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2024.02.01

労災・救済法の不服申立制度について

里見 麻祐

本稿執筆者 里見 麻祐(さとみ まゆ)
法律事務所 ASCOPE所属弁護士

私立青雲高校 卒業
東京大学法学部 卒業
早稲田大学法科大学院 修了

はじめまして。弁護士の里見麻祐です。
私は、社会生活を送る中で、自分ではどうすることもできない、さまざまな事情を抱えている方々を、法的な面でサポートする専門家になりたいと思い、弁護士を志しました。
皆様のお話を真摯に受け止め、お気持ちに寄り添い、解決に向け全力を尽くしてまいります。
些細なことでも構いませんので、お気軽にご相談ください。
どうぞよろしくお願いします。

労災・救済法の不服申立制度について

〈目次〉

第1.はじめに

第2.不服申立制度の概要

第3.各不服申立手続の流れ

第4.まとめ



第1.はじめに

 アスベスト被害を受けた方々が申請できる労災・救済法の給付制度について、労災保険給付に関する処分や救済法による支給にかかる処分に不服がある場合は、不服申立てをすることができます。本記事では、その不服申立制度についてご説明いたします。
 なお、本記事においては、各法律を次のとおり省略いたします。
・労働者災害補償保険法→「労災法」
・労働保険審査官及び労働保険審査会法→「労審法」
・行政事件訴訟法→「行訴法」
・石綿による健康被害の救済に関する法律→「救済法」
・行政不服審査法→「行審法」

第2.不服申立制度の概要

1.労災の場合
  労災における不服申立制度は以下のとおりです。
 ①審査請求 ②再審査請求 ③取消訴訟

  不服申立前置主義(労災法 40条)により、①→(②→)③のステップを踏まなければなりません。
 また、各制度の申立先、請求期間等をまとめると、次の表のようになります。


①審査請求 ②再審査請求 ③取消訴訟
申立先 処分をした労働基準監督署の所在地を管轄する労働局に置かれている労働者災害補償保険審査官(労災法38条1項) 労働保険審査会(労災法38条1項) 処分をした労働基準監督署の所在地又は左記審査会の所在地を管轄する地方裁判所(行訴法12条1項)
請求期間
又は
出訴期間
処分があったことを知った日の翌日から3か月以内(労審法8条1項) 審査請求に対する決定書の謄本が送付された日の翌日から2か月以内(労審法38条1項)
又は
審査請求の日から3か月経過後(裁決がない場合)(労災法38条2項)
処分(処分又は審査請求に対する決定又は再審査請求に対する裁決)があったことを知った日の翌日から6か月以内(処分又は裁決があったことを知らなかった場合は、その処分又は裁決があった日の翌日から起算して1年以内)(行訴法14条)
又は
審査請求の日から3か月経過後(裁決がない場合)(行訴法8条2項1号)

2.救済法の場合
  救済法における不服申立制度は以下のとおりです(なお、救済法には、再審査請求をすることができる旨の定めはありません。)。
 ①審査請求 ②取消訴訟

  不服申立前置主義(救済法77条)により、①→②のステップを踏まなければなりません。
 また、各制度の申立先、請求期間等をまとめると、次の表のようになります。


①審査請求 ②取消訴訟
申立先 公害健康被害補償不服審査会(救済法75条1項1号) 処分をした機構の所在地又は左記審査会の所在地を管轄する地方裁判所(行訴法12条1項)
請求期間
又は
出訴期間
処分があったことを知った日の翌日から3か月以内(処分があったことを知らなかった場合は、その処分があった日の翌日から起算して1年以内)(行審法18条1項、2項) 処分(処分又は審査請求に対する裁決又は再審査請求に対する裁決)があったことを知った日の翌日から6か月以内(処分又は裁決があったことを知らなかった場合は、その処分又は裁決があった日の翌日から起算して1年以内)(行訴法14条)
又は
審査請求の日から3か月経過後(裁決がない場合)(行訴法8条2項1号)

  ※特別拠出金の徴収に係る処分に不服がある場合の審査請求の申立先は、環境大臣となります(救済法75条1項2号)。

第3.各不服申立手続の流れ

1.労災の場合
 (1)審査請求
   審査請求は、被災労働者又は遺族等が、処分を知った日の翌日から3か月以内に、処分をした労働基準監督署の所在地を管轄する労働局に置かれている労働者災害補償保険審査官に対して、文書又は口頭で行います(労審法9条)。文書で行う場合、審査請求書は、労働基準監督署や都道府県労働局労災補償課にある用紙を用いるか、厚生労働省の労災保険審査請求制度のホームページからダウンロードしたものを用いることができます(※)。代理人に委任して行うこともできます(労審法9条の2第1項)。
 また、審査請求時又は審査請求後の相当期間内に、労災認定のための証拠となる文書等を提出することができます(労審法14条の3第1項、3項)。
 審理においては、審査官から、必要な限度で審査請求人等の出頭を求められ、審問等を受けることもあります(労審法15条1項)。
 審査請求の審理期間はケースバイケースです。もっとも、審査請求をしてから3か月が経過しても決定がなされない場合、審査請求は棄却されたとみなすことができ(労災法38条2項)、再審査請求を行うことができますので、3か月が一つの目安となります。
 審査官は、審理を終えたときは、文書にて、審査請求に係る原処分の全部若しくは一部を取り消す決定又は審査請求の全部又は一部を棄却する決定を行います(労審法18条、19条1項)。当該決定は、決定書の謄本が審査請求人に送達されたときにその効力を生じます(労審法20条1項)。

※労災保険審査請求制度(厚生労働省HP)

 (2)再審査請求
   審査請求に不服がある場合は、被災労働者又は遺族等が、審査請求に対する決定書の謄本が送付された日の翌日から2か月以内に、労働保険審査会に対して、再審査請求を行うことができます。なお、審査請求後、再審査請求を行わずに原処分の取り消し訴訟を提起することも可能です。
 審査請求と異なる点として、再審査請求は文書で行う必要があります(労審法39条)。また、原則として公開審理が行われ(労審法43条)、当事者及びその代理人は、審理期日に出頭して意見を述べることができます(労審法45条)。なお、審査会による合議は非公開です(労審法48条)。
 審査会は、審理を終えたときは、再審査請求に係る原処分の全部若しくは一部を取り消す裁決又は再審査請求の全部又は一部を棄却する裁決をしなければなりません。当該決定は、裁決書の謄本が審査請求人に送達されたときにその効力を生じます(労審法50条)。


 (3)取消訴訟
   審査官の決定又は審査会の裁決に不服がある場合は、被災労働者又は遺族等が原告となり、国を被告として、処分等があったことを知った日の翌日から6か月以内に、原処分の取消訴訟を提起することができます。
 審査請求、再審査請求とは異なり、訴訟であるため訴訟費用が生じます。また、裁判である以上、審査官自らが職権で審査請求人等へ尋問等を行う審査請求とは異なり、公益性の高い事項以外は、当事者が証拠資料収集の責任を負います。
 審理が終結し、結審した後は、裁判所が原処分又は裁決の取消について判決を下します。処分又は裁決を取り消す判決は、第三者に対しても効力を有します(行訴法32条1項)。


2.救済法の場合
 (1)審査請求
   審査請求は、被災労働者又は遺族等が、処分を知った日の翌日から3か月以内に、公害健康被害補償不服審査会に対して、書面で行います(行審法19条1項)。書面には、審査請求人の氏名及び住所、処分の内容、処分があったことを知った年月日、審査請求の趣旨及び理由、処分庁の教示の有無及びその内容、審査請求の年月日を記載する必要があります(同条2項)。代理人に委任して行うこともできます(行審法12条1項)。
 審理においては、処分を行った独立行政法人環境再生保全機構から弁明書が提出されるため(行審法29条2項)、審査請求人は、当該弁明書に対する反論書を提出することができます(行審法30条1項)。また、審査請求人等の申立てにより、口頭意見陳述の機会が与えられます(行審法31条1項)。
 さらに、審査請求人等は、審査請求時又は審査請求後の相当期間内に、労災認定のための証拠となる文書等を提出することができます(行審法32条1項、3項)。
 救済法における審査請求の審理期間もケースバイケースですが、労災の場合と同様、3か月が一つの目安となります。
 審理員は、審理手続を終結したときは、遅滞なく心理員意見書を作成し(行審法42条1項)、審査庁はその提出をもって、決裁書により、審査請求に係る原処分の全部若しくは一部を取り消し若しくは変更する裁決、又は、審査請求を却下若しくは棄却する裁決を行います(行審法45条、46条)。当該裁決は、裁決書の謄本が審査請求人に送達されたときにその効力を生じます(行審法51条1項、2項)。


 (2)取消訴訟
  (1)の裁決に不服がある場合は、石綿健康被害者又は遺族等が原告となり、原処分の取消訴訟を提起することができます。 その他の概要は、概ね労災の取消訴訟と同様です。

第4.まとめ

 労災・救済法の不服申立制度について、根拠条文とともに概要をご説明いたしました。
 労災不認定、救済給付の不支給決定がなされた場合でも、請求期間に注意して、上記のような不服申立制度を有効に活用していくことが重要です。

【弁護士への相談について】

 労災、救済法における不服申立は、事実関係の正確な伝達及び主張の明確化のために、できる限り書面にて行うことが望ましいと考えられます。
 この点、労災、救済法における不服申立の認容率は決して高いものではなく、認容されるためには、専門性を伴う有効な審査請求書や反論書等を作成することが重要です。
 さらに、各不服申立には期限があるため、不認定等の処分がなされた場合には、早めに不服申立に向けて動く必要があります。
 このように、不服申立てを自力で実効的に行うのには困難が伴いますが、アスベスト被害に対する救済に詳しい弁護士であれば、書面作成から行政庁への対応に至るまで、不服申立の全てを円滑にサポートすることができます。
 労災不認定、救済給付の不支給決定がなされた場合でも、諦めることなく、お早めに弁護士にご相談ください。

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