
規制 各自治体宛て通知「建築物内に使用されているアスベストに関わる当面の対策について」
(アスベストを含有する建材が経年劣化等している場合には、除去、封じ込め等の措置を行うこと。)
発表 環境省と労働省、空気中の石綿繊維の危険性指摘
規制 日本石綿協会、アスベスト含有が5%超の建材「a」マークを自主的に表示
1991
(平成3)
規制 廃棄物処理法の改正(平成4年7月4日施行)
(特別管理廃棄物制度を創設し、「廃石綿等」を特別管理産業廃棄物に指定)
1995
(平成7)
規制 労働安全衛生法施行令の改正
(青石綿、茶石綿並びにこれらの含有製品の製造、輸入、譲渡、提供又は使用の禁止)
労働安全衛生規則の改正
(耐火建築物等における保護具、作業衣等の使用、②解体工事における石綿等の使用状況の調査、③吹き付けられた石綿等の除去作業における作業場所の隔離等による規制強化)
調査 阪神淡路大震災に対応した環境モニタリング調査
規制 大気汚染防止法改正(吹き付け材等使用建築物の解体工事を届出制に)
1999
(平成11)
発表 「建築物解体等に係るアスベスト飛散防止対策マニュアル」作成
2000
(平成12)
規制 PRTR制度の実施(石綿の排出・移動量の届出義務化)
2003
(平成15)
規制 労働安全衛生法施行令の改正
(白石綿の含有製品(建材、摩擦材、接着剤)についても製造、輸入、譲渡、提供又は使用の原則禁止(平成16年10月1日施行))
2005
(平成17)
規制 石綿障害予防規則の施行
(今後、石綿製品が使用された建築物の解体等が増加すること等から、建築物の解体作業等における石綿健康障害防止対策の充実を図るため)
被害 クボタ・ショック
2006
(平成18)
救済 石綿被害者救済法成立、石綿関連4法改正
2012
(平成24)
被害 中皮腫による死亡者1400人を超える
規制 石綿使用全面禁止

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