1.ユニオン(労働組合)とはいかなる団体か
労働組合とは「労働者が主体となって自主的に労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的として組織する団体又はその連合団体」と定義さています(労働組合法2条)。労働組合は、労働者が複数人集まれば自由に結成することができ、行政機関の認可や届出なども不要です。
そして労働組合はいくつかの種類があり、企業別労働組合や産業別労働組合、合同労組などがあります。合同労組は、企業や産業に関わりなく、特定の地域において多様な労働者が加入している組合をいい、ユニオンは合同労組の一種です。
2.団体交渉に応じなければならないか
(1) 団体交渉とは
団体交渉とは、使用者と労働組合が団体として交渉をすることです。労働組合が交渉を要求したら、使用者はこれに応じなければなりません(団体交渉権)。団体交渉を申し込んで来たユニオンに加入している労働者が、その企業にとって例え1名しかいなかったとしても、正当な理由なく団体交渉を拒否すると不当労働行為(労働組合法7条2号)となり得ますので、これに応じる必要があります。
(2) 誠実交渉義務とは
使用者は、形式的に団体交渉に応じるだけでは足りず、労働組合と誠実に交渉しなければなりません(誠実交渉義務)。
誠実交渉義務について、裁判所は、「使用者は……労働組合に対し、自己のよって立つ主張の根拠を具体的に説明したり、必要な資料を提示するなどして、誠実に交渉を行う義務がある」、「使用者には、合意を求める労働組合の努力に対しては、……誠実な対応を通じて合意達成の可能性を模索する義務がある」と示しています(東京地判平成9年3月27日労判720号85頁)。
もっとも、誠実交渉義務はあくまでも交渉の義務であり、合意や譲歩の義務までは使用者にありません。上記裁判例も、「使用者には、労働組合の要求ないし主張を容れたり、それに対し譲歩をしなければならない義務まではない」、「労使双方が当該議題についてそれぞれ自己の主張・提案・説明を出し尽くし、これ以上交渉を重ねても進展する見込みがない段階に至った場合には、使用者としては誠実交渉義務を尽くしたといえる」として、団体交渉を打ち切ることができるとしています。
なお、労働組合が要求する団体交渉を正当な理由なく使用者が拒否することは不当労働行為として法律上禁止されています(労働組合法7条2号)。使用者が不当労働行為を行った場合、労働組合は労働委員会に対し救済を求め、労働委員会から団交応諾命令などの救済命令が発せられることがあります。そして、使用者が労働委員会の救済命令に従わなかった場合には、50万円の過料に処せられることがあります(労働組合法32条)。
3.団体交渉の対象事項とは
では、使用者として団体交渉に応じる義務があるのはいかなるテーマのものでしょうか。
これについては、労働組合が自主的に労働条件の維持・改善や経済的地位の向上を目的とする団体であることから、「団体の構成員たる労働者の労働条件その他の待遇や当該団体的労使関係の運営に関する事項であって、使用者に処分可能なもの」をいうとされています(東京地判平成9年10月29日労判725号15頁)。組合員の労働条件に関係するものであれば団交事項になるため、賃金等の主要な労働条件の他に人事評価制度の見直しや福利厚生などについても広い意味で労働条件に該当します。
今回問題となっているテーマは組合員の解雇であるため、使用者は団体交渉に応じる義務があるといえます。