ラオスの経済紛争解決法について

はじめに

 ラオスにおける裁判外紛争解決手続はラオス経済紛争解決法に基づき行われる。本法は、経済紛争の解決における原則、手続、及び組織の枠組みを定め、企業が紛争を平和的かつ効率的に解決できるようにすることを目的としている。ラオス政府は、この法を通じてビジネス環境の安定性と信頼性を高め、国内外の投資家にとって魅力的な投資先を提供することを目指している。

 本報告書は、ラオス人民民主共和国における経済紛争解決法の概要を提供するものである。

経済紛争解決法の目的

 ラオス経済紛争解決法(以下、「本法」とする)は、以下の目的を持って制定された。
1.平和的解決の保障:経済紛争を平和的に、かつ公正に解決するための枠組みを提供すること。
2.ビジネス環境の促進:企業活動の遂行と拡大を支援し、国内外の投資家に適したビジネス環境を創出すること。
3.法的整合性の確保:経済紛争解決手続がラオス国内法及び国際法と整合することを保障すること。

経済紛争の定義と解決方法

 本法における経済紛争とは、経済またはビジネス上の契約違反から生じる紛争を指し、国内外の法人間、法人と個人、または個人間の利害に関するものを含む。当事者は、調停または仲裁による解決を選択する権利を有する。
1.調停:中立的な第三者である調停人が、当事者間の交渉を支援し、互譲と合意を促進する方法。
2.仲裁:仲裁人が紛争に関する判断を下し、その決定に従って紛争を解決する方法。

経済紛争解決手続の原則

 本法は、経済紛争解決手続において以下の基本原則を規定している。

1.当事者の自発性:当事者は自発的に紛争解決手続に参加し、いかなる外部からの強制や脅迫を受けないこと。
2.公正・迅速:手続は公正かつ迅速に行われ、法律と整合することが保障される。
3.当事者の平等:手続において当事者は法の前に平等であり、いかなる差別も受けないこと。
4.秘密の保持:紛争解決に関する情報及び資料は、当事者の許可なしに公開されないこと。

経済紛争解決手続の流れ

申立書の提出

 経済紛争の解決を希望する当事者は、合意した経済紛争解決センターまたは事務所に申立書及び関連書類を提出する。申立書には、氏名、年齢、職業、国籍、住所、紛争原因、訴額、及び請求内容が含まれる。

調停人及び仲裁人の選抜

 当事者は、調停人または仲裁人名簿から選抜する権利を有する。選抜された調停人または仲裁人は、公正で独立した立場から紛争解決に関与する。

調停手続

調停手続の流れ
1.調停人の選任:当事者は合意の上で調停人を選任し、調停手続を開始する。
2.意見聴取:調停人は当事者双方の意見を聴取し、紛争の背景や主張を理解する。
3.調停案の提示:調停人は双方の利益を考慮し、互譲と合意に基づく解決策を提示する。
4.合意形成:当事者は調停人の提案を検討し、合意に達した場合、その内容を調停合意書として書面に記録する。
5.調停合意の履行:調停合意書は法的効力を持ち、当事者はその内容に従って履行する。

仲裁手続

仲裁手続の流れ

1.仲裁人の選任:当事者は合意の上で仲裁人を選任し、仲裁手続を開始する。
2.証拠の収集と提出:当事者は証拠を収集し、仲裁人に提出する。仲裁人は双方の証拠を検討し、必要に応じて追加の証拠を要求する。
3.口頭審理:仲裁人は口頭審理を実施し、当事者の主張と証拠を聴取する。
4.仲裁決定の下達:仲裁人は全ての証拠と主張を総合的に検討した上で、仲裁決定を下す。この決定は最終的かつ拘束力を持つ。
5.仲裁決定の履行:仲裁決定は裁判所においても執行可能であり、当事者はその内容に従って履行する義務がある。

経済紛争解決手続の結果の執行

調停合意の執行

 調停手続において当事者が合意に達し、その内容が調停合意書として記録された場合、この合意書は法的効力を持つ。当事者は、調停合意書に基づいて履行する義務を負う。調停合意書の内容が履行されない場合、当事者は裁判所に対して強制執行を求めることができる。

仲裁決定の執行

 仲裁手続において下された仲裁決定は、最終的かつ拘束力を持ち、当事者はその決定に従って履行する義務がある。仲裁決定が履行されない場合、当事者は裁判所に対して仲裁決定の強制執行を求めることができる。裁判所は、仲裁決定を執行可能な判決として認め、必要な強制手段を講じる。

経済紛争解決センターの役割

 経済紛争解決センター及び事務所は、紛争解決手続の運営及び管理を行い、紛争解決に必要な支援を提供する。これには、調停人及び仲裁人の選抜、手続の監督、及び紛争解決に関する情報提供が含まれる。
 センターは、以下の具体的な役割を果たす。
1.調停及び仲裁の促進:経済紛争の迅速かつ効率的な解決を促進するための調停及び仲裁手続を運営する。
2.専門知識の提供:調停人及び仲裁人に対し、専門的な知識及び訓練を提供する。
3.手続の透明性の確保:紛争解決手続が公正かつ透明に行われるよう監督する。

紛争解決手続の費用

 経済紛争解決手続にかかる費用は、申立手数料、調停人及び仲裁人の報酬、及びその他関連費用から成る。これらの費用は、通常、当事者間で合意された方法に基づいて分担される。

経済紛争解決法の実施と監督

 ラオス政府は、本法の適切な実施を確保するため、関連する政府機関及び経済紛争解決センターに対し、監督及び指導を行っている。さらに、政府は本法の改善及び更新を継続的に行い、国際標準及びベストプラクティスと整合するよう努めている。

まとめ

 ラオス経済紛争解決法は、企業がラオスでの事業活動を行う上で重要な法的枠組みを提供している。本法により、企業は紛争を平和的かつ効率的に解決でき、ビジネス環境の安定性を確保することができる。企業は、本法の内容を十分に理解し、適切な紛争解決手続を選択することが求められる。

(以上)

出典:ラオス経済紛争(2018年6月22日)