ラオス人民民主共和国 2023年公的及び公的保証付き債務報告書

 2024年6月28日、ラオス財務省は公式サイトにて公的及び公的保証付き債務報告書を公表した。ラオス財務省債務管理部が国際連合貿易開発会議(UNCTAD)の債務管理および財務分析システム(DMFAS 6.0)を使用して収集・集計し、作成したものであり、中央政府債務(外債および国内債務)および政府が保証する国営企業(SOE)の債務を含む。

 以下、当報告書の概要、並びに報告書に基づいた分析となる。

2023年の主要な進展

外部PPG債務の残高

 2023年12月31日時点で、総PPG債務の残高は138億ドルに達し、前年の139億ドルからわずかに減少した。GDPに対するPPG債務比率は、2022年の112%から2023年には108%に低下した。この減少は、厳格な債務管理措置の実施と名目GDPの強い成長によるものである。具体的な措置としては、新規借入の制限や非債務資金源の活用(余剰収入、SOEからの融資返済、資産の売却など)が挙げられる。

 PPG債務の構成は、主に外部公的債務(76%)が占めており、次いで外部公的保証付き債務(13%)、国内公的債務(11%)が続いている。外部PPG債務は主に政府自身の借入で構成されており、エネルギーセクターを中心とした国営企業への融資および保証も含まれている。

外部債務の配分

 外部PPG債務の大部分はコンセッショナルローン(60.4%)であり、米ドル建てが多い(59%)。また、固定金利の割合が高く(約85%)、金利リスクを軽減している。これにより、政府は商業借入の制限とプロジェクト実施および債務返済のためのよりコンセッショナルな資金源の探索を推進している。

国内債務の動向

 2023年末の国内債務残高は31.1兆キープに達し、前年に比べて23%増加した。これは主に三角債券の発行によるものであり、支出未払い金や財政赤字を補填するための債券が含まれている。国内債務のGDP比は12%で安定している。国内債務の構成は、再資本化債券(33%)、三角債券(29%)、投資債券(18%)、財政赤字補填債券(13%)、短期国債(6%)である。

債務サービスの状況

 2023年の総公的債務サービスは外部債務の返済と国内債務の返済の増加により大幅に増加した。特に外部債務の返済額は前年の5億700万ドルから9億5000万ドルに倍増した。商業銀行への返済と債券の償還がその大部分を占めている。しかし、主要な債権者への返済の一時停止により、実際の返済額は当初の計画を下回った。

債務管理戦略

 ラオス政府は、公的債務のGDP比を2025年までに約5ポイント削減することを目標としている。借入および融資政策を厳格に実施し、新たな債務の累積を制限する方針である。具体的には、新規プロジェクトの借入を効率的なプロジェクトに限定し、債務返済に十分な収益を上げることを目指している。また、非債務資金源(余剰収入、SOEからの融資返済、資産の活用など)を探求し、債務返済義務を果たす予定である。しかし、非債務資金源が不十分な場合には、新たな借入も検討される。

 債務再編も重要な政策の一つである。ラオスは、主要な債権者との交渉を通じて既存の債務の繰り延べや再編を進め、流動性の改善と債務サービスの圧力緩和を図っている。

リスクと課題

マクロ経済リスク

 ラオスの債務ポートフォリオは高い外貨建て比率を持ち、為替リスクにさらされている。特に、総公的債務の87%が外貨建てであり、キープの価値低下が大きなリスクとなっている。また、再融資リスクと金利リスクも存在するが、固定金利の高い割合(約85%)が金利リスクを軽減している。

国内リスク

 外貨流動性の制約も重要なリスク要因である。国際資本市場へのアクセスが限られているため、国内資金源の動員が必要となる。また、国営企業の財務状況が悪化した場合、公的保証付き債務やPPP投資に関連する潜在的な負債が財政リスクを高める可能性がある。さらに、追加的な投資未払い金が発生した場合、国内債務残高と債務サービスが増加する可能性がある。

外部リスク

 キープの価値が主要外貨に対してさらに低下した場合、債務の国内価値が増加し、債務サービス義務に対する圧力が高まる可能性がある。また、国際金融市場での金利上昇が再融資コストを増加させるリスクも存在する。さらに、コモディティ価格の低下が国内収入(特に鉱業セクターからの外貨収入)に影響を与える可能性がある。

以上

参考資料:
• 2023Public and Publicly Guaranteed Debt Bulletin of Lao PDR(ラオス財務省公表)
• 国際金融統計(IFS)
• アジア開発銀行(ADB)の報告書およびデータベース