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2023.01.16

判例紹介 ホテルの機械室やボイラー室で設備係として働き、悪性胸膜中皮腫が原因で亡くなった方の遺族による企業への損害賠償請求が認められた事例(札幌高判平成20年8月29日 判例タイムズ1302号164頁)

中野 博喜

本稿執筆者 中野 博喜(なかの ひろき)
法律事務所 ASCOPE所属弁護士

県立浦和高校 卒業
中央大学法学部 卒業
東京大学法科大学院 修了

私は皆様から信頼が得られるよう、どんなことにも正面から向き合って、全力を尽くします。
小さなことと考えて1人で抱えこむことなく、どんなことでもご相談ください。

判例紹介 ホテルの機械室やボイラー室で設備係として働き、悪性胸膜中皮腫が原因で亡くなった方の遺族による企業への損害賠償請求が認められた事例(札幌高判平成20年8月29日 判例タイムズ1302号164頁)
本判決のポイント

・作業現場の壁に吹き付けられていた石綿の吹付面が劣化していたため、壁に身体や作業服が接触すると石綿が飛散していたことが認定されました。

・作業現場に残存していた石綿の撤去・封じ込め剤を用いた封じ込め処理を行ったことで石綿が飛散するような状況ではなくなったものの、このような処理をするまでの期間における石綿粉じんのばく露については使用者側の安全配慮義務違反であると認定されました。


〈目次〉

第1.事案の概要

第2.本判決の特徴

 1.石綿粉じんばく露作業

 2.石綿粉じんばく露作業と悪性胸膜中皮腫の関係について

 3.Yの安全配慮義務違反について

 4.Yの過失相殺の主張について

第3.まとめ



第1.事案の概要

 札幌高等裁判所平成20年8月29日判決(以下「本判決」といいます。)は、昭和39年4月ころにY社が経営するホテル(以下、「本件ホテル」といいます。)において雇用契約を締結したAが、本件ホテルの機械室、ボイラー室等において、設備係の従業員として業務に従事していたところ、平成13年6月11日に悪性胸膜中皮腫と診断され、翌年4月5日、悪性胸膜中皮腫で亡くなったことから、亡Aの相続人であるXらがY社に対して、安全配慮義務違反を理由として損害賠償請求した事件です。
 本判決は、第2に記載のとおり、Xらの主張を概ね認め、Y社に対して約3200万円の損害賠償責任があることを認めました。

第2.本判決の特徴

1.Aの具体的作業
(1)石綿が飛散した、または、石綿吸入可能性のあった作業について
  Aは本件ホテルの設備系従業員として勤務していたところ、その具体的な作業内容は、機械室等に設置されたボイラーを稼働させる業務及びフランジのガスケット交換作業であり、①機械室、②保温材の撤去作業、③フランジのパッキン交換作業、④配管バルブのハンドル部分内部のパッキン交換作業、⑤ボイラーの機械の外側部分の石綿取扱作業、⑥天井裏の作業のそれぞれについて、石綿が飛散していたか・石綿の吸入可能性が争点となりました。

(2)機械室
  機械室には排気設備が設けられていましたが、他方で、機械室の壁に吹き付けられた石綿の吹き付け面は劣化し、作業者の身体や衣服が壁面に接触し、それにより石綿が剥離して飛散したり、衣服に付着した石綿が飛散したりしていたと認定されました。

(3)保温材の撤去作業
  Aは、蒸気配管、給油配管、冷房配管、給水、排水配管の直管部分、曲管部分の保温材をはがして撤去する作業に従事していたところ、保温材に「けいそうど保温材」が使用されていた事実が認定され、全てではないとしても石綿を含有する保温材の撤去作業に関与した可能性はあると認定しました。

(4)フランジのパッキン交換作業
  配管と配管をつなぐフランジ部分には、金属製のガスケットが挟み込まれており、この部分の密閉性を高めるため、ガスケットにあわせた形のシートパッキンがガスケットのへこんだ部分にはめ込んで使われていたところ、シートパッキンには石綿が使われていたこと(ただし、含有量は不明です。)、フランジ部分から漏れが生じたとき、パッキンを交換して締め直す作業において石綿を吸入した可能性はあるとされました。
 シートパッキンについて、石綿が樹脂等により固形化されていたとしても、石綿を含有する樹脂等を切断したり、穿孔したりすれば、樹脂自体の破壊をもたらすことになり、破壊により、それまで樹脂に固着していた石綿が剥離して、空気中に浮遊することはあると認定しました。


(5)配管バルブのハンドル部分内部のパッキン交換作業
  配管バルブのハンドル部分から漏れが生じたときには、大きいバルブの場合には、グランドパッキンを、小さいバルブの場合にはひも状の資材をほどいて使用していたところ、グランドパッキンやひも状の資材は石綿含有製品であって、これらを切断、石綿を含有する古いパッキンに打撃を加えるといった作業から石綿を吸入した可能性があると認定しました。

(6)ボイラーの機械の外側部分の石綿取扱作業
  ボイラー外側にある点検口のふたの周囲やボイラーバーナーの取り付け部分のふたにリボンパッキンが使用されていたところ、リボンパッキンは石綿含有製品であり、切断、穴をあける、打撃を加えるといった作業から石綿を吸入した可能性があると認定しました。

(7)天井裏の作業
  本件ホテル10階天井裏の壁面には石綿が吹き付けられていたことが認められ、壁面に身体や作業着が接触して石綿が剥離して飛散する場合や、作業着に付着した石綿が飛散することがあると認定しました。

2.Aの具体的作業と悪性胸膜中皮腫の関係について
 Aは、悪性胸膜中皮腫と診断されたところ、悪性胸膜中皮腫は、中皮腫の一種であり、中皮腫はそのほとんどが石綿に起因するという医学的知見をもとに、Aの死因が悪性胸膜中皮腫であることから、Aが石綿を吸入したことを推定し、本件ホテルでの作業期間(昭和39年4月以降に本件ホテルに勤務)と悪性胸膜中皮腫が平成13年4月には発病していたことから、本件ホテルにおける石綿吸入と悪性胸膜中皮腫の発症は、中皮腫の潜伏期間(本判決では15~50年と認定)と一致すると認定しました。
 これに対して、Yは、Aが本件ホテルに勤める前に勤務していた会社での石綿吸入の可能性があると主張しましたが、仮に本件ホテル採用前に石綿を吸入するような業務に従事していたとしても、本件ホテルでの石綿吸入が、Aの悪性胸膜中皮腫の原因でないということはできないとして、Aの悪性胸膜中皮腫の原因は本件ホテルでの上記作業による石綿吸入には因果関係があると判断しました。

3.Yの安全配慮義務違反について
 平成元年10月頃、Yは本件ホテルの改修工事を行い、機械室等の壁面・柱面の石綿を撤去、配電盤等の裏の石綿や10階の天井裏の壁面の石綿については封じ込め剤を注入して固める封じ込め処理を行い、平成14年ころ、機械室等に残存した封じ込め処理済みの石綿を撤去しました。Xらは、改修工事は不十分であって、それ以降も石綿が飛散していたと主張しましたが、裁判所はその様な認定をしませんでした。
 しかし、このような対応は、改修工事を行う以前からAが上記の作業に従事して石綿吸入していたこととの関係で、Yの安全配慮義務違反を否定するものではないと判断しました。

4.Yの過失相殺の主張について
Y社は、亡Aが昭和56年から施設管理部門における最高責任者の地位にあったから、石綿の存在や従業員に対する安全配慮に対する上申義務を怠った重大な過失があり、過失相殺をすべきであると主張しました。
 この主張に対して、裁判所は、亡Aが施設管理の施設係「マネージャー」であったことは、Xらも認めるものであるが、Yは、会社における亡Aの職務及び権限を定めた就業規則等の規定を主張立証しておらず、そのため、「施設管理」は、ボイラーの運転等による暖房・給湯施設の管理の意味にしか解されず、亡Aの職務の中に、労働者の労働災害の防止や安全・衛生の確保が含まれていたと認めるに足りる証拠はないとしました。
 そして、裁判所は、「安全配慮義務は、使用者と被用者との間の雇用契約に基づき、使用者が信義則上負うと考えられる義務である。したがって、使用者に安全配慮義務違反があったときに、被用者に過失相殺されるべき過失があるのは、被用者が雇用契約上労働災害等を防止すべき義務を負っていて、これを怠った場合に限られる。」とし、本件においては、「特化則(注記:昭和46年4月28日に公布された特定化学物質等障害予防規則)37条には、昭和46年の制定当初から「特定化学物質等作業主任者」の定めがあるから、例えば、亡AがYの業務命令により、特定化学物質等作業主任者として必要な講習を受けることを命ぜられ、Y内部において特定化学物質等主任者として稼働する職務を負っていたのに、これを怠った場合には、過失相殺も認められ得る。しかし、Yにおいて、従業員のうち一定の者に特定化学物質等作業主任者講習を受けさせるなどの方法により、労働安全衛生に関する知識を有し、労働安全衛生を確保する職務を行う者を養成したと認めるに足りる証拠はない。この職務を行う人員を配置することは、使用者が負う安全配慮義務の一環をなすものであるから、これを置かなかったこと自体が亡Aに対する安全配慮義務違反を構成するのであり、過失相殺が認められないのは明らかである。」として、Yの過失相殺の主張を認めませんでした。

第3.まとめ

 本判決は、石綿が飛散していた、または、石綿を吸入したと考えられる具体的な作業が多く、それらの作業ごとに石綿が飛散していた可能性や、石綿を吸入した可能性がどの程度あったか、具体的な作業態様に即して認定しています。一般的には具体的な建材とその使用態様から石綿飛散の可能性や石綿吸入の可能性を検討しますが、壁と身体や衣服の接触によっても石綿を吸入する可能性があったと認定されている点は特徴的と言えます。
 他方で、作業場所の改修工事などにより石綿粉じんのばく露可能性が大きく異なる場合があり、それは発症した症状との因果関係との関係でも、事業者としての安全配慮義務の履行としても大きな意味を持つ場合がありますが、本判決では、それまでの石綿が飛散していた期間や石綿吸入していた期間が長かったことから、結論は左右されませんでした。
 さらに、悪性胸膜中皮腫の潜伏期間の長さから、本件では、他社での就業においても石綿を吸入する可能性があることは認められつつも、そのことによって、本件ホテルでの作業について、悪性胸膜中皮腫との因果関係が無いとはいえないと判断されています。
 また、石綿(アスベスト)による被害は、工場での製造現場、建設現場等が典型ですが、本件のように工場や建設現場以外においても企業の責任が認められる場合があります。

【弁護士への相談につ】

 本判決は、石綿の飛散状況や、石綿を吸入する可能性がある作業について具体的な作業内容、その頻度、周囲の状況などを個別の作業ごとに認定しています。
 ご相談される際は、具体的な作業内容(場所、材料、工具、加工態様、周囲の作業員の状況など)をご記憶されている場合は、その内容をお伝えいただけますと、ご相談がスムーズに進められるかと思われます。本判決のように、具体的作業そのものによる石綿吸入だけでなく、作業環境によっては、思いがけないところで、石綿吸入をしていた可能性もあり得ます。
 また、詳細な作業内容が分からないという場合であっても、お気軽にご相談ください。石綿を吸入する可能性は様々な場面が考えられますので、一緒に検討させていただきます。

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