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2021.07.30

造船作業でのアスベスト被害における救済方法について

樋沢 泰治

本稿監修者 樋沢 泰治(ひざわ たいじ)
法律事務所 ASCOPE所属弁護士

【ポイント】 ① アスベスト被害に対する救済方法には様々な類型があり、曝露状況等によっていずれの救済方法を利用するかは異なります。 ② 造船作業に従事していた労働者等がアスベスト被害に遭われた場合において、国に対する請求を行うことができる事案は限られると考えられます。 ③ 造船所内の作業において、労働者等が局所排気装置を設置すべき環境下で作業に従事していた場合には、当該作業の従事期間次第で、工場労働者型の救済手続を利用できる可能性があります。 ④ 造船作業に従事する労働者等が建設労働者型の救済手続を利用することは一般的には難しいと考えられるものの、建設作業と同視できるような環境でアスベストに曝露する業務に従事していた場合には、当該作業の従事期間次第で、建設労働者型の救済手続を利用できる可能性があります。 ⑤ 国に対する賠償請求を行うことが困難な場合でも、労災補償若しくは石綿健康被害救済法に基づく救済や、勤務先の会社や元請会社に対する損害賠償請求を行う余地があります。

〈目次〉

第1 アスベスト被害に対する救済方法の類型
第2 造船作業の特徴
第3 工場労働者型の救済手続を利用できる可能性がある場合
第4 建設労働者型の救済手続を利用できる可能性がある場合

第1 アスベスト被害に対する救済方法の類型

 アスベストによる健康被害が生じた場合の救済方法には、様々な類型があります。
 まず、労災補償若しくは石綿健康被害救済法に基づく救済が挙げられます。
 この点につき、両者は二者択一の関係にあり、労災補償が受けられない場合には石綿健康被害救済法に基づく救済を選択することになります。
 次に、上記いずれかの補償を受けた場合であっても、別途、訴訟手続等を通じて一定の賠償金を得ることができる場合があります。訴訟手続等は、勤務先企業に対する請求と国に対する賠償請求の2種類に大別され、さらに、国に対する賠償請求は、工場労働者型の場合と建設労働者型の場合で要件が異なります。なお、勤務先企業に対する損害賠償請求の前段階として、勤務先企業と交渉することによって解決を図る方法もあり得ます。
 以上を簡単な図に表すと、以下のとおりとなります。

第2 造船作業の特徴

 造船作業の内容は多岐にわたりますが、船の種別や作業工程に応じて主に以下の6種類に分けられます。
新造船の建造工事 修繕船工事
船殻作業 設計図面に基づいて切断・曲げ加工された部材(鋼板・型鋼)を地上及び船台上で船体の骨組や外殻を組立てブロック形成にした上、更に船台上で各ブロックを全体的に組み合わせ、進水させるまでの作業。船殻作業の工程は、現図、素材の切断・曲げ加工、組立と搭載、進水に分けられる。
機関作業 船の推進に必要な主機関(エンジン)、ボイラーなどの大型機器及び各種ポンプ、計装機器類等の据付け・調整等を行う作業。 ※修繕船工事では、上記の他、船内で直接ボイラー等の破損した箇所を修復することがある。
艤装作業 艤装作業とは、船体に居住設備、荷役装置、操舵・操船設備、救命設備等の船の運航に必要な諸設備を取り付ける工程をいい、作業内容に応じて、以下の作業に大別される。 鉄艤装作業:鉄製品の上甲板全般の取付け・居住区の外廻りの取付け及び調整 木艤装作業:木製品の居住区内、各船室内の家具類の取付けと壁・天井の内張り、工場内での家具類の製作 電気艤装作業:船全体に張り巡らされる配線工事、電気機器類の取付け、結線、機器の調整 銅工作業:船内に鋼管・銅管の曲げ加工と取付け等 塗装作業:室内外、外板の塗装作業 ※修繕船工事では、上記の他、既設の艤装品を撤去することがある。
 このように、造船作業には複数の作業工程がありますが、アスベスト被害に対する救済という観点から最も重要なのは、これらの作業工程に応じて労働者等(一人親方、中小事業主を含みます。以下同じ。)の作業環境が大きく異なる点にあります。
 例えば、船殻作業の内、素材の切断・曲げ加工等は主に工場内で行われることが多い一方、進水作業は屋外で行われます。また、機関作業・艤装作業は、船内という非常に狭い空間で作業が行われます。
 したがって、造船作業に従事していた労働者等は、工場や建設現場に勤務する労働者とは違い、アスベストに曝露する環境が作業工程によって異なっていた可能性があるため、造船作業に従事していた労働者等の救済方法は、事案によって個別具体的に検討する必要があります。

第3 工場労働者型の救済手続を利用できる可能性がある場合

 「国に対する請求」について、造船作業においてアスベスト被害に遭われた労働者の内、以下の各要件に該当する場合であれば、「⑴ 工場労働者型」の救済手続を利用することができます。
【ポイント】 ① 昭和33年5月26日~昭和46年4月28日までの間に、局所排気装置を設置すべき石綿工場内で、石綿粉じんにばく露する作業に従事したこと ② その結果、石綿関連疾患(石綿肺、肺がん、中皮腫、びまん性胸膜肥厚など)に罹患したこと。 ③ 提訴の時期が損害賠償請求権の期間内であること。
 例えば、神戸地判平成28年3月16日では、造船所構内で勤務していた保温工が造船所の敷地内にある平屋建の連棟式建物の一画において保温・断熱材の製作作業を行っていたところ、裁判所は、作業場における局所排気装置の設置義務を認めました。
 このように、造船所構内において、工場での作業と同視できるような環境(局所排気装置を設置することが可能な環境)でアスベストに曝露する業務に従事していた場合には、当該作業の従事期間次第で、工場労働者型の救済手続を利用できる可能性があります。
 ただし、局所排気装置を設置すべきとされる環境は、相当限定されるものと考えられますので、工場労働者型の救済手続を利用できるか否かは、個別具体的な判断が必要となります。

第4 建設労働者型の救済手続を利用できる可能性がある場合

 残念ながら、現在のところ、いわゆる建設アスベスト訴訟において、造船作業のみを行っていた労働者に対する国家賠償請求が認められた事案はありません。
 ただし、大阪高判平成30年9月20日では、昭和45年6月頃から昭和58年頃まで、船内大工(その後内装工に従事)として、造船工場で間仕切り用の石綿ボードを切断・加工する作業に従事した労働者の国家賠償請求が認められています。
 したがって、見込みとしては不透明ではありますが、造船所敷地内において、裁判所が認定した建設作業従事者と同視できるような環境でアスベストに曝露する業務に従事していた場合には、建設労働者型の補償制度を利用できる可能性があります。

【弁護士への相談について】

 造船作業は、工場や建築現場での作業とは異なり、工場や屋外、船内など、作業環境が作業工程に応じて変化するという特徴を有しているため、国に対する賠償請求に関しては、一律に判断することはできません。
 もっとも、国家賠償請求の要件に該当しない造船作業に従事していた労働者等でも労災補償若しくは石綿健康被害救済法に基づく救済や、勤務先の会社や元請会社に対する損害賠償請求を行う余地があります。また、事案によっては、工場労働者型若しくは建設労働者型と同視できるとして、国に対する賠償請求または補償制度の利用を行うことができる可能性もありますので、諦めずに是非一度弁護士にご相談いただければと思います。

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