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2020.05.29

石綿健康被害と労災制度について

村上 智映

本稿執筆者 村上 智映(むらかみ ちえ)
法律事務所 ASCOPE所属弁護士

長野高等学校 卒業
上智大学法学部国際関係法学科 卒業
社会福祉法人 勤務
上智大学法科大学院 修了

どのような案件も、法的紛争である以前に、人の心に由来する事象であることを忘れてはならないと思っています。法に依拠しつつ、法的視点のみに拘泥することなく、ご要望に合致した最善の解決の実現のために尽力させていただきます。

石綿健康被害と労災制度について
    【ポイント】
  • 石綿(アスベスト)ばく露作業に従事した労働者の方に石綿による健康被害が生じた場合、労災保険給付の対象になる可能性があり、対象となった場合は治療費の補償・遺族に対する補償等が受けられる
  • 石綿による健康被害については、発症した病気ごとに、労災保険給付の対象になるための詳細な要件が決められている
  • 労災保険給付の請求には給付の種類ごとに定められた時効があり、時効期間を経過すると請求することができなくなる
  • アスベストによる健康被害について国・企業への損害賠償請求を行う上で、労災保険給付の認定を受けているかどうかが重要な判断要素になる

第1 はじめに

 石綿(アスベスト)ばく露作業に従事した労働者・労災保険に特別加入をされていた一人親方等の方が、「石綿による疾病」(石綿肺・中皮腫・肺がん・良性石綿胸水・びまん性胸膜肥厚)を発症された場合、労災保険給付の対象となる可能性があります。
 石綿ばく露作業とは、以下の作業及びこれらの作業と同程度以上に石綿粉じんのばく露を受ける作業、以下の作業の周辺などにおいて間接的なばく露を受ける作業をいいます。
 労災保険給付の対象として認定されると、治療費等の補償等を受けることができます。
 また、労災保険給付の支給決定を受けていることが国・企業への損害賠償請求において必須の条件となっているわけではありませんが、国・企業への損害賠償請求を行うにあたって証明しなければならない事項は労災保険給付の対象となるための条件と重複している部分が多いため、国・企業への損害賠償請求を検討するにあたり、まず労災保険給付の申請を行い、その結果を見ることが合理的とも言えます。
 したがって、労働者として石綿ばく露作業に従事したことがあり、石綿肺・中皮腫・肺がん・良性石綿胸水・びまん性胸膜肥厚を発症された方で、労災保険給付の対象となる可能性のある方については、まず労災保険給付の申請を行うことをお勧めいたします。
 

第2 労災保険給付の概要

1 給付の種類
 労災保険制度に基づいて受けられる給付の種類は、下記のものがあります。
①療養(補償)給付・・・治療費・薬代等の補償
②休業(補償)給付・・・休業中の給与の一部に相当する金額の補償
③障害(補償)給付・・・後遺障害が残った場合の補償
④傷病(補償)年金・・・療養開始から1年6ヶ月経っても治癒しない一定の重篤な傷病に対する補償
⑤介護(補償)給付・・・一定の条件を満たす重篤な傷病・後遺障害により介護を受ける必要が生じた場合の補償
⑥遺族(補償)給付・・・労働者ご本人が亡くなられた場合の遺族に対する補償
⑦葬祭料     ・・・労働者ご本人が亡くなられた場合の葬儀費用の補償
⑧二次健康診断等給付・・事業主が実施する健康診断の結果、血圧等の一定の異常が認められた場合の二次健康診断の費用の補償

2 時効について
 労災保険給付には、給付の種類ごとにそれぞれ下記のとおり時効が定められており、時効期間を経過すると請求することができなくなります。
3 支給までの流れ
 
 

第3 じん肺管理区分について

 労災保険とは異なる制度に基づくものですが、石綿健康被害に対する労災保険給付に関連するものとして、「じん肺管理区分」という概念があります。
 「じん肺管理区分」とは、じん肺法に基づくじん肺健康診断の結果に基づき決定されるもので、内容は下記【表1】、【表2】のとおりです。
【表1】
【表2】
 石綿ばく露作業を行う事業場に勤務している間は、事業者によりじん肺健康診断が実施され、事業者が申請手続を行い「じん肺管理区分」の決定を受けることになりますが、離職後は、ご自身にてじん肺健康診断を受け、お住まいの地域を管轄する労働局へ、所定の申請書と必要資料を提出することにより「じん肺管理区分」の決定申請を行い、決定を受けることができます。
 上述のとおり、「じん肺管理区分」の決定は労災保険とは別の制度になりますが、石綿による健康被害について労災保険給付の対象になるための条件には、この「じん肺管理区分」の決定を得ていることや、エックス線写真の像の区分などじん肺健康診断での診断内容が前提となっているものが含まれているため、労災保険給付を申請するにあたり、まず「じん肺管理区分」の決定を得る必要が生じる可能性があります。
 
 

第4 石綿健康被害に対する労災保険給付

1 対象となるための要件
 石綿による健康被害について、労災保険給付の対象となるためには、石綿ばく露作業に従事した労働者・労災保険に特別加入をされていた一人親方等の方が、「石綿による疾病」(石綿肺・中皮腫・肺がん・良性石綿胸水・びまん性胸膜肥厚)を発症しており、かつ、発症した「石綿による疾病」が、それぞれ下記の要件を満たしていなければなりません。

⑴石綿肺
 じん肺法に規定する「じん肺管理区分」(【表1】)に基づき、以下の①、②のいずれかに該当する場合
⑵中皮腫
 胸膜、腹膜、心膜または精巣鞘膜に中皮腫であって、以下の①、②のいずれかに該当する場合 (※ただし、最初の石綿ばく露作業(労働者として従事したものに限らない)を開始したときから10年未満で発症したものは除きます。)
⑶肺がん
 原発性肺がんであって、以下の①~⑥のいずれかに該当する場合 (※ただし、最初の石綿ばく露作業(労働者として従事したものに限らない)を開始したときから10年未満で発症したものは除きます。)
⑷良性石綿胸水
 石綿以外の胸水が生じる原因(結核性胸膜炎、リウマチ性胸膜炎等)を全て除外できた場合

⑸びまん性胸膜肥厚
 以下の①~③の全てに該当する場合
2 給付の具体的内容
 石綿による健康被害において申請を検討することが多いと考えられる、治療費等の補償である「療養(補償)給付」,ご本人様が不幸にもお亡くなりになられてしまった場合のご遺族の方への補償である「遺族(補償)給付」について、その詳細を解説します。

⑴療養(補償)給付
 療養(補償)給付には、窓口負担なく無料で治療を受けることができる「療養の給付」と、治療にかかった費用の支給を受けることができる「療養の費用の支給」の2種類があります。
労災病院・労災保険指定医療機関で治療を受ける場合は「療養の給付」、近くに労災病院・労災保険指定医療機関がないといった理由により、指定医療機関等以外で治療を受ける場合は「療養の費用の支給」となります。
 「療養の給付」の請求は治療を受けている労災病院・労災保険指定色医療機関へ、「療養の費用の給付」の請求は所轄の労働基準監督所長へ、所定の請求書を提出することにより行います。
⑵遺族(補償)給付
 受給資格を有する遺族(受給資格者)のうちの最先順位者(受給権者)に対して支給される「遺族(補償)年金」と、「遺族(補償)年金」を受給する遺族がいない場合等に支給される「遺族(補償)一時金」の2種類があります。
ア 遺族(補償)年金
(ア)受給資格者と受給権者
 遺族(補償)年金の受給資格者は、亡くなられた労働者の方の死亡当時にその方の収入によって生計を維持していた(共稼ぎの場合も含みます。)配偶者(事実上婚姻関係と同様の事情にあった方も含みます。)・子・父母・孫・祖父母・兄弟姉妹(妻以外の遺族については一定に年齢・障害の状態にあることが必要)であり、受給資権者となる順位は、以下のとおりです。
(イ)給付の内容
 遺族の方の人数(受給権者及び受給権者と生計を同じくしている受給資格者の人数)などに応じ、遺族(補償)年金・遺族特別支給金(一時金)・遺族特別年金が支給されます。支給決定がなされると、支給要件に該当することとなった月の翌月分から支給され、毎年2月・4月・6月・8月・10月・12月に、2ヶ月分が支払われます。(遺族特別支給金については、最初の年の支給1回のみとなります。)
※1 給付基礎日額とは
 原則として、医師の診断によって疾病の発生が確定した日(賃金締切日が定められているときは、その直前の賃金締切日)の直前3ヶ月間にその労働者の方に対して支払われた賃金の総額(ボーナス・臨時に支払われる賃金は除きます。)を、その期間の暦日数で割った1日当たりの賃金額(労働基準法上の平均賃金に相当する額)をいいます。
※2 算定基礎日額とは
 原則として、医師の診断によって疾病の発生が確定した日以前1年間にその労働者の方に対して支払われた特別給与(ボーナス等3ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金をいい、臨時に支払われる賃金は含まれません。)の総額(算定基礎年額)を365日で割った金額をいいます。
 特別給与の総額が給付基礎年額(給付基礎日額×365日に相当する金額)の20%に相当する額を上回る場合には、給付基礎年額の20%に相当する金額が算定基礎年額となります。ただし、150万円が限度額となっています。

(ウ)請求方法
 所轄の労働基準監督署長に、「遺族補償年金支給請求書」(様式第12号)と添付書類を提出することにより行います。
 請求にあたって必要な添付書類は以下のとおりです。
【必要な添付書類】
(エ)遺族(補償)年金前払一時金について
 遺族(補償)年金を受給することになった遺族は、1回限り、その前払いを受けることができます(遺族(補償)年金前払一時金)。遺族(補償)年金前払一時金の額は、給付基礎日額の200日分・400日分・600日分・800日分・1000日分の中から選択することができます。

イ 遺族(補償)一時金
(ア)支給される場合
 遺族(補償)一時金は、以下の①または②の場合に支給されます。
(イ)受給資格者と受給権者
 遺族(補償)一時金の受給資格者とその順位は以下のとおりであり、このうち最先順位の受給資格者の方が受給権者となります。
(ウ)給付の内容
 それぞれの場合に、以下の内容の一時金が支給されます。
(エ)請求方法
 所轄の労働基準監督署⻑に、「遺族補償一時金支給請求書」(様式第15号)と添付書類を提出することにより行います。
 請求にあたって必要な添付書類は以下のとおりです。
【必要な添付書類】

【弁護士へのご相談について】

 石綿による健康被害について労災保険給付の認定を受けるためには、詳細に定められた要件を満たすことを証明する必要があり、適切な労災認定を受けるためには、専門家である弁護士・社会保険労務士によるサポートを受けられることをお勧めいたします。
 ご相談、調査については無料で承っておりますので、石綿による健康被害について労災申請を検討されている方は、是非一度弊所までご相談ください。

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