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2022.03.03

内装工の石綿ばく露作業について

川島 孝紀

本稿執筆者 川島 孝紀(かわしま たかのり)
法律事務所 ASCOPE所属弁護士

浦和高等学校 卒業
明治大学法学部 卒業
早稲田大学大学院法務研究科 修了

どのような事柄でもまずはお気軽にお話しください。早期にお話しいただくことが解決の鍵となることもございます。
全力を尽くしてまいります。どうぞよろしくお願い申し上げます。

【本判決のポイント】
❶内装工は、石綿含有建材を切断や研磨等した際に、飛散したアスベストにばく露した可能性があります。
❷使用された可能性のあるアスベスト建材についても、切断や研磨して使用することが予定されたものがほとんどであると言われています。

〈目次〉

1 はじめに
2 内装工の作業内容
3 使用された可能性のある建材

1 はじめに

  以下では、いわゆる建設型アスベスト被害において、損害賠償請求が認められる可能性があるとされる職種のうち、「内装工」について、①どのような作業において石綿粉じんに暴露する機会があったとされているか、②どのような石綿含有建材が内装工作業の石綿粉じんに暴露する原因となっていた可能性があるかについて、これまでの裁判例の動向等を踏まえて説明します。

2 内装工の作業内容

 (1) 内装工の作業内容の概要
   内装工は、建物の外壁ができ、サッシが取り付けられて雨風が入らない状態になると、壁、天井、床の順に下地工事を行い、その後同じ順番で仕上げ工事を行います。

 (2) 内装工がアスベストにばく露したと考えられる具体的な作業内容
   ア 壁下地工事
     耐火被覆が施されている場所に間仕切りや躯体内装下地を設置する際や、ケレン棒で吹付材を削り取ったり、耐火被覆板に間仕切りや躯体内壁下地をビス止めして取り付けたりする際にアスベストにばく露する可能性があります。

   イ 天井下地工事
     天井下地を取り付けるためのインサートに付着した吹付材を削り取って除去する際にアスベストにばく露する可能性があります。

   ウ 内壁仕上げ工事
     石膏ボード等をカッター又は電動丸のこ等で切断し、鉄ヤスリで研磨、面取りし、電動ドライバーでビス留めする際にアスベストにばく露する可能性があります。

   エ 天井仕上げ工事
     天井材のボードを切断、研磨、ビス留めする際にアスベストにばく露する可能性があります。

   オ 床仕上げ工事
     石綿含有ビニル床タイルや石綿含有ビニル床シートを床に貼り付ける前に切断する際に石綿粉じんに曝露する可能性があります。

   カ その他
     上記内装工による作業の他、内装工事は、吹付作業の後を追うように行われる上、配管工、設備工、電気工等の作業のすぐ傍で同時並行的に作業を行うこともあるため、これらの作業によって飛散した石綿粉じんにも曝露する可能性があります。

3 使用された可能性のある建材

 (1) 耐火被覆材
   吹付材などと同じように、耐火被覆の目的で鉄骨の柱や梁に張り付けて、素材のまま、又はパネルの表面材、化粧板の基材として使われました。これを取り付ける大工のほか、施工された建材を削る内装工及び電気工が取り扱っていました。

   ア 石綿含有けい酸カルシウム板第2種
     けいそう土等のけい酸質原料及び石灰質原料に水を加えたものにオートクレープ処理を行い生成したけい酸カルシウムに、石綿等の繊維を加え、プレス成形して製造したものです。石綿含有けい酸カルシウム板第1種に比して分厚くて軽いという特徴があるため、内装材ではなく耐火被覆材として鉄骨の梁、柱、天井及び壁に使用されたほか、化粧パネルとしても使用されました。

   イ 石綿含有耐火被覆板
     石綿とセメントなどの配合比を、石綿含有率の高い吹付石綿と同様にして工場で型枠成形したものです。耐火被覆材として、吹付材の代わりに鉄骨の梁、柱及びエレベータ周辺などに化粧目的で使用されました。

 (2) 内装材
   室内を装飾するもので、天井材、壁材、耐火間仕切り材などがあり、外装材として用いられるものもあります。内装材は、これを施工する大工及び内装工のほか、既に取り付けられた内装材を削る作業を行う電気工及び配管工が取り扱っていました。

   ア スレートボード
     セメントと繊維を混合して成形した製品で、不燃材としてビル、住宅、工場及び倉庫などの天井や壁などに使用されます。

    (ア) 石綿含有スレートボード・フレキシブル板
      スレートボードの代表的な製品で、高い強度、靱性及び防火性を有し、外装材としては軒天井への、内装材としては火気を用いる可能性又は高湿度となる可能性のある部屋、すなわち浴室、台所などに使用されることが多かったようです。

    (イ) 石綿含有スレートボード・平板
      スレートボードの普及品であり、軽量かつ防火性を有しますが、加工性は高くありませんでした。素材のまま使用されるほか、塗装下地、パネルの表面材及び化粧板の基材としての用途があり、外装材として軒天井に、内装材として壁及び天井に使用されました。大平板と呼ばれることもありました。

    (ウ) 石綿含有スレートボード・軟質板
      加工性を良くして釘の打ち直し、直打ち及び筋折りなどができるようにした製品ですが、湿度による伸縮性があるため外装材には適さず、専ら浴室及び洗面所を除く内装材として使用されました。

    (エ) 石綿含有スレートボード・軟質フレキシブル板
      化粧加工用に開発された材料で、加工性に優れており、化粧板メーカーが加工して製品化する際の基材として、メーカーに対して卸されたものが多くありました。
      耐水性等を付与した製品は軒天井などの外装材として、その他は内装材として使用され、吸音効果のために穴を開けた製品は、部屋の壁や天井にも使用されました。

   イ 石綿含有スラグ石膏板
     スラグや石膏などの主原料と繊維を混合して成形した、加工性の良い製品であり、表層材の種類によって住宅などの内装、外装及び軒天井など様々に使用されていますが、居室内装工事の仕上げ材として用いられるものが多くありました。

   ウ 石綿含有パルプセメント板
     防火板とも呼ばれ、セメント、パルプ及びパーライトなどの無機質混合材を主原料とし、波状に成形したもので、防火性、遮音性及び吸音性があり、軽量で加工性に優れていました。耐水性が低いため、主に内装材として使用されましたが、外装材に使用される例もあったようです。

   エ 石綿含有押出成形セメント板
     中高層のS造(鉄骨造)建物における外壁及び間仕切り壁などに用いる材料で、セメント、けい酸質原料及び繊維質原料を、中空を有する板状に押し出し成形し、オートクレープ養生したパネルです。

   オ 石綿含有けい酸カルシウム板第1種
     石灰質原料、けいそう土などけい酸質原料及び石綿が主原料で、スレート板に比べて軽く、加工性、断熱性に優れており、一般的な建物の天井、壁、軒天井、耐火間仕切り壁などに使用されました。

   カ 石綿含有ロックウール吸音天井板
     人工繊維であるロックウールを主原料に結合材及び混和剤などを混ぜて成形した製品であり、表面に穴が開いている特徴があるため、吸音性及び断熱性があり、様々な場所に広く使用されました。

   キ 石綿含有石膏ボード
     石膏を芯として、両面及び側面をボード用原紙で被覆し、板状に成形した製品であり、防火・耐火性、断熱性、遮音性及び寸法安定性を有し、天井、壁に大量に使用されました。「ラスボード」、「プラスターボード」、「ジプトーン」などと呼ばれることもありました。

   ク 石綿含有パーライト板
     セメント及びパーライトを混合して成形した製品で、軽量である上に防水性、断熱性及び吸音性があり、天井や壁の下地材として使用されました。

   ケ 石綿含有その他パネル・ボード
     石綿、セメント、けい酸カルシウム、石膏、パーライトなどの他、炭酸カルシウム等様々なものを混合した製品で、素材のまま、あるいは塗装又はセラミック加工を施すなどして、内壁や天井など様々な箇所に使用されました。パネルは、他の種類のボードや鋼板、木材などを貼り合わせて一体化させたもので、主に外壁及び室内の壁に用いられました。

   コ 石綿含有壁紙
     石綿紙にビニルフィルムを合わせたもので、火気を使用する場所並びに避難階段及びエレベーターホールの壁・天井などにも使用されました。

 (3) 床材
   建物の床に用いられる建材であり、主に大工や内装工が取り扱います。床を敷いた後にこれを削ることはないため、大工・内走行以外の他の職種が取り扱うことはありません。

   ア 石綿含有ビニル床タイル
     塩化ビニル樹脂を主原料にした正方形の製品で、職人からは「Pタイル」という名前で呼ばれました。耐水性・耐久性があり、事務室、商業施設及び公共施設の床や、一般住宅であれば台所及び洗面所の床に広く使用されました。

   イ 石綿含有ビニル床シート
     塩化ビニル樹脂を主原料にして、充てん剤などを配合して成形した製品で、巻物状になっているという点を除けば、石綿含有ビニル床タイルと同様の性能と用途を有していました。個々の製品の寿命はさほど長くなく、10年前後でした。

   ウ 石綿含有けい酸カルシウム床材
     原料として、けいそう土等のけい酸質粉末を使用する床材でした。

   エ 石綿含有ソフト巾木
     塩化ビニル樹脂系の原料で成形され、壁と床の境目で壁の下部を保護する目的で壁の最下部に取り付ける横長の板でした。住宅向けには木製のものの使用が多く、石綿含有ソフト巾木の使用はほとんどありませんでした。

【弁護士への相談について】

 内装工がどのような作業・建材が原因となってアスベストにばく露した可能性があるのかがお分かりいただけたかと思います。どのような作業を行っていたかはアスベスト被害救済の各手続を進めるにあたり重要といえますので、特に、ご遺族がアスベスト被害救済についてご検討の際には、患者様が生前どちらでどのような作業をされていたのか一度整理しておかれると良いでしょう。
 また、詳細が分からない場合であっても、お気軽に弁護士までご相談ください。
 どのような救済手続が利用可能か一緒にご検討させていただきます。

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