ラオス経済現状~新型コロナウイルス感染第2波において~

ラオス経済現状

~新型コロナウイルス感染第2波において~

 

1.ラオスにおける新型コロナウイルス感染の現状

ラオスは2021年4月に新型コロナウイルス感染第2波に直面した。4月の新規感染者数は700人を超え、同月の前半に比べて14倍増加した。4月以降、ビエンチャン首都をはじめ、全国の多くの都市において市内感染ケースが多数確認され、7月14日の時点では累積感染者数は2,976人、死亡者数3人となった。7月上旬から、感染者の大部分は入国者、特にタイから帰国した労働者である。現在、ビエンチャン首都やチャンパサック県、ボケオ県、サワンナケット県、カムアン県などの大都市を中心に、全国15カ県において感染が確認され、7月31日現在、累積感染者数は6,299人、死亡者数7人となった。

ラオスの感染者数はアセアンや世界の諸国に比べて少ないが、医療事情を考慮するとかなり深刻な状況であると言える。そのため、ラオス政府は感染拡大を防止するため4月から現在に掛けて、外出制限措置、一部の事業(主に娯楽事業)の営業停止措置などを取りながら、ワクチン接種を急行している。政府はワクチン接種のついて、2021年内に総人口の50%を目標としている中、7月31日現在で第一回の接種は14.7%(ビエンチャン首都は43,4%)、第二回の接種は11.9%(ビエンチャン首都は41,2%)達成している。

 

2.コロナ禍におけるマクロ経済状況

  • 経済成長について

新型コロナウイルス感染はラオス経済に大きな影響を与えている。感染第一波が発生した2020年のGDP成長率は3,3%と、計画(修正版)の3,6%を下回った。観光業とその関連事業はもちろん、入国制限やロックダウンの実施により経済全体が大きな影響を与えられた。また、世界全体の経済の低下や、原料や商品の輸送の困難により、外国からのラオス産品の注文が減少し、輸出業も厳しい状況に陥った。また、財政不安定より、政府による景気刺激策も限定的であった。官民ともの低下が低下したため、支出も少なく、GDPの低下の主要因となった。GDP成長率がプラスを維持できてるのは、この状況でも成長し続ける電力事業、建設業、及び一部の加工事業の貢献である。

2021年第2四半期に発生した新型コロナウイルス感染第二波が、政府に厳格な経済活動制限措置の実施を強いた。しかし、第一波時に比べてより緩和的であり、国内移動の再開や国内観光の促進等の経済回復努力が行われ、また、電力、鉱産物、農産品の輸出が依然として成長しているため、2021年のGDP成長率は3.7%と見込まれる。

なお、2021年の国内感染状況は昨年に比べて深刻なため、2021年度のラオスの経済成長は不確かなものである。感染状況が改善されず、感染拡大防止のための措置が厳しくなる場合、期待された経済成長も達成できない可能性が高い。2021年後半は、感染拡大の防止と政府の経済支援が経済成長のカギとなる。

 

  • 安定性について

マクロ経済面では全体的に不安定な状態が続き、インフレ、キープ安が続いている。2021年最初の5ヵ月のインフレ率は2.66%である。インフレの主な原因は国内の品物の供給の不十分さと、燃料代の上昇及び感染拡大防止措置の実施に伴う物流の困難による物流コストの上昇である。また、多くの事業は外国からの原料の輸入に頼っているため、対ドル・対バーツのキープ安は生産原価が高くなり、物価上昇の原因となる。キープは昨年同時期に比べて、対ドルでは6.5%、対バーツでは9.9%安くなった。地域の通貨に対するドル高がキープ安の原因の一つであるが、輸入品の支払いのための外貨需要が増加する一方、観光業の縮小、外国からの直接投資の減少、及び航空業の停止にのため、外貨獲得が減少したことが主要因である。

財政面については、2021年第一四半期では良い傾向にあるが、第2四半期の支出の圧力により、全体的に不安定が続いている。予算計画の実施について、第1四半期歳入は54310億キープ(年度計画の20.8%)であり、歳出は42070億キープ(年度計画の13.3%)であると、12248億キープのプラスになっているが、第2四半期では関税・税の優遇措置を実施しているため歳入の減少が予想され、一方、感染拡大防止のための支出及び公債の返済の増加に伴う歳出の増加が予想される。そのため、GDPの2.17%と設定された2021年度の財政赤字計画は達成できない可能性が高い。

また、外貨不足問題が発生し、銀行と市場の為替レートのギャップが拡大しているため、民間企業の外貨建ての債務に返済が困難になっている。2021年6月の銀行と市場の為替レートでは、キープ・ドルでは10.3%、キープ・バーツでは0.5%の差がある。また、外貨準備高も12.54億ドルにまで減少した。

 

3コロナ禍におけるビジネス活動状況

コロナウイルス感染による影響は、多くの事業体にとって、昨年よりも今年の影響が大きい。在ラオスヨーロッパ商工会議所の調査によると、インタビューに応じた会社の1/3が、昨年よりも今年が自分の事業に対するコロナの影響が深刻であると回答している。ラオスや諸外国の完成防止政策の実施がサプライチェーンの中の購入、生産、サービスに影響を与え、よって、注文が少なく、原料の供給が遅れ、生産が遅滞している。この問題は収入・支出に直接に影響を与えるため、多くの事業が活動を停止したり、支出を減少または延期したりするため、雇用問題も発生する。最も影響を受ける事業は輸出のための加工事業と観光関連事業である。

外国からの需要の低下はラオスの加工事業に大きなダメージを与えている。ラオスの重要な輸出品の一つである衣料品の輸出量は、2020年は2019年に比べて11%減少し、また2021年第1四半期は2020年同時期に比べて9%減少している。また、カメラ部品の輸出量も、2020年は2019年に比べて30%減少し、また2021年第1四半期は2020年同時期に比べて6%減少している。

外国の観光客が入国できなくなったことは、観光サービス事業にだけではなく、ホテル、レストラン、観光ガイド、航空業、車両レンタル等の観光関連事業にも大きく影響を及ぼしている。ADBの調査(2020年)によると、調査対象事業の50%が営業を停止してる。また、観光業は本来、国内の消費を大きく貢献するため、観光業の不況は、国内の食品やアルコール飲料の販売の低下にもつながる。

加工業については、国内外の原料供給者が需要に対応できない、または供給が遅れるため、原料不測の問題が発生し、加工業にダメージを与えている。

上記のような問題が発生しているため、企業は厳しい財務状況に陥っている。多くの企業は賃金の支払いや社会保険料の納付、債務の返済に困難である。

この状況を乗り越えるために、企業側は投資計画・事業拡大計画の延期や、生産労働者数の削減、生産関連機械の輸入削減等の対応措置を取っている。また、政府側は、企業を支援するために関税・税の優遇措置の実施や債務返済期間の延期等を行っている。

 

以上

出典:

‐ ラオス国立経済社会科学機関の「2021年経済報告書」

‐ ラオスCovid 19対策特別委員会ホームページ