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2023.07.13

アスベスト含有建材(保温材)について

坂根 健

本稿執筆者 坂根 健(さかね けん)
法律事務所 ASCOPE所属弁護士

静岡県立浜松北高等学校 卒業
中央大学法学部法律学科 卒業
東京大学法科大学院 修了

皆様が抱えている悩みに真摯に向き合い、適切かつ丁寧に問題を解決することで、皆様がより良い生活を送る手助けをしたいと考えています。
どんなことでも一人で悩まず、まずはご相談下さい。
どうぞよろしくお願いいたします。

アスベスト含有建材(保温材)について

〈目次〉

第1.はじめに

第2.保温材とは(用途、種類、使用時期など)

第3.保温材の使用と石綿粉じんばく露との関係性について

 1.保温材を使用し、石綿粉じんにばく露する可能性がある職種(作業)について

 2.裁判例において認定された建材メーカーの例

第4.利用可能性のある救済制度等



第1.はじめに

 建設作業等の業務中にアスベストにばく露したことによって、アスベスト関連疾患を発症された方については、労災補償や建設型アスベスト給付金の申請、建材メーカーに対する損害賠償請求といった救済方法が考えられます(詳細は後記4のとおりです。)。そして、労災補償や建設型アスベスト給付金の申請においては、労働基準監督署や厚生労働省から業務中にどのような建材を扱っていたかについて確認される場合があり、また、建材メーカーに対する損害賠償請求の可能性を検討する上では、業務中が取り扱っていた石綿含有建材の使用時期を確認する必要があります。
 そこで、本記事においては、アスベスト関連疾患について各種救済方法をご検討されている方に向けて、アスベストが含有されていたとされる建材のうち、「保温材」と呼ばれる建材について、主に①どのような建材であるのか(用途や種類、使用時期等について)、そして②具体的にどのような職種(作業)において保温材が使用され、石綿粉じんにばく露する原因となっていた可能性があるかという2点につき、これまでの裁判例の動向も踏まえながら説明いたします。

第2.保温材とは(用途、種類、使用時期など)

 保温材とはその名のとおり、保温のための建材であり、配管の保温のほか、化学プラント、ボイラーの本体などに使用されてきました。
 裁判例(※1) 上、アスベストを含有する保温材として言及のある建材は以下のとおりです。なお、いずれの建材についても石綿含有建材の使用時期は1980年(昭和55年)以前とされています。もっとも、同時期以降の作業においても、保温材の補修等を行った場合に、保温材から飛散した石綿粉じんにばく露する可能性があると考えられます。

(※1)京都地裁平成28年1月29日判決(判例タイムズ1428号101頁・判例時報2305号22頁)

1.石綿含有けいそう土保温材
 けいそう土の乾燥粉末を主な原料として、これに石綿を加えて調合した粉末状製品を、現場で水練りして使用する保温材です。成形型の保温材の目地部分や複雑な施工面の保温などに使用されます。

2.石綿含有けい酸カルシウム保温材
 けいそう土等のけい酸質粉末と石灰を主原料とし、そこに石綿繊維を加え、オートクレープ処理(高温・高圧の水蒸気で処理すること)により板状や筒状に成形して製造されたものであり、保温材の中では最も使用量が多かったと考えられています。

3.石綿含有バーミキュライト保温材
 バーミキュライト(※2)を主な原料として、石綿繊維等を加えて水練り又はプレス成形によって板状又は筒状にしたものです。

4.石綿含有パーライト保温材
 パーライト(※3)を主原料として、そこに石綿繊維などを加えて混合したものです。

5.石綿保温材
 保温材のうち石綿を主原料とし、そこに結合剤を加えたもので、板状、筒状、紐状、布団状などの製品があります。クリソタイルを使用した石綿保温材とアモサイトを使用した石綿保温材もありますが、アモサイトを使用した製品が圧倒的に多く製造されたと考えられます。

(※2)層状の含水ケイ酸塩鉱物の一種で、雲母(うんも)が熱水の作用や風化によって変質したもの。バーミキュライトは重量が砂の約7分の1と軽く、耐熱性や耐火性にも優れていることから、公共的な建物の天井仕上げ材や軽量ブロックの原料に使用されています。 (※3)ガラス質の火成岩を高温で加熱して人工的に作った土壌改良資材です。高い断熱性や吸水性・吸油性を持つことから、建築資材や塗料、工業用洗剤などに幅広く使われています。

第3.保温材の使用と石綿粉じんばく露との関係性について

1.保温材を使用し、石綿粉じんにばく露する可能性がある職種(作業)について
 保温材を使用した除去作業や囲い込み作業は、発じん性の高い作業とされ、石綿使用箇所へのマーキングや粉じん防止設備の設置等が求められています(※4)。そして、保温材は施工時に周囲との摩擦や加工されることによって、石綿粉じんが発生することが想定されるから、保温材を使用して石綿粉じんにばく露する可能性がある職種としては、保温材の施工作業に従事する職種である保温工のほか、配管工が考えられます。
 保温工が行う作業は、建設工事における様々な工程に関与するため、いつどのような作業をしている際に石綿粉じんにばく露した可能性があるかについても多種多様です。
 裁判例(※5)上、保温工は配管されたパイプに石綿を含有する保温材を被せて被覆する保温工事に従事し、保温材を切断する際に石綿粉じんにばく露する可能性があるとされています。また、保温工事の中で、吹付け工事が行われた後の天井裏や機械室で作業を行う際、石綿含有吹付け材が剥がれ落ち、飛散する石綿粉じんにばく露する可能性も想定されます。

(※4)国土交通省「目で見るアスベスト建材(第2版)」 (※5)東京高裁平成30年3月14日判決・民集75巻6号2347頁

2.裁判例において認定された建材メーカーの例
 保温材を用いた建設作業中にアスベスト被害を受けた被災者らについて、建材メーカーの責任が肯定された裁判例を紹介いたします。(保温材として認められる建材や保温材を扱う作業内容、そしてメーカーが以下に限られるというものではないという点にはご注意ください)。

 ア 福岡高裁令和元年11月11日判決
   建築現場で使用された石綿含有建材から発生した石綿粉じんにばく露して石綿関連疾患にり患した被災者に対する建材メーカーの責任が認められ、損害賠償請求が一部認容された事案です。同判決では、保温材に関する作業実態及びばく露実態について、「施工時に周囲との摩擦や加工されることによって、石綿含有粉じんが発生することとなるため保温材施工作業に従事する職種である配管工、保温工は、その施工時に石綿含有粉じんに曝露するという影響を受ける。」と示した上で、疾患の原因となった建材メーカーの特定に関してはいわゆるシェア論、すなわち、作業期間中に具体的にどの建材を使用していたかまで特定することは困難であるため、建設業務に従事した方について、職種ごとに一般的な作業を認定し、その作業において使用される石綿含有建材を特定し、その石綿含有建材について、相当程度の市場シェアを有する建材メーカーの建材であれば、建設業務に従事した複数の現場のうち、どこかの建設現場では当該メーカーの建材を使用したと認めることができるとする考え方を前提に、責任を負う基準となるシェアについて、「概ね10%以上を目安とすることが相当」とした上で、各種保温材の建材メーカー(シェア)について以下のように示しました。

① 石綿含有けい酸カルシウム保温材(前記2⑵)について
 昭和50年から昭和52年までのマーケットシェアは、N社が30%であった。
② 石綿保温材(前記2⑸)について
 その製造、販売企業は、N社及びA社に限られていた。


 イ 大阪高裁平成30年9月20日判決
   含有建材を製造・販売する建材メーカーに警告表示義務を負うとされた事案です。同判決においては、まず、築炉工の作業に従事した被災者1名の作業内容及び石綿粉じんばく露状況(昭和50年10月から昭和63年)について、「築炉工として、主に焼却炉の修復・解体作業に従事したが、一部には炉の新築工事もあったこと、新築工事においては、外壁と耐火煉瓦の間に板状の保温材を敷き詰める作業を行う際、保温材の切断により発生する石綿粉じんに曝露したこと、修繕・解体においては、古くなった保温材からの石綿粉じんに曝露し、改修においては、新しい保温材を接着する作業があったことが認められる」と示しました。
 そして、建材メーカーの責任について、マーケットシェア10%を有する建材メーカーが責任を負うという基準を示した上で、保温材(石綿含有けい酸カルシウム保温材)については、昭和50年ないし昭和53年において、N社、M社、O社、及びK社の4社に関してシェアが10%を超えていることから、同四社が責任を負う旨判示しました。


第4.利用可能性のある救済制度等

 上記2で説明したような石綿含有建材を使用した建設現場において、保温材を使用して保温工の職務に従事し、石綿関連疾患を発症してしまった方については、①労災制度による補償、②石綿健康被害救済制度(石綿救済法)による給付のほか、③国に対する損害賠償請求、④建設アスベスト給付金制度の利用が考えられます。また、⑤使用者(又は一定の要件を満たす元請企業)に対する損害賠償請求、⑥建材メーカーに対する損害賠償請求の法的手続も考えられます。
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