ラオス労働法(労働契約の終了)

ラオス労働法(労働契約の終了)

1 労働契約の解除
-無期労働契約の場合:
・契約当事者の一方はいつでも無期労働契約を解除することができる。なお、他方当事者には、肉体労働の場合は30日(歴日)以上、頭脳労働の場合は45日(歴日)以上予告しなければならない。
・労働者はこの予告期間中において、通常の休日及び休暇とは別に、再就職活動のために有給で1週間のうち1日休暇をとることができる。また、労働者が予告期間中に事故や負傷を負った場合、その治療期間は予告期間として換算されない。

-有期労働契約の場合:
・契約期間の満了、契約当事者の合意、または一方当事者の契約違反行為がある場合に解除することができる。
・一方当事者の違反行為により契約が解除される場合、違反行為をした方は発生した損害を賠償しなければならない。使用者が契約違反をした場合は、契約内容に従い、労働者の利益を保証しなければならない。

2 使用者による労働契約の解除(解雇)
使用者は以下の理由により労働契約を解除することができる。
1.労働者が専門能力を欠けている、または健康不調で、医師の診断書が提出されているため、労働者の能力や健康状態に適する業務に配置転換させた後でも、新しい業務を遂行することができない場合。
2.ビジネスの事情により労働者の数を減らさなければならないため、労働組合若しくは労働者の代表者若しくは労働者の過半数に協議した上で、既に労働監督局に報告した場合。
使用者は労働者に対して書面により解雇事項及び解雇理由を上記の予告期間をもって予告しなければならない。また、労働者に対し補償金を支払わなければならない。

3 労働契約の解除について労働者に帰責事由がある場合
労働者が以下の行為をした場合、使用者は補償金を支払わずに、また事前に労働監督局から許可を得ずに、労働者を解雇することができる。
1.故意により使用者に損害を与えた場合。
2.忠告を受けたにもかかわらず事業体の内部規定または労働契約を違反した場合。
3.理由なく4日連続で欠勤した場合。
4.事業体に対する故意の犯罪行為により、裁判所の自由刑の有罪判決を受けた場合。但し、過失による犯罪はその限りでない。
5.忠告を受けたにもかかわらず、他の労働者、特に女性労働者の権利を侵害した場合
上記の解雇の場合において、労働者は働いた分の給与を受ける権利を有する。

4 解雇が認められない場合
以下の場合において、労働監督局の許可を得なければ、解雇が認められない。使用者が下記の場合において労働契約を解除した場合は、労働監督局に事前に報告して、許可を得なければならない。
1.妊婦、または1歳未満の子を持っている女性労働者
2.医師の指示に従い、治療中または回復期間中の労働者
3.労働者の代表者、または事業体内の労働組合の長に務めている労働者
4.訴訟手続き中、身柄拘束中、または裁判所の判決を待っている労働者
5.医師の証明を有する疾病中および治療中の労働者、または災害に直面している労働者
6.年次有給休暇中の労働者、または使用者の許可を得た上で休暇中の労働者
7.使用者の指示に従い、他の場所で業務に従事している労働者
8.使用者に対し不服を申立て、または訴訟を提起している労働者、または事業体内における労働関連の法令の実施や労働紛争について、政府当局に協力している労働者
なお、有期労働契約について、期間が満了した労働契約を解除することができる。

5 不当解雇
以下の場合は不当解雇とみなされる
1.合理的な理由のない解雇
2.労働者が業務を継続できないように権限を乱用したり、直接的または間接的に強制したり、または労働者の基本的な権利を侵害したりするとき
3.労働契約を違反したために、労働者または労働者の代表者から注意を受けたにもかかわらず改善しなかったため、労働者がやむを得ず退職した場合

6 不当解雇の効果
不当解雇と判断されたとき、以下の効果をもたらす
1.労働者は下の職位、または適切な新たな職位への復職を請求することができる
2.使用者は、労働者の復職を認めない場合、または労働者が復職を希望しない場合、補修金の他に、労働契約上や法令上のその他の利益を支払わなければならない。

7 労働者による労働契約の解除(退職)
労働者は以下の理由により、使用者に補償金を支払ってもらえる上で労働契約を解除することができる。
1.治療後でも健康不調で、医師の診断書があり、かつ配置転換を受け、新しい業務に従事することになったが、業務を遂行できない場合。
2.労働者から使用者に対して、労働契約に従うよう何度も催告したが、改善が見られない場合。
3.勤務場所の移転により労働者が勤務できなくなり、それについて労働組合または労働者代表、及び村役場の書面による証明がある場合。
4.使用者による妨害、横暴、性的嫌がらせがある場合、またはそのような事態が発生しているにもかかわらず使用者が放置している場合。
労働者は書面により退職事項及び退職理由を上記の予告期間をもって予告しなければならない。
有期労働契約の場合において、退職理由が上記の2及び4の場合、使用者は補償金の他に契約に従いの残りの給与や報酬、その他の利益を支払わなければならない。

8 労働契約の解除に伴う補償金の支払い
・通常の労働契約の解除:
  補修金額 = 給料全額または最後の給与の10% × 働いた月数 
・不当解雇の場合:
  補修金額 = 給料全額または最後の給与の15% × 働いた月数
・給与が出来高制、または定額でない場合、労働契約の解除前の最後の3か月分の給与を平均したものを計算基準となる給与額とする。
・労働法に定められていない理由による労働契約の解除の場合、補修金は労働契約の内容、または労働者の使用者の合意に基づき支払われる。

9 労働者の一時的な配置転換
使用者は必要に応じて、3か月間を限度に労働者を同じ事業体内の他の業務に配置転換させることができる。3か月を超えた場合、使用者と労働者の間で新たに合意しなければならない。
一時的な業務の配置転換について、新しい業務の給与と元の業務の給与が異なる場合、当該労働者は高い方の給与をもらうことになる。また、当該労働者が元の業務に復帰した場合、その給与は配置転換前の給与に戻る。
労働者が懲戒処分等として、給与がより低い業務に配置転換させられた場合はその新しい給与を受けることになる。

10 事業体の売却、譲渡または合併
使用者が当該事業体を売却、譲渡若しくは他の会社と合併させた場合、または新しい使用者に変更する場合、元の使用者は労働者に対し予告しなければならない。予告期間は上記と同様、肉体労働の場合は30日(歴日)以上、頭脳労働の場合は45日(歴日)以上である。また、元の使用者と新しい使用者との間で、労働者に対する責任について明白に決め、法令に基づく労働者の利益を保障しなければならない。

11 中途採用における新しい使用者の責任
新しい使用者は、採用する労働者が以前の使用者との間に直接的または間接的な労働関係が未だあることを知りながら当該労働者を採用した場合、元の使用者に発生する損害の全てに責任を負う。

12 労働契約の終了
労働契約は以下の場合において終了する。
1.労働契約が完全に履行された場合
2.有期労働契約が満期した場合
3.契約当事者がその解除に合意した場合
4.労働者または使用者が死亡した場合
5.労働者が過失犯罪により執行猶予が付かない自由刑の判決を言い渡された場合
労働者が死亡した場合には、労働者による労働契約の解除とみなされ、使用者はその補償金として、上記の支払うべき補償金の50%を支払わなければならない。

(以上)

根拠法令:(2013年改正)ラオス労働法 No. 43/NA, Dated: 24 Dec 2013