HOME人事労務ラボ労務管理 > テレワーク導入で見落としがちな費用負担と情報セキュリティ、どこまで会社が責任を負う?

2025/04/23

テレワーク導入で見落としがちな費用負担と情報セキュリティ、どこまで会社が責任を負う?

Twitter facebook
Question

 テレワークを導入しようとした際、通信費や光熱費をどこまで会社が負担するかが曖昧で、従業員とのトラブルに発展するケースを耳にします。また、在宅勤務で扱われるデータについて、情報漏えいリスクやセキュリティ対策の程度を巡り、「企業がどこまで管理すればよいのか」悩む経営者も多いのではないでしょうか。
 会社として過度な負担をすべて引き受けるのは難しい一方、まったくルールを設定していないと危険も大きいと聞きます。具体的に、費用負担やセキュリティ面でどのような指針を定め、運用すべきなのでしょうか。

Answer

 テレワークでは、従業員が自宅環境(インターネット回線や電気等)を使って業務を行うため、費用負担を明確にしないと「自腹で払うのはおかしい」といった不満やトラブルが起きやすくなります。厚生労働省のガイドラインでも、「テレワークを行うことによって労働者に過度の負担が生じることは望ましくない」とされていますが、どこまで企業が負担するかは、それぞれの企業規模や財政状況、従業員の働き方形態によって異なるでしょう。
 また、情報セキュリティに関しても、VPNや暗号化通信などの技術的対策だけでなく、従業員が家族や第三者に業務情報を安易に漏らさないようにする運用ルールも重要です。もしセキュリティ上の不備が原因で漏えい事故が発生すれば、企業が情報管理を怠ったとみなされ、損害賠償リスクに直結する可能性もあり得ます。したがって、コストと実効性のバランスを考慮しながら、就業規則やテレワーク規程において明確化し、従業員教育を実施することが欠かせません。

ポイント

  • 費用負担のルールを明示し、従業員に周知:通信費や光熱費などをどの程度まで会社が負担するか、就業規則に定義してトラブルを防止する。
  • VPN・暗号化通信などの技術的対策だけでなく、運用ルールの徹底も必須:私物端末利用やアクセス権限の管理を曖昧にすると、情報漏えいの危険が高まる。
  • 事故時の対応フローを事前に設定し、懲戒規定などを整備:万が一、情報漏えいが起きても、混乱せず被害拡大を防ぐためにマニュアルを用意する。

目次

1.テレワーク導入時の費用負担ルールの明確化

 在宅勤務に伴う通信費や光熱費、インターネット回線使用料などの負担区分をどうするかは、企業と従業員の間で摩擦が起きやすいテーマです。厚労省のガイドラインでも「企業ごとの状況に応じたルールを定め」ることが望ましいと示されており、企業の実情を考慮せずに全額会社負担とすると、経営面で大きな負担となる恐れがあります。一方で、労基法上「作業用品その他の費用を負担させる」場合には、就業規則等で定めることを要するとされています(労基法代89条5号)。
 そのため、例えば「会社が貸与する情報通信機器を利用する場合の通信費は会社負担とする」など、現実的な落としどころを探ることが必要です。重要なのは、これらのルールを就業規則やテレワーク規程に記載し、従業員へ事前に通知して同意を得ること。曖昧なままだと、想定外の費用を自己負担させられたという不満が噴出し、労働トラブルに発展しかねません。

2.情報セキュリティ対策の基本と注意点

 在宅勤務では、企業の機密情報や個人情報を社外のネットワークで扱う機会が増え、情報漏えいリスクが高まります。VPNや暗号化通信を必須とするなどの技術的措置はもちろん、社員が家族や第三者に業務情報を見られないようにする運用上のルールも重要です。
 例えば、業務用パソコンの使用範囲を限定し、私物端末への業務データ保存を禁止する、社内システムへのアクセス権限を役職や職務に応じて厳格に管理するなど、セキュリティレベルを維持する仕組みを整えましょう。コスト面では、高度なシステム導入が難しい企業もあるかもしれませんが、必要最小限のセキュリティ対策を怠ると、万一の漏えい時に企業が情報管理を怠っていたと指摘され、場合によっては損害賠償責任を負うリスクがあることを意識する必要があります。

3.万が一の漏えいトラブルへの備え

 いくら対策を講じても、人為的なミスやサイバー攻撃によって情報が漏えいするリスクを完全にゼロにはできません。そこで、事故発生時の対応フローや社内マニュアルを事前に整えておき、被害拡大を防ぎながら速やかに関係者へ報告できる体制を築くことが欠かせません。
 また、従業員が故意または重大な過失で情報を漏えいさせた場合に、どのような懲戒処分を適用するかを就業規則に明記しておくと、企業としてのルールと責任分担を明確にできます。こうしたルールが曖昧だと、トラブル発生後に責任を押し付け合う形になり、内部紛争や対外的な信用失墜を招く恐れがあります。

4.まとめ

 テレワーク導入時に見落とされがちな費用負担と情報セキュリティの問題は、企業経営に深刻なダメージを与えかねない重要課題です。あまりに寛大な負担を企業が背負えば経営を圧迫する一方、何も整備せず従業員に任せきりではトラブルや情報漏えいが起きた際に責任を追及される恐れがあります。
 そこで、就業規則やテレワーク規程で具体的なルールを定めるとともに、企業の規模や業種に応じたセキュリティ対策をバランスよく導入することが求められます。当事務所では、弁護士が就業規則や契約書の法的リスクを検証し、税理士・社労士が助成金や労務管理面でサポートするなど、包括的に企業のテレワーク運用をお手伝いできます。費用負担やセキュリティ面で少しでも不安を抱えている経営者の方は、ぜひご相談ください。

法律事務所ASCOPE 監修

本稿執筆者
法律事務所ASCOPE 監修
法律事務所 ASCOPE所属弁護士

本稿執筆者からのメッセージ

 テレワークは、社員にとって柔軟な働き方を得られる一方で、会社にとっては費用負担とセキュリティリスクという新たな懸念をもたらす可能性があります。どこまで会社が責任を負うかを誤ると、後からコストが膨れ上がったり、情報漏えいに対する賠償責任を負ったりすることにもなりかねません。
 一方、適切にルールを明文化し、従業員と合意形成を図ることで、従業員満足度の向上や離職率低下が期待できるほか、優秀な人材を確保しやすいというメリットもあります。私たち専門家の知見を活かして、貴社の実情に合った安全・安心なテレワーク制度を構築してみてはいかがでしょうか。

労働問題に関する
このようなトラブル
悩んでいませんか?

お問い合わせ

ご相談は以下まで、
お電話・メール・LINEにて受付ております。

相談のご予約はLINEが便利!

法律事務所ASCOPEを友達に追加しよう!

対応時間:平日10時~19時

「友だち追加」ボタンをタップ頂くことで
ご登録頂けます。

受付では、
一旦下記についてお聞きいたします。

法人名(ご担当者名)/ 所在地 / 電話番号 / 相手方氏名(コンフリクト防止のため)/
相談内容の概要(相手方代理人名、次回期日、進捗状況等)/
ご来所可能日時

TOP

お問い合わせはこちら