2024年10月28日
自動車製造におけるアスベスト被害について
2024年8月30日
石綿粉じんが飛散する工場に勤務していた被災者について、使用者の安全配慮義務違反を認める一方で、被災者の病態により損害発生の有無を区別した事例(高松地判平成24年9月26日判例時報2178号50頁)
2024年8月27日
アスベスト建材(石綿発泡体)について
2024年10月28日
アスベスト情報
2024年8月30日
アスベスト情報
2024年8月27日
アスベスト情報
アスベストの粉塵を吸い込むことで、中皮腫等の深刻な病気を引き起こすことが知られています。しかしながら、発症までの期間が長い一方で、その利便性や経済性等から企業や国による有効な対策がとられないまま大量の使用が続けられてきました。その結果、近年になって、アスベスト製品の製造工場・造船工場・建築現場等で働いていた方やそのご家族、アスベスト工場等の近隣住民の方などを中心に、アスベストを原因とする重篤な病気を発症され、長年苦しまれている方、亡くなる方が増えています。
私たちは、このような重大な健康被害が生じてしまったことについては、アスベストの危険性を認識しながら問題を先送りにし、対策を怠ってきた国・企業に大きな責任があると考えます。被害の救済・回復を図るため、各種救済制度のご案内、各申請のサポート及び企業または国に対する損害賠償等について取り組んでいます。
【悪性中皮腫とは】
悪性中皮腫は、内臓を覆う膜(肺を覆う胸膜など)の表面をさらに覆う中皮細胞に発生する悪性腫瘍です。その大半は胸膜に発生し、次いで腹膜に多く発生します。他の発生部位としては心膜、精巣鞘膜が挙げられます。
【症状】
悪性中皮腫の中でも特に多い胸膜中皮腫の場合、まずは肺を覆う胸膜の中皮細胞に悪性の腫瘍が発生し、徐々に腫瘍化が広がります。胸膜全体や肺・心膜・リンパ節に腫瘍が広がるほか、進行した場合には脳・肝臓・骨等にまで転移することもあります。
胸膜中皮腫の代表的な症状としては、胸水貯留、悪心、胸痛・背部痛、息切れ・咳・呼吸困難等が挙げられます。胸水貯留については自覚症状がないことがほとんどであるため、胸痛等の自覚症状が現れた場合には既に病期が進行しているおそれがあります。
腹膜中皮腫では腹痛、腹部膨満など、心膜中皮腫では不整脈、息切れなどの症状が見られます。
【石綿ばく露との関係】
中皮腫と石綿ばく露は強く関連しており、「中皮腫の70%が職業性アスベストばく露による」との指摘もされています(岸本卓巳編「改訂版アスベスト関連疾患 早期発見・診断の手引」一般社団法人日本労務研究会、2013年、17頁)。また、職業性の高濃度の石綿ばく露を受けるアスベスト工場・建設現場等で働く労働者に限らず、その家族や工場の近隣住民等、極めて低濃度の石綿ばく露しか受けていない方でも発症する場合があります。
中皮腫は、30年~40年程度の長い潜伏期間を経て発症します。日本では、高度経済成長期に入るとアスベストの輸入量が激増したため、1990年代後半以降、中皮腫による死亡者数は増加の一途を辿っています。
【肺がん(原発性肺がん)とは】
肺がんとは、気管、気管支及び肺胞の上皮等に発生する悪性腫瘍を指します。肺がんは、(悪性)中皮腫とは異なり、石綿だけでなく、喫煙も肺がん発生の原因であることが知られています。
【症状】
代表的な症状としては、咳、痰、血痰、呼吸困難、胸痛などが挙げられます。また、自覚症状がなくても胸部エックス線検査や胸部CT検査を行った際に、肺がんと診断される例もあります。
【石綿ばく露との関係】
石綿ばく露量が増加した場合、肺がん発生の頻度が高くなるとの指摘がなされています。石綿を原因とする肺がんは、最初のばく露から30年~40年程度の長い潜伏期間を経て発症すると言われています。
【びまん性胸膜肥厚とは】
びまん性胸膜肥厚とは、石綿へのばく露によって肺を覆う胸膜(臓側胸膜)が慢性的に線維化し、炎症を引き起こすことで胸膜が肥厚した状態をいいます。ただ、胸膜が肥厚する原因は石綿ばく露に限られるものではありません。また、広範囲の胸膜プラークとの鑑別が必要です。
【症状】
びまん性胸膜肥厚の症状について、自覚症状が無いことも多いようですが、進行すると呼吸機能の低下による呼吸困難や胸痛、発熱等を伴うことがあります。また、石綿へのばく露が原因の場合、石綿肺が合併していることもあります。なお、びまん性胸膜肥厚は良性石綿胸水から生じることもあるので注意が必要です。
【石綿ばく露との関係】
比較的高濃度の石綿へのばく露により発症すると考えられており、潜伏期間は30年~40年といわれています。労災認定では3年以上の職業性のばく露が一つの基準となっています。
【石綿肺とは】
石綿肺は、石綿粉じんを吸入することによって発症する、肺が線維化する疾患(肺線維症のひとつ)です。肺が線維化する原因は、粉じんや薬品等さまざまなものがありますが、石綿粉じんのばく露を原因として発症するものを石綿肺と呼んでいます。
【症状】
主な症状は、労作時の息切れ、咳、痰、乾性咳嗽(痰を伴わない乾いた咳)、疲労などです。症状が更に進行すると、呼吸不全や肺がんを発症する場合もあります。石綿肺の患者は、石綿肺がない場合に比べて高い頻度で肺がんを発症するといわれており、喫煙者は更に高リスクであると言われています。
【石綿ばく露との関係】
石綿肺は、石綿の高濃度ばく露が原因で発症する職業性の疾患です。また、石綿肺の潜伏期間は通常10年以上、一般に15~20年といわれています。
【良性石綿胸水とは】※救済法との関係では対象外の疾病となりますのでご注意ください。
胸水は胸腔内に体液が貯留してしまうことをいい、そのうち特に石綿粉じんを吸引したことを原因として胸膜炎が発生することにより胸水が生じたものが良性石綿胸水と呼ばれています。
【症状】
自覚症状は呼吸困難や胸痛、発熱等といったものが挙げられますが、自覚症状がない場合もあります。
【石綿ばく露との関係】
最初の石綿ばく露から10年内に発症することもあれば、40年以上経って発症することもあります。また、比較的高濃度の石綿曝露状況があった場合に生じるものとされています。ただし、胸水は肺炎や悪性腫瘍等によっても発生する可能性があるため、良性石綿胸水と診断するにはこれら他原因を排斥する必要があるとされています。
1
工場型アスベスト被害
石綿(アスベスト)製品の製造に従事していた従業員の方が典型例です
2
建設型アスベスト被害
石綿(アスベスト)を使った建物等の建設・解体等によって、アスベスト被害を受けられた方が典型例です
(参考資料) 厚生労働省「石綿ばく露作業による労災認定等事業場一覧表」
※なお、上記典型例以外のアスベスト被害についても、ご相談を受け付けております。
アスベスト被害についての
救済手続きは、
大きく分けて
下記の手続きがあります。
補償・給付手続き
1
労災制度による補償
2
石綿健康被害救済制度(石綿救済法)による給付
3
建設アスベスト給付金
企業・国に対する
損害賠償請求
1
アスベスト工場で働いていて被害を受けた方
2
アスベスト建材を使用していた建設現場等で働いていて被害を受けた方
「工場型アスベスト被害」については、アスベスト工場内の作業に従事しアスベスト被害を受けた人々が国家賠償請求を提起し国の賠償義務が認められるに至りました(泉南アスベスト訴訟最高裁判決。最判平成26年10月9日)。現在では、同様の状況によりアスベスト被害を受けた人々についても、上記最高裁に示された基準に従い、和解により、国が症状に応じて一定の賠償金を支払う運用がとられています。
「建設型アスベスト被害」においても、最高裁判所の判決にて国の賠償義務が認められるに至りました(令和3年5月17日最高裁判決)。そして、令和4年1月19日より建設アスベスト給付金制度が開始され、同様の被害を受けた方について給付金が支給されることとなりました。
お気軽にご相談ください。
1
工場型アスベスト被害の場合に
大阪泉南最高裁判決に基づき、以下の基準を満たすことにより国が一定の賠償金を支払う運用が取られています。
①昭和33年(1958年)5月26日から昭和46年(1971年)4月28日までの間に、局所排気装置を設置すべき石綿工場内において、労働者として、石綿粉塵に曝露する作業に従事したこと
②その結果石綿(アスベスト)関連疾患(石綿肺、肺がん、中皮腫、びまん性胸膜肥厚等)に罹患したこと
③提訴の時期が損害賠償請求権の期間内(原則として現在の病態になったときから20年以内)であること
1,150万円
管理4、肺がん、中皮腫、びまん性胸膜肥厚の場合
1,200万円
石綿肺(管理2・3で合併症なし)による死亡の場合
1,300万円
石綿肺(管理2・3で合併症あり又は管理4)肺がん、中皮腫、びまん性胸膜肥厚による死亡の場合
550万円
じん肺管理区分の管理2で合併症がない場合
700万円
管理2で合併症がある場合
800万円
管理3で合併症がない場合
950万円
管理3で合併症がある場合
※遅延損害金等は除いた額になります。
2
建設型アスベスト被害の場合に
建設アスベスト給付金制度の開始
建設型アスベスト被害においても、令和3年5月17日に最高裁判決を受けて、令和4年1月19日より、アスベスト被害を受けた一定の条件を満たす建設労働者等に対して、給付金を支給する法律が施行され、建設アスベスト給付金制度が開始されました。
※厚生労働省ホームページ:
建設アスベスト給付金制度について
以下の要件に該当する方が給付金の対象となります。
(1)国内で特定石綿ばく露建設業務(※1)に従事したこと
期間 | 業務 |
---|---|
S47.10.1~ S50.9.30 |
石綿の吹付けの作業に関する業務 |
S50.10.1~ H16.9.30 |
屋内作業場(※2)で行われた 作業に関する業務 |
※1 建設業務とは、土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊または解体の作業及びこれらの準備の作業並びにこれらの作業に付随する作業(現場監督の作業を含む。)をいいます。
(参考)判決において国の責任が認められた主な職種:吹付工、左官、塗装工、タイル工、エレベーター設置工、サッシ工、墨出し大工、防災シャッター工、空調設備工、ダクト工、保湿工、築灯煉積工、大工、内装工、電工、電気保安工、配管工、ブロック工、鉄骨工、溶接工、解体工、とび、はつり工、現場監督
※2 屋内作業場とは、「屋根があり、側面の面積の半分以上が外壁などに囲まれ、外気が入りにくいことにより、石綿の粉じんが滞留するおそれのある作業場」とされています。
(2)特定石綿ばく露建設業務に従事したことにより石綿関連疾患(石綿肺管理2・3・4、中皮腫、肺がん、著しい呼吸機能障害を伴うびまん性胸膜肥厚、良性石綿胸水)を発症したこと
(3)労働者・一人親方等であったこと(またはその遺族であること)
なお、患者様が死亡されている場合に給付金の請求をすることができるご遺族の範囲は、配偶者(事実婚含む)、子、父母、孫、祖父母又は兄弟姉妹です(記載した順から優先)。
1
石綿肺管理2でじん肺法所定の合併症がない場合
550万円
2
石綿肺管理2でじん肺法所定の合併症がある場合
700万円
3
石綿肺管理3でじん肺法所定の合併症がない場合
800万円
4
石綿肺管理3でじん肺法所定の合併症がある場合
950万円
5
石綿肺管理4、中皮腫、肺がん、
著しい呼吸機能障害を伴うびまん性胸膜肥厚、良性石綿胸水のある場合
1,150万円
6
上記1及び3により死亡した場合
1,200万円
7
上記2、4及び5により死亡した場合
1,300万円
(注1)「じん肺法所定の合併症」とは、肺結核、結核性胸膜炎、続発性気管支炎、続発性気管支拡張症、続発性気胸をいいます。
(注2)肺がん罹患又は肺がんによる死亡を損害とする患者様について、喫煙歴が認められた場合は、10%減額されます。
(注3)国の責任期間内において、患者様が国の責任期間内に作業に従事し石綿粉じんに曝露した期間が以下の期間に満たない場合には、10%減額されます。
石綿肺及び肺がん:10年
中皮腫及び良性石綿胸水:1年
びまん性胸膜肥厚:3年
(注4)既に国から同一の事由により賠償金を得ていた場合や国以外の者(勤務先企業や建材メーカーなど)から損害賠償金や見舞金などが支払われた場合は、 その金額により給付金が減額されることがあります。
代表弁護士 阿部 豊
(東京弁護士会所属)
ASCOPEでは、
1
工場型アスベスト被害
2
建設型アスベスト被害
これらに限定されず、業務上に起因してアスベスト被害を受けた方々
(及びご遺族の方)のご相談を幅広く受け付けております。
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