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2022.03.22

空調設備工の石綿ばく露作業について

本多 翔吾

本稿執筆者 本多 翔吾(ほんだ しょうご)
法律事務所 ASCOPE所属弁護士

駒澤大学高等学校 卒業
駒澤大学法学部 卒業
明治大学法科大学院 修了

ご相談においては、中長期的な観点から様々な手段を視野に入れて、ご相談者にとってベストな選択をご提案できるよう尽力いたします。

〈目次〉

1 はじめに
2 空調設備工に関する一般的な作業内容と石綿ばく露との関係
3 石綿粉じんにばく露した可能性のある空調設備作業とその作業で使用された可能性のある石綿含有建材について
 (1) 空調設備作業において石綿粉じんにばく露する可能性があるとされる石綿含有建材の例
 (2) 裁判例において不法行為責任が肯定された建材メーカー
4 利用可能性のある救済制度等


1 はじめに

  以下では、いわゆる建設型アスベスト被害において、損害賠償請求が認められる可能性があるとされる職種のうち、「空調設備工」について、①どのような空調設備作業において石綿粉じんにばく露する機会があったとされているか、②どのような石綿含有建材が空調設備作業の石綿粉じんにばく露する原因となっていた可能性があるかについて、これまでの裁判例の動向を踏まえてご説明いたします。


2 空調設備工に関する一般的な作業内容と石綿ばく露との関係

  一般に、空調設備工は、「鉄骨造建物及び鉄筋コンクリート造建物の新築・改修工事において、冷暖房設備工事又は換気設備工事の際、天井や鉄骨等に吹き付けられた耐火被覆用の吹付け材を剥がす作業を行うことによって、石綿粉じんを吸い込む」(東京高判令和2年8月28日判時2468・2469合併号15頁、東京高判平成30年3月14日など)具体的には、「新築工事での冷暖房設備工事においては、室内機の設置作業、配管・配線作業のため、天井に吹き付けられた吹付け材をハンマードリルで貫通させて天井スラブに穴をあけ、アンカーを打ち込む際、吹付け材に曝露する。そして、室内機の設置作業、配管・配線作業のため、H鋼(※筆者注:鉄骨を指します。以下、同じ。)に支持金具を取り付ける作業の際、H鋼に吹き付けられた吹付け材を剝がすが、このとき、吹付け材に曝露する。改修工事での冷暖房工事においても、上記と同様に、アンカーを打ったり、支持金具を取り付けたりする」(東京高判平成30年3月14日)ことによって、石綿にばく露するとされています。


3 石綿粉じんにばく露した可能性のある空調設備作業とその作業で使用された可能性のある石綿含有建材について

 (1) 空調設備作業において石綿粉じんにばく露する可能性があるとされる石綿含有建材の例    東京高判令和2年8月28日において、石綿にばく露する可能性のある「耐火被覆用の吹付材を剝がす作業」における、「耐火被覆用の吹付材」とは、東京高裁令和2年8月28日判決では、以下の2種の建材が認定されました。

  ・石綿含有吹付けロックウール
  ・湿式石綿含有吹付け材

 (2) 裁判例において不法行為責任が肯定された建材メーカー    前掲東京高判令和2年8月28日においては、上記2種の建材について、ニチアス及びエーアンドエーマテリアルの不法行為責任が肯定されました。


4 利用可能性のある救済制度等

  上記2で説明したような石綿含有建材を使用した建物内において、空調設備工の職務に従事していた方につきましては、①労災制度による補償、②石綿健康被害救済制度(石綿救済法)による給付、③国に対する損害賠償請求訴訟、④建設アスベスト給付金制度、⑤使用者(又は一定の要件を満たす元請企業)に対する損害賠償請求訴訟、⑥建材メーカーに対する損害賠償請求訴訟など救済手続の利用や訴訟手続をすることができる可能性があります。

【弁護士への相談】

 利用可能性のある救済制度は、裁判を利用しない方法と裁判を利用する方法とに大別できますが、どの方法を利用できるのかまたはすべきなのか、どのように進めていくのが良いのか等について、専門家のアドバイスを受けることが有益です。過去に建設現場で空調設備工の職務に従事し、石綿関連疾患の診断を受けた方は、ぜひ一度お問合せください。

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