まずはお気軽にお電話でお問い合わせ!

0120-003-897

<平日9~19時 土日10~18時>

アスベスト情報

トップ > アスベスト情報 > 自動車製造におけるアスベスト被害について

2024.10.28

自動車製造におけるアスベスト被害について

中本 賢

本稿執筆者 中本 賢(なかもと けん)
法律事務所 ASCOPE所属弁護士

洛南高等学校 卒業
神戸大学法学部法律学科 卒業
東京大学法科大学院 修了

法律問題の解決のためには、早期にご相談いただくことが大切です。ご不安やご要望に沿った解決法を一緒に探していきましょう。
よろしくお願いいたします。

自動車製造におけるアスベスト被害について

〈目次〉

1.はじめに

2.自動車製造工場におけるアスベストのばく露について

3.利用可能な救済制度について

4.実際の裁判例



1.はじめに

 自動車製造工場において自動車製造に従事していた方や、自動車整備士として車両の修理・整備を行っていた方が、工場での作業中にアスベストにばく露したことによって、アスベスト関連疾患を発症されることがあります。
 この場合、労災補償や、工場での作業が原因で石綿関連疾患に罹患したことについての国家賠償(工場型アスベスト国家賠償)により、救済を受ける可能性があります。また、場合によっては、元勤務先に対して損害賠償請求を行うことを検討することも可能です。
 本稿においては、自動車製造工場における作業中にアスベストにばく露し、石綿関連疾患に罹患された方に向けて、①自動車製造工場におけるアスベストのばく露、②利用可能な救済制度、③実際の裁判例について紹介いたします。

2.自動車製造工場におけるアスベストのばく露について

(1)クラッチライニングやクラッチフェーシングの修理・交換時
  クラッチライニングやクラッチフェーシングは、いずれも駆動力の伝達を制御するための摩擦材であり、クラッチに貼り付けて使用されるものですが、過去これらに石綿が使用されていました。
 そのため、クラッチフェーシングの修理・交換に際して、舞い上がった石綿粉じんを吸ってしまった等により、石綿粉じんにばく露する可能性があります。


(2)ブレーキパッドやブレーキライニングの修理・交換時
  ブレーキパッドやブレーキライニングについて、ディスクの摩耗を低減させたり、制動効率を上昇させるために、熱に強く、摩擦の変化の少ない素材として、過去に石綿が使用されていました。
 そのため、ブレーキパッドやブレーキライニングの修理・交換に際して、舞い上がった石綿粉じんを吸ってしまった等により、石綿粉じんにばく露する可能性があります。


(3)マフラーの修理・交換時
  排気音を低減する装置であるマフラーの内面には、高音になる排ガス熱の断熱目的で過去に石綿が使用されることがありました。
 そのため、マフラーの修理・交換に際して、舞い上がった石綿粉じんを吸ってしまった等により、石綿粉じんにばく露した可能性があります。


(4)その他
  上記のように石綿が使用されていた典型的な部品のほかにも、石綿を使用した自動車部品を取り扱った方については、石綿にばく露する機会があったといえます。
 例えば、特定の車種には、ボンネット裏にエンジンからの放熱による色落ちを防止する目的で石綿フェルトが貼られていたものがあり、自動車の点検業務時にボンネットを開けることで、その石綿フェルトによる石綿粉じんにばく露することも考えられます。
 また、本人が自動車部品の修理作業等を行っていなかったとしても、同じ自動車製造工場内で、他の作業員が、石綿を含む自動車部品の修理作業等を行っていた場合、その作業により舞い上がった石渡粉じんが工場内に滞留することで、いわゆる間接ばく露という形で石綿粉じんにばく露する可能性も考えられます。


3.利用可能な救済制度について

(1)工場型アスベスト国家賠償
  工場での作業が原因で石綿関連疾患に罹患したことについての国家賠償(工場型アスベスト国家賠償)訴訟を提起し、①昭和33年(1958年)5月26日から昭和46年(1971年)4月28日までの間に、局所排気装置を設置すべき石綿工場内において、石綿粉じんにばく露する作業に従事したこと、②その結果、一定の石綿関連疾患(石綿肺、肺がん、中皮腫、びまん性胸膜肥厚)に罹患したことを立証すれば、その病態に応じて、最大1300万円の賠償金(和解金)を受領できる可能性があります。
 なお、時効との関係で、国家賠償訴訟は一定の請求期間内に提起する必要があります。


(2)労災補償
  被災者の方が労災保険に加入していた場合、勤務先での作業が原因で石綿粉じんにばく露し、一定の石綿関連疾患に罹患したことが確認されれば、労働基準監督署長による認定を経て、労災補償を受けることが可能です。労災保険で受けられる労災補償には、療養(補償)給付、休業(補償)給付、傷病年金、障害(補償)給付、介護(補償)給付、遺族(補償)給付及び葬祭料がありますが、事案によって受けられる補償の種類は異なります。
 なお、労災補償請求権についても、上記の補償の種類に応じた請求期限があります。


(3)企業賠償
  元勤務先が存続している場合には、元勤務先に対する損害賠償についても、検討する余地があります。

4.実際の裁判例について

 昭和46年頃から平成16年2月頃まで自動車整備工場で就労し、労災保険に特別加入していた亡Aが、就労期間中におけるブレーキライニング、ブレーキパッド、クラッチライニング、クラッチフェーシング及びマフラーといった自動車部品の交換作業を行っていたところ、これらに石綿が含有されており、交換作業時に石綿にばく露したことが原因で石綿肺に罹患し、死亡したとして、亡Aの遺族(妻)である原告が、労災保険に基づく遺族補償給付及び葬祭料の支給を求める請求を行ったところ、B労働基準監督署長がこれらを支給しない旨の処分をしたことから、かかる処分の取消しを求めて訴訟提起した事案(宮崎地裁平成25年3月26日判決)において、裁判所は、亡Aが、閉鎖的な空間となっていた自動車整備工場において、石綿含有製品である上記の自動車部品の各交換作業を行う中で、石綿粉じんが飛散し、これにばく露していたことを認定した上で、Aが石綿肺に罹患したことが「業務上の疾病」に当たるとして、B労働基準監督署長による、労災保険に基づく遺族補償給付及び葬祭料の支給をしない旨の処分を取り消しました。
 同裁判例では、ブレーキライニングの交換作業、ブレーキパッド交換作業、クラッチライニング及びクラッチフェーシングの各交換作業、マフラーの取り外し・修理作業について以下のとおり詳細に判示し、亡Aに石綿ばく露作業があったことを認めました。

 「ブレーキライニング交換作業の手順としては、ピット外でタイヤを外し、続いてブレーキドラムを外す作業に入ることになるが、ブレーキドラムの内側やブレーキライニングと裏のカバーの間に、ブレーキライニングが摩擦によって摩耗して発生した粉じんが多く堆積しているため、エアガンを当てて圧縮空気を噴出させ、粉じんを取り除く作業(エアブロー)を行い、その後に分解整備に入ることになる。もっとも、エアブローの際には、石綿を含む粉じんを直接顔や体に浴びることになる。なお、ブレーキライニングは、金属板に取り付けられていたものを部品として交換することになるが、昭和57年頃までは、足踏み式の機械を用いて、金属板から古いブレーキライニングを外して古いリベットを抜き取り、新しいブレーキライニングをリベットで金属板に固く密着させる作業が必要であり、その際、古いリベット穴に堆積した石綿を含む粉じんをサンドペーパーやエアブローで取り除く必要があったため、その際に石綿を含む粉じんにばく露することになる。」

 「ブレーキパッド交換作業も、ピット外の作業であったが、ブレーキパッドの周辺には、ブレーキパッドが摩擦によって摩耗し粉じんとなったものが堆積していたため、その取り外しの際、エアブローをする必要があり、石綿を含む粉じんが空中に舞い上がるため、これを直接顔や体に浴びることになる。」

 「クラッチライニング及びクラッチフェーシングの各交換作業は、現工場建物内にリフトが設置された昭和60年頃まではピット内において、その後は主としてリフト等を用いて自動車を持ち上げることによって、同時に行われていた。交換作業の手順としては、最初にドライブシャフトを外し、チェンジ関係のレバーを外し、エンジンとミッションケースのボルト、ナットを外すことによりミッションを下ろせる状態にした上、ミッションケースを外した状態でエアブローを行い、クラッチ板とプレートを外して再びエアブローを行うことになる。」

 「マフラーの取り外し、修理作業においては、その内側の石綿が粉じんとなって飛散することがあり、亡Aは、同作業を基本的にはピット内で行っていたため、石綿を含む粉じんが頭や顔に降り注ぐことがあった。マフラー交換作業は、月1回程度であり、1時間程度の時間を要した。」

 この裁判例は、自動車整備工場において、石綿を含む自動車部品を交換したり、修理したりすることで、石綿にばく露された方及びその遺族について、労災補償による救済を行うことを認めた裁判例であるといえます。
 また、亡Aの就労期間及び石綿ばく露作業が、昭和46年4月28日までの間においてもあった場合には、上記3.で述べた国の責任期間対象内であることから、工場型アスベスト国家賠償を行うことも考えられる事案です。

【弁護士への相談について】

 自動車工場における作業中に石綿を取り扱う作業(石綿ばく露作業)を行ったことがある方で、中皮腫や肺がん等のアスベスト関連疾患を発症してしまった方については、上記の制度を活用できる可能性がありますので、是非弁護士にご相談ください。

一覧に戻る

ASCOPEでは、

1

工場型アスベスト被害

2

建設型アスベスト被害

これらに限定されず、業務上に起因してアスベスト被害を受けた方々
(及びご遺族の方)のご相談を幅広く受け付けております。
お気軽にお問い合わせください。

まずはフリーダイヤル、
LINE、メールにて、
お気軽にお問い合わせください。

まずはお気軽に
お電話で資料請求!

<平日9時~19時 土日10時~18時>

0120-003-897

0120-003-897

お問合せはLINEが便利です

QRコードを読み込んで簡単、
法律事務所ASCOPEを友達追加しよう

「友だち追加」ボタンを
タップ頂くことでご登録頂けます。

メールでの
お問い合わせはこちら