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2025/04/09

時間外労働の上限規制はチャンス?2024年問題で変わる物流業界の未来

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Question

 2024年問題と呼ばれる時間外労働上限規制の適用拡大により、運送業界は難しい対応を迫られることになります。しかし一方で、これをきっかけに業務効率化や企業イメージ向上を果たした事例もあると耳にしました。
 実際のところ、長時間労働を是正することで企業にどのようなメリットがあるのでしょうか。また、法的リスクを回避しながら経営改革を進めるポイントがあれば知りたいです。

Answer

 たしかに、残業時間の制限は当面の間、企業活動に制約をもたらすかもしれません。しかし、ここで業務改善やIT化などを積極的に推進すれば、結果的にコスト削減や事故防止、離職率低下などにつながる可能性があります。
 具体的には、配送ルートの最適化や、ドライバーの適正配置を実現するためのシステム導入などが挙げられます。法的リスクを回避しつつ、効率を高めるためのポイントを以下に整理しました。

ポイント

  • ・「法令順守=コスト増」ではなく、「法令順守=信頼獲得」
  • ・ITツール活用や荷主との契約見直しで生産性向上を狙う
  • ・長時間労働の是正が結果として従業員の健康安全や勤務満足度につながり、ひいては企業イメージのアップを生む

目次

1.長時間労働を是正するメリット

(1)安全運転・事故防止
 ドライバーが過労で運転するリスクが減るため、事故発生率が下がる可能性があります。事故が減れば、賠償問題や保険料の上昇といった負担も軽くなるかもしれません。

(2)従業員満足度と定着率の向上
 過酷な労働条件が改善されれば、ドライバーの健康と家族との時間が確保され、離職率が下がるでしょう。結果的に企業内の専門性が蓄積され、サービス品質の向上にもつながります。

(3)企業イメージのアップ
 法令を厳守し、従業員を大切にする企業としての評価が高まれば、荷主や取引先からの信用度も上がり、新たなビジネスチャンスを獲得できる可能性があります。
 また、企業としてのイメージが高まることで、今後の人材確保にもつながることが期待されます。


2.具体的な改善策

 長時間労働を削減しつつ生産性を維持・向上させるには、以下のような対策が考えられます。

(1)配送計画・ルート最適化ソフトの導入
 AIやGPSを活用して効率的な配送ルートを自動算出するサービスが多数登場しています。これにより、運転時間の短縮やガソリン代の削減が見込めます。

(2)シフト制や変形労働時間制の適正運用
 業務量に波があるなら、繁忙期に少し長く働き、閑散期に短くする変形労働時間制を採用する方法も有力です。導入には労使協定の締結や就業規則の変更が必要になるため、の助言が重要です。

(3)荷主への交渉・契約書見直し
 無理な納期設定や低運賃が長時間労働の原因である場合、荷主との契約内容を見直し、適正な取引条件を確保することが欠かせません。  弁護士の立場から契約リスクを点検し、法的に不備のない形へ修正していくことが望ましいです。


3.法的リスクを回避するための注意点

 改革を進める中でも、以下の点に注意が必要です。

(1)就業規則や36協定の整合性
 時間外労働の上限を守るためには、就業規則や36協定で明確に規定し、社員に周知する必要があります。不備があると労働基準監督署からの是正勧告や罰則を受けるリスクが高まります。

(2)従業員とのコミュニケーション
 労働条件が変わることに対し、ドライバーが納得していない場合、労働審判や訴訟に発展する可能性があります。事前に丁寧な説明や意見交換を行い、合意形成を図ることが大切です。

(3)連携する士業の活用
 労務管理の専門家である社会保険労務士、財務・補助金活用に強い税理士、そして法的リスク全般をカバーできる弁護士がそろえば、ワンストップで問題解決に臨めます。

4.まとめ

 2024年問題は、一見すると運送業界にとって大きな負担のように思われるかもしれません。しかし、その影響を前向きにとらえ、業務効率化や従業員満足度の向上に取り組むことで、むしろ企業競争力を高めるチャンスとなる可能性もあります。
 法的リスクを回避しつつ変革を進めるためには、労務・税務・法務といった複数の観点からアプローチすることが求められます。

法律事務所ASCOPE 監修

本稿執筆者
法律事務所ASCOPE 監修
法律事務所 ASCOPE所属弁護士

本稿執筆者からのメッセージ

 長時間労働の是正は、社会全体が避けては通れない課題です。2024年問題を契機に、運送業界も働き方を見直す動きが一層加速するでしょう。当事務所では、弁護士を中心に、税理士・社労士との連携により多方面から企業の改革をサポートしています。
 企業イメージの向上や事故リスクの低減など、メリットも多い取り組みです。ぜひこの機会に、自社の制度設計や就業規則の見直しをご検討ください。ご相談を心よりお待ちしております。

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