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2020/07/31

残業代について

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Question

残業代について教えてください。
ア 従業員を採用する際、残業代を支払わないことを合意しました。問題ありませんか。
イ 年俸制の従業員には残業代は支払わなくてよいですか。
ウ 基本給とは別に歩合給を設けています。歩合給に対する残業代はどのように計算すればよいですか。
エ 管理職には残業代を支払っていませんが問題ありませんか。
オ 残業代の時効は何年ですか。

Answer

・従業員との間で残業代を支払わないことの合意は無効であり、残業代の支払は必要です。
・年俸制の従業員に対しても、残業代の支払いは必要です。
・歩合給は、基本給と分けて計算し、時間外労働の割増部分だけを支払う必要があります。
・管理職であっても残業代の支払が必要な場合があります。
・令和2年の法改正で時効が3年に延長されました。

ポイント

  • ・従業員との間で残業代を支払わないことの合意は無効であり、残業代の支払は必要です。
  • ・年俸制の従業員に対しても、残業代の支払いは必要です。
  • ・歩合給は、基本給と分けて計算し、時間外労働の割増部分だけを支払う必要があります。
  • ・管理職であっても残業代の支払が必要な場合があります。
  • ・令和2年の法改正で時効が3年に延長されました。

目次

1 時間外労働(残業)について

 前提として、三六協定を締結しなければ、1日8時間、週40時間(特例措置対象事業の場合は44時間)の法定労働時間を超えて従業員を労働させることはできません(労働基準法32条1項、2項、36条)。 この法定労働時間を超えて従業員を労働させた場合、時間外割増賃金を支払うことが必要です(労働基準法37条1項)。

2 時間外割増賃金(残業代)支給の必要性について

(1)強行規定

 労働基準法37条1項は、時間外割増賃金の最低基準を定めています。したがって、これを下回る水準での合意は無効です。
 つまり、従業員との合意によって残業代の支払いが免除されることはありません。

(2)適用除外

 「監督若しくは管理の地位にある者」(労働基準法41条2号)、すなわち、事業主に代わって労務管理を行う地位にあり、労働者の労働時間を決定し、労働時間に従った労働者の作業監督する者については、時間外割増賃金に関する労働基準法の規定が適用されません。
 上記の管理監督者と認められるには、労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体の立場にある者であるといえる必要があります。その際には、肩書ではなく実態に即して判断される点に注意が必要です。
裁判例においても、この方針が踏襲され、より具体的に、①事業主の経営に関する決定に参画し、労務管理に関する指揮監督権限を認められていること、②自己の出退勤を始めとする労働時間について裁量権を有していること、および③一般の従業員等その地位と権限にふさわしい賃金(基本給、手当、賞与)上の処遇を与えられていることという基準を示した裁判例があります。
 つまり、管理職という肩書があれば直ちに残業代の支払が不要となるわけではありません。

(3)残業代を年俸に含むといった取扱いの有効性

 残業代を年俸に含むとする取扱いについて、最高裁は、通常の労働時間の賃金にあたる部分と割増賃金にあたる部分とを判別できず、何時間の時間外労働に対する割増賃金を込みとしたか不明であるので、このような取扱いは労働基準法に照らして効力を認めることができないと判断しています。
 つまり、年俸制であれば直ちに残業代の支払いが不要となるわけではありません。

3 割増賃金の支給額の計算方法について

(1)基本給

 まず、時間単価を算出します。月給制の場合は、月によって定められた賃金を所定労働時間で割ることで算出できます。次に、時間単価に割増率と時間外労働時間数を乗じることによって残業代を算出することができます。

    (例) 基本給20万円、月所定労働時間170時間の従業員が30時間の時間外労働を行った場合
  • 時間単価=20万円÷170時間=1176円/時間
  • 割増賃金の支給額=1176円×1.25×30時間=4万4100円

(2)歩合給

 歩合給の場合、時間単価の算出は、所定労働時間ではなく総労働時間で割ることで算出できます。
 次に、時間単価に割増率と時間外労働時間を乗じることによって残業代を算出することができます。歩合給の場合、割増率1.25の1.0の部分については支給済みであるため、0.25をかけることがポイントです。

    (例) 上記の例で、歩合給が10万円の場合
  • 時間単価=歩合給10万円÷総労働時間200時間=500円/時間
  • 割増賃金の支給額=500円×0.25×30時間=3750円
1 昭和22・9・13基発17号、昭和63・3・14基発150号
2 例として、育英舎事件(札幌地裁平成14年4月18日判決労判839号58頁)
3 医療法人社団康心会事件(最高裁平成29年7月7日第二小法廷判決労判1168号49号)

4 割増賃金支払請求権の時効について

 令和2年の法改正により、時効が3年に延長されました。
 ただし、3年の時効が適用されるのは令和2年4月1日以降に支払われる賃金からとなりますので、2年分以上の割増賃金の支払いを請求されうるのは基本的には令和4年4月以降です。
 つまり、3年分の割増賃金の支払いを請求されうるのは、令和5年3月以降です。

川島 孝紀(かわしま たかのり)

本稿執筆者
川島 孝紀(かわしま たかのり)
法律事務所 ASCOPE所属弁護士

本稿執筆者からのメッセージ

どのような場合に残業代の支給が必要であるのか、どのように残業代を計算するのかといった事項について、ある程度ご理解頂けたかと思います。
 しかし、個別具体的な事案においては、法令や裁判例の解釈等を伴う場合も少なくはなく、決して簡単なものではありません。したがって、現在、残業代を請求されているかにかかわらず、残業代に関してご不明な点がある場合には、専門家である弁護士にご相談ください。

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