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2022/10/10

経歴詐称を理由とした懲戒解雇が有効とされた事例

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目次

1.事案の概要

東京地判平成16年12月17日(労判889号52頁)

 本件は、コンピューターソフトウェアの開発・制作などを行っている会社が、プログラマーとして原告を中途採用したところ、実際には求められていたプログラミング言語を使用する能力がなく、当該プログラミング言語を使用した業務に従事していたかのような経歴書を作成し、その旨面接で説明したことが、懲戒事由になるか否かが争われた事案です。
 被告会社が、システム開発をするため特定のプログラミング言語を使用できる契約社員を募集したところ、原告は、他社において当該プログラミング言語を使用してシステム開発に2度従事した旨記載した経歴書を提出して応募し、面接において同様の発言をしました。そこで被告会社は、原告を採用し、当該システム開発に従事させました。しかしながら、原告は、当該システム開発業務にあたり、当該プログラミング言語を使用する能力があれば到底することがないような質問を同僚にするなど、その能力が疑問視されていました。
 また、上司が原告に進捗の報告を求めた際には、進捗度を90%や80%と報告したものの、実際の進捗状況には問題があるとされていました。上司が、原告に対し、必要に応じて応援を入れる旨申し向けても、原告は曖昧な態度に終始し、最終的に被告会社が、原告の使用していたパソコンに保存されていたプログラムファイルを確認したところ、プログラムとして全く意味をなさない状況であることが判明した。そこで、被告会社は、実際には当該プログラミング能力を有していないにもかかわらず、これがあるかのような経歴書を提出したとし、懲戒解雇した事例です。

2.裁判所の判断の概要

 裁判所は、①原告が、被告会社からのシステム開発の進捗状況に関する照会にまともに応じようとしなかったこと、②業務従事中の同僚への発言内容が当該プログラミング能力があれば到底するような内容ではないこと、③原告が作業していたプログラムファイルがほとんどできていない状況であったこと、④尋問においてもおよそ当該プログラミング能力があるとは認めがたい供述を繰り返していたことから、原告に当該プログラミング能力がほとんどないことを認定しました。そして、採用にあたっては、当該プログラミング言語を使用する能力があるか否かが問題となっており、経歴詐称の有無は、当該プログラミング能力の有無という文脈において判断される事柄であるとして、原告には当該能力がないことから、経歴書の記載が虚偽と判断しての懲戒解雇は有効と判断しました。

3.裁判例のポイント

 本事例は、経歴の中でも職歴の詐称が争われた事案です。経歴には、学歴、職歴、犯罪歴などがありますが、いずれについても懲戒事由となるには詐称された経歴が重要であることが必要です(本事例では、懲戒解雇をしていますが、懲戒解雇する場合には、就業規則に懲戒に関する定めがあることも必要です。)。
 本判決では、原告は、特定のプログラミング能力がほとんどなかったにもかかわらず、経歴書には特定のプログラミング能力があるかのような職歴の記載をし、また、採用時の面接においても同様の説明をしたものであるところ、原告は、本件開発に必要なプログラミング言語のプログラマーとして、採用されたのであるから、原告は、「重要な経歴を偽り採用された」と判断しています。
 すなわち、本判決では、経歴書記載の職歴そのものが事実に反するか否かは主要な問題とはされておらず、被告がどのような能力を有する者を募集していたかという文脈において職歴の詐称は判断されるべきとしています。したがって、経歴書記載の職歴それ自体が事実に反するわけではない場合でも解雇が有効になる可能性があるという点で重要な判決です。

佐々木 将太(ささき しょうた)

本稿執筆者
佐々木 将太(ささき しょうた)
法律事務所 ASCOPE所属弁護士

本稿執筆者からのメッセージ

 経歴詐称による解雇においては、求人に際して、会社がどのような能力を有する人材を求めていたのかを基に、実際に当該能力に欠けていたことを日々の業務遂行の中から明らかにしていくことが重要です。もし従業員の能力に、採用時に説明を受けていた経歴からして疑問が生じるような場合には、早めに弁護士に相談し、必要な資料の収集、対応にあたるべきです。

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