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2025/06/16

人手不足時代の外国人雇用~法的注意点と実務対応のポイント~

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Question

 近年、深刻な人手不足に直面しており、外国人雇用を本格的に検討し始めました。しかし、在留資格の確認や不法就労のリスク、煩雑な手続など、法的な注意点が多く不安です。採用から雇用管理、万が一のトラブル発生時まで、企業側が押さえておくべき具体的な法的ポイントと実務対応について、専門家の視点から教えてください。

Answer

 外国人雇用は人手不足解消の有効な手段ですが、法的リスク管理が不可欠です。最重要課題は「在留資格」の厳格な確認と「不法就労」の防止です 。また、入管法や労働基準法等の遵守はもちろん、雇用状況の届出も義務付けられています 。本コラムでは、これらの企業側の法的義務を具体的に解説し、採用時の注意点、適切な労務管理、トラブルを未然に防ぐ実務ポイントを明らかにします。

ポイント

  • ・在留カードで「就労可否」と「活動範囲」を必ず確認する。
  • ・労働基準法・社会保険諸法令は国籍問わず日本人同様に適用する。
  • ・ハローワークへの「外国人雇用状況の届出」を忘れずに行う。
  • ・外国人特有の事情に配慮した相談体制や多言語対応で定着を支援する。

目次

1.外国人雇用の基本:法的枠組みと企業側の心構え

 外国人雇用を検討する企業は、関連法規の理解が不可欠です。中心となるのは出入国管理及び難民認定法(入管法)で、外国人の在留資格や就労範囲を定めています。また、労働施策総合推進法は外国人雇用状況の届出を義務付け、労働基準法は国籍による差別を禁じ、日本人と同様の保護を外国人労働者にも与えています。

 さらに、厚生労働省の「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」(外国人雇用管理指針)においては、募集・採用から労働条件の明示、安全衛生、生活支援、解雇に至るまで、事業主が講じるべき措置が定められています。例えば、労働条件の明示や安全衛生教育は、外国人労働者が理解できる言語で行うよう定められています。

 深刻な人手不足の中、外国人雇用は企業の持続的成長の鍵となりますが、単なる労働力確保に留まらず、長期的な戦力化を目指す人事戦略が求められます。外国人雇用管理指針が「定着支援」を重視しているように、企業は採用後の教育、キャリア支援、生活サポートまで含めた包括的な対応が必要です。

2.最重要チェック!外国人雇用の要「在留資格」と不法就労防止策

 外国人雇用における最大の法的リスクは不法就労であり、これを防ぐには在留資格制度の理解と確認が不可欠です。在留資格は、日本での活動内容や期間を定めるもので、企業は採用する外国人が就労可能な在留資格を持ち、業務内容がその範囲内であることを確認する義務があります。これを怠ると不法就労助長罪(入管法第73条の2)に問われる可能性があり、在留カードの確認不足など過失があっても処罰の対象となり得ます。

 主な在留資格には、就労活動に制限のない「永住者」等の①身分・地位に基づくものと、活動内容に制限のある②「技術・人文知識・国際業務」等の専門的・技術的分野や③特定技能分野があります。その他は、(原則)就労が不可であるものですが、④「留学」や「家族滞在」については、資格外活動許可があれば週28時間以内のアルバイトが可能です。

 これらの確認は「在留カード」原本で行い、表面で「在留資格」「在留期間」「就労制限の有無」、裏面で「資格外活動許可欄」を確認します。在留カードの有効期限も重要です。偽造カード対策として、出入国在留管理庁提供の「在留カード等読取アプリケーション」や「在留カード等番号失効情報照会」サイトの活用が推奨されます。これらのツールを利用したことに記録自体が、企業として注意義務を果たした証拠になり得ます。

在留資格区分 (1)具体的な在留資格例 (2)就労の可否 (3)企業側の主な注意点
身分・地位に基づくもの (1)永住者、定住者、日本人の配偶者等 (2)制限なし (3)在留カードの有効期限確認は必要
就労が認められるもの(専門的・技術的分野) (1)技術・人文知識・国際業務、高度専門職、経営・管理、技能等 (2)許可された範囲内でのみ可 (3)職務内容が在留資格の活動範囲に合致するか厳密に確認が必要
就労が認められるもの(特定技能分野) (1)特定技能1号・2号 (2)特定産業分野の指定業務のみ可 (3)受入れ分野・業務の確認が必要
支援計画の実施義務あり(1号)
原則就労不可(一部例外あり) (1)留学、家族滞在 (2)原則不可だが、資格外活動許可を得れば週28時間以内等可 (3)在留カード裏面の資格外活動許可の有無・内容確認、時間管理の徹底が必要
就労不可 (1)短期滞在、研修、文化活動 (2)不可

3.採用から退職まで:外国人雇用における企業が行うべき労務管理と手続

 外国人雇用では、在留資格確認に加え、採用から退職までの各段階で適切な労務管理と法的手続が求められます。

 採用時には、労働条件(業務内容、賃金、労働時間等)を書面で明確に通知する義務があります。誤解を避けるため、母国語翻訳や平易な日本語での説明が重要です。税金や社会保険料控除についても具体的に説明しましょう。

 社会保険(健康保険、厚生年金保険等)および労働保険(労災保険、雇用保険)は、国籍を問わず法定の加入条件を満たせば加入義務が発生するため、事業主は速やかに手続を行う必要があります。労災保険は不法就労者にも適用され得る点、厚生年金には脱退一時金制度がある点も留意すべきです。

 また、事業主はハローワークへ「外国人雇用状況の届出」を行う義務があります。これは、外国人を雇い入れた際および離職した際に、氏名、在留資格等を届け出るものです。届出を怠ると30万円以下の罰金の対象となります。

 日々の労務管理では、労働安全衛生管理も重要です。安全衛生教育は、外国人労働者が理解できる方法(母国語使用、図解等)で行う必要があります。また、事業主は外国人労働者の旅券や在留カードを不当に保管してはなりません。

 これらの手続や管理は、外国人労働者が内容を実質的に理解し納得することが不可欠であり、企業側の丁寧なコミュニケーション努力が求められます。

4.外国人材が活躍できる職場環境づくりと定着支援

 外国人材の能力を最大限に引き出し定着を促すには、法令遵守に加え、安心して働ける職場環境の整備が戦略的に重要です。

 第一に、コミュニケーション円滑化は基本です。言語の壁は誤解やストレスを招き、生産性低下や早期離職の原因となり得ます。社内規程の多言語化や「やさしい日本語」の使用推奨、日本語学習機会の提供などが有効です。

 第二に、苦情・相談体制の整備と生活支援も重要です。外国人労働者は労働条件だけでなく、日本での生活全般に不安を抱えています。母国語対応可能な相談窓口設置や、行政サービス情報提供などが求められます。

 こうした就労環境整備を後押しするため、「人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)」といった制度もあります。これは、雇用労務責任者選任や就業規則等の多言語化、苦情・相談体制整備などに取り組む事業主を支援する制度です。

 第三に、日常的な労務管理の徹底も、紛争発生時のリスク軽減に繋がります。労働条件の書面交付、適正な労働時間管理、賃金台帳の正確な作成・保管、安全衛生教育の実施記録などを丁寧に行うことが求められます。

法律事務所ASCOPE 監修

本稿執筆者
法律事務所ASCOPE 監修
法律事務所 ASCOPE所属弁護士

本稿執筆者からのメッセージ

 外国人雇用は、貴社の人手不足解消と事業発展の大きなチャンスとなり得ます。しかし、その一方で、在留資格の確認ミスや不適切な労務管理は、不法就労助長罪などの重大な法的リスクに繋がりかねません。言葉や文化の違いからくるコミュニケーションの課題も、未然の対策が不可欠です。

 「うちの会社は大丈夫だろうか?」「何から手をつければ良いのか分からない」といったご不安やお悩みを抱えていらっしゃる経営者様、人事ご担当者様も多いのではないでしょうか。

 当事務所は、企業側の視点に立ち、外国人雇用に関するあらゆる法的課題の解決をサポートいたします。在留資格の適法性チェック、就業規則や雇用契約書の整備、社会保険手続の助言、外国人雇用状況届出のサポート、そして万が一の労務トラブル発生時の対応まで、貴社の状況に合わせた最適なリーガルサービスをご提供します。

 外国人材が安心して能力を発揮できる職場環境を整備し、企業成長を加速させるために、ぜひ、当事務所の専門家にご相談ください。

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