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2022.07.21

電気保安工の石綿ばく露作業について

小林 一樹

本稿執筆者 小林 一樹(こばやし かずき)
法律事務所 ASCOPE所属弁護士

新宿高等学校 卒業
青山学院大学法学部 卒業
青山学院大学法科大学院 修了

私が法律家として常に心がけていることは、人の気持ちを大切にするということです。問題を根本的に解決するために、法律のみならず、紛争でお困りの方の抱える思いについてもフォローできるよう日々精進して参ります。

電気保安工の石綿ばく露作業について

〈目次〉

1.はじめに

2.電気保安工に関する一般的な作業内容と石綿ばく露との関係について

3.石綿粉じんにばく露する電気保安工作業と石綿関連疾患の原因とされる石綿含有建材について

4.利用可能性のある救済制度等



1.はじめに

 以下では、いわゆる建設型アスベスト訴訟において、損害賠償請求が認められる可能性があるとされる職種のうち、「電気保安工」について、➀どのような電気保安工作業において石綿粉じんにばく露する機会があったとされているか、➁どのような石綿含有建材が電気保安工作業の石綿粉じんにばく露する原因となっていた可能性があるかについて、これまでの裁判例の動向を踏まえて説明します。

2.電気保安工に関する一般的な作業内容と石綿ばく露との関係について

 一般に、電気保安工は、分電盤室内で点検作業を行う場合、壁等に被覆されている石綿含有吹付け材に身体を接触して舞い上がった石綿粉じんに曝露することがあるとされています。また、建築工事中に電気設備の点検を行う場合、他の建設作業従事者の作業により発生した石綿粉じんに曝露することがあるとされています。
 このように、電気保安工の基本的な石綿ばく露の形態は、建設現場における他の職種と異なり、直接石綿含有建材を取り扱うことによって石綿にばく露する機会よりも、他の職種の作業により生じた石綿粉じんに間接的にばく露することが多かったと考えられます。
 裁判例(東京高判平成30年3月14日民集75巻6号2347頁)において、電気保安工に関し、「自ら石綿含有建材を切断・加工することがないため、自ら行った石綿曝露作業によって直接石綿粉じんに曝露することはないものと認められる。」としたものの、「しかし、(中略)他の職種の建設作業従事者の作業により発生した石綿粉じんに曝露する間接曝露の危険性が認められ、(中略)被告国は、昭和48年には、建設屋内での石綿切断等作業(石綿吹付け作業を除く。)による直接又は間接の石綿粉じんの曝露によって、建設作業従事者が石綿関連疾患に罹患する危険性を予見することが可能であったというべきであるから」、「被告国は、前記職種の者が間接曝露を中心とする被災者であるということによって、本件責任期間内における国賠法1条1項の責任を免れることはできない」として国の責任が肯定されています。
 また、電気保安工の職種は、建設型アスベスト給付金制度の対象となる職種の一例としても挙げられています。
 なお、上記裁判例で確認できる範囲では、電気保安工の方に関する具体的な石綿含有建材及びその建材メーカーとの責任を明示的に判断した部分が見当たらず、電気保安工の建材メーカーに対する関係では裁判所の具体的な判断内容は明らかになっていません。

3.石綿粉じんにばく露する電気保安工作業と石綿関連疾患の原因とされる石綿含有建材について

 電気保安工作業における主な石綿ばく露の形態は、同じ現場内での他の建設作業従事者により発生した石綿粉塵に間接的にばく露することであると考えられるため、同じ現場でどの職種の方が作業していたかによって石綿ばく露の原因となる石綿含有建材も異なると考えられ、石綿にばく露する機会も様々であったと考えられます。
 そのため、一般論として電気保安工の方がばく露した可能性の高い石綿含有建材を特定して示すことは困難であり、同じ現場で作業していた他の建設作業従事者の職種等に応じて、個別的に判断するほかないと思われます。

4.利用可能性のある救済制度等

 電気保安工の職務に従事していた方につきましては、建設現場における他の職種の方と同様に、①労災制度による補償、②石綿健康被害救済制度(石綿救済法)による給付、③国に対する損害賠償請求訴訟、④建設アスベスト給付金制度、⑤使用者(又は一定の要件を満たす元請企業)に対する損害賠償請求訴訟、⑥建材メーカーに対する損害賠償請求訴訟など救済手続の利用や訴訟手続をすることができる可能性があります。

【弁護士への相談について】

 以上が、建設型アスベスト訴訟において損害賠償請求が認められる可能性があるとされる「電気保安工」に関する説明となります。
建設型アスベスト健康被害におけるアスベスト関連疾患の被災者の方に対する損害賠償責任については、国・使用者・建材メーカーが負うものとされており、使用者及び建材メーカーが被災者の方に負っている責任は少なくありません。
 現在、国の被災者に対する損害賠償については、給付金制度の法案が成立し、訴訟以外の方法により補償を受けることができますが、使用者・建材メーカーの被災者に対する損害賠償については、現時点ではそのような制度はなく、個別に訴訟等の手続をする必要があります。もっとも、建材メーカーに対する損害請求については、類型的に原因となった石綿含有建材を推定することが困難であるため、どのような建材でばく露したかについて当時の資料等から個別的に立証する必要があると考えられます。
 そのため、もし「電気保安工」として屋内作業に従事し、アスベスト関連疾患に罹患するなどしてお困りの場合には、ぜひ一度弁護士に相談してみることをお勧めいたします。

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