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2022/10/03

従業員代表の選出

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Question

 三六協定を締結するにあたり、当社には従業員の過半数で組織する労働組合が存在しないため、過半数代表者との間で三六協定を締結することになりました。過半数代表者については、会社内には従業員のほとんどが加入している親睦団体が存在するため、その代表者を過半数代表者としています。このような経緯で締結された三六協定は有効ですか。

Answer

 過半数代表者の選出が適法とはいえず、有効な三六協定とならない可能性が高いため、あらためて適切な方法で過半数代表者を選出した上で協定を締結する必要があると思われます。

ポイント

  • ・民主的な手続により過半数代表者を選出することが重要です。

目次

1.過半数代表者の選出が必要となる場面

 労働基準法は、労働条件の最低基準や労働契約内容に対する規制を定めていますが、労使協定の締結により、現場の必要性に応じた最低基準の緩和や規制を解除が可能となるものがあります。時間外労働又は休日労働の実施につき締結すべき労使協定(労働基準法36条第1項、いわゆる三六協定)は、その一つです。
 このような労使協定の締結は、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合にはその組合(過半数組合といいます。)、過半数組合がない場合には労働者の過半数を代表する労働者(過半数代表者といいます。)との間で行う必要があります。
 また、労使協定の締結の場面以外でも、就業規則の作成や変更の際に、過半数組合や過半数代表者からの意見聴取が必要です(労働基準法90条)。

2.過半数代表者の選出方法

(1)法の規定

 以上のように、過半数代表者は重要な役割を担っています。では、過半数代表者をどのように選出すれば良いのでしょうか。
 労基法施行規則6条の2は、過半数代表者の選出について、①「監督又は管理の地位にある者」ではない、②選出の目的を明らかにして実施される「投票、挙手等の方法による手続により選出された者であつて、使用者の意向に基づき選出されたものでない」ことが必要であるとしています。
 このような規定から、使用者側が代表者を指名することが認められないのは明らかであり、選出手続を採ることは必須です。
(注)ここにいう「監督又は管理の地位にある者」とは、一般的な管理職よりも範囲が限定的であり、労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的立場にある者をいいます。

(2)過半数代表者の選出に関する判例

 それでは、質問にあるようなケースで、親睦会の選挙によって選出された会長は、過半数代表者にあたるといえるでしょうか。
 同様のケースについての判例では、会社の全従業員から構成され、選挙により選出された親睦会の会長をそのまま過半数代表者として、特段の選出手続を経ずに、締結された三六協定について、その会長が過半数代表者とは認められず、三六協定についても無効であると判断されています(※)。
 上記判例によって正当であると判断された原審は、たしかに親睦会の会長が選挙によって選出されていたが、親睦会の目的が会員相互の親睦と生活の向上、福利の増進を計り、融和団結の実をあげることにあり、労働者の自主的団体とは認められず、この親睦会の会長は、労働者の代表として選出されたわけではないとして、上記②の観点から過半数代表者と認めませんでした。

※トーコロ事件(最高裁平成13年6月22日第二小法廷判決・労判808号11ページ)

(3)採るべき選出方法

 選出方法については、選挙や挙手のみならず、話合い、持回り決議等民主的な手続であれば認められます。メールや社内イントラネット等を利用し、投票権のあるすべての労働者を対象とした投票等のシステムを用いることも認められます。どのような手続を採る場合であっても、労働者の過半数が代表となる者の選任を支持していることが明確であることが重要です。
 なお、⑴の判例に照らしても、適切な選出手続を採った結果として親睦会の代表が過半数代表者となったという場合であれば、その代表と締結された労使協定は有効であると考えられます。

3.過半数代表者の選出が違法であった場合の罰則等

 過半数代表者の選出が違法であった場合、選出された過半数代表者との間で締結された三六協定の有効性についても否定され、当該三六協定に基づく時間外労働命令の効力も否定されます。したがって、1日8時間、週40時間を超えて労働させることはできず(労働基準法32条)、これに違反した場合、6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金が罰則として定められています(労働基準法109条1号)。

川島 孝紀(かわしま たかのり)

本稿執筆者
川島 孝紀(かわしま たかのり)
法律事務所 ASCOPE所属弁護士

本稿執筆者からのメッセージ

 ここまで説明により、従業員代表の選出に問題があると、その労使協定が無効となる結果、例えば三六協定が無効となった場合には残業を適法に行えないといった企業にとって深刻な事態を招きかねないことがお分かりいただけたかと思います。
 三六協定等労使協定の締結が必要な制度の導入や就業規則の届出や変更を検討しているが、手続に問題がないかといった点でお困りの際にはぜひ弁護士にご相談ください。

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