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2023.11.10

アスベスト含有建材(石綿含有窯業系サイディング)について

樋沢 泰治

本稿監修者 樋沢 泰治(ひざわ たいじ)
法律事務所 ASCOPE所属弁護士

アスベスト含有建材(石綿含有窯業系サイディング)について

〈目次〉

1.はじめに

2.石綿含有窯業系サイディングとは(用途、製造時期)

3.石綿含有窯業系サイディングの使用と石綿粉じんばく露との関係性について

4.利用可能性のある救済制度等



1.はじめに

 建設作業等の業務中にアスベストにばく露したことによって、アスベスト関連疾患を発症された方については、労災補償や石綿健康被害救済法による給付、建設型アスベスト給付金の申請、建材メーカーに対する損害賠償請求といった救済方法が考えられます(詳細は後記4のとおりです。)。そして、労災補償や建設型アスベスト給付金の申請においては、労働基準監督署や厚生労働省から業務中にどのような建材を扱っていたかについて確認される場合があり、また、建材メーカーに対する損害賠償請求を検討するうえで石綿粉じんにばく露した可能性のある建材の検討が必要となります。
 そこで、本記事においては、アスベスト含有建材のうち、「石綿含有窯業系サイディング」(通称:窯業系サイディング)と呼ばれる建材について、主に①どのような建材であるのか(用途や種類、製造時期等について)、そして②具体的にどのような職種(作業)において石綿含有窯業系サイディングが使用され、石綿粉じんにばく露する原因となっていた可能性があるかという2点につき、これまでの裁判例の動向も踏まえながら説明します。

2.石綿含有窯業系サイディングとは(用途、製造時期)

 石綿含有窯業系サイディングは、セメント質原料、繊維質原料を主原料とし、混和材を用いて混合原料を成型、養生硬化し、板状に成形した製品で、防火性・耐火性、耐震性、耐久性が高く、壁体内通気がとおり易いなどの特徴があるため、外壁材として用いられていました。なお、石綿含有窯業系サイディングの製造期間は1960年~2004年までとなっています。

3.石綿含有窯業系サイディングの使用と石綿粉じんばく露との関係性について

 石綿含有窯業系サイディングという建材について、電動丸のこや電動サンダーを使用して切断して用いることから、その切断の際に石綿粉じんにばく露する可能性があることが認められています。また、上記のとおり、外壁に用いられることが多いため、大工をはじめとする外壁を扱う職種において石綿粉じんにばく露する可能性があったとされています。
 他方で、石綿含有窯業系サイディングを他の方が扱っていたことによる石綿粉じんにばく露したという間接ばく露については、その可能性は低いとされています。
 裁判例においては、この石綿含有窯業系サイディングによって石綿粉じんにばく露する量はそこまで多くないとされています。もっとも、「当該石綿含有建材のみから発する石綿粉じんによっては石綿関連疾患の発症に至らずとも、他の企業の販売した石綿含有建材と競合して石綿関連疾患を発症させる危険性がある以上、当該石綿含有建材の販売行為に加害行為としての危険性がないとはいえない。」(京都地方裁判所平成28年1月29日判決。控訴審、上告審も同旨。)と判断して、建材メーカーの責任が認められています。
 他方で、同裁判例は、石綿含有窯業系サイディングには、金属系サイディング、木材、漆喰、ALC、タイル、カラー鉄板、プリント鋼板といった代替建材があったため、他の一般的なシェア論(建材の10%のシェアがあれば、ある建設現場において、その建材を扱ったと考えられるという判断手法。)とは異なり、シェアが25%以上ある石綿含有窯業系サイディングにおいて、ある建設現場において石綿含有窯業系サイディングを扱い、石綿粉じんにばく露したと認められるという判断をしました。

4.利用可能性のある救済制度等

 上記2で説明したような石綿含有建材を使用した建設現場において、石綿粉じんにばく露して石綿関連疾患に罹患した方については、①労災制度による補償、②石綿健康被害救済制度(石綿救済法)による給付のほか、③国に対する損害賠償請求、④建設アスベスト給付金制度の利用が考えられます。また、⑤使用者(又は一定の要件を満たす元請企業)に対する損害賠償請求、⑥建材メーカーに対する損害賠償請求の法的手続も考えられます。

【弁護士への相談について】

 石綿含有窯業系サイディングを建設作業等において使用された場面もあったと思われますが、それ以外の建材も使用されていた方もいらっしゃると思います。どのような石綿含有建材を扱った場合に建材メーカーに対する請求が可能かは、判断が難しいと思われます。弊所にて、可能性のある建材等伺いながら請求手続等のお手伝いをさせていただきますので、お心当たりのある方は、ぜひ一度お問い合わせください。
 従事していた作業の詳細について分からない場合であっても、お気軽に弁護士までご相談ください。どのような救済が受けられるのか一緒にご検討させていただきます。

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