1.フレックスタイム制とは
フレックスタイム制とは、清算期間(労使協定によって定められた、フレックスタイム制において労働者が労働すべき時間を定める期間)について、一定時間労働することを条件に、始業時刻及び終業時刻の両方の決定を、個々の労働者に委ねる労働時間制度をいいます。 フレックスタイム制には、適用される労働者であっても必ず出社しなくてはならないコアタイムと、労働者が自由に出社退社時間を選べるフレキシブルタイムを設定することができます(コアタイムを設けない形も可能)。 なお、清算期間の上限は従前1か月でしたが、法改正によって2019年4月から上限が3か月となり、より柔軟な利用が可能になりました。
2.フレックスタイム制を採用するためには
会社でフレックスタイム制を採用するためには、就業規則などに、始業と終業の両方を労働者が決める旨を記載します。 また、労使協定を締結し、次の事項を定めます。
- ①対象となる労働者の範囲
- ②清算期間(3か月以内の期間に限ります)
- ③清算期間における総労働時間
- ④標準となる1日の労働時間
- ⑤コアタイムを定める場合には、その時間帯の開始及び終了の時刻
- ⑥フレキシブルタイムに制限を設ける場合には、その時間帯の開始及び終了の時刻
- ⑦労使協定の有効期間(清算期間が1か月を超える場合)
なお、1か月を超える清算期間を定めるフレックスタイム制の労使協定は、行政官庁(労働基準監督署)へ届け出る必要があります。
3.コアタイムに遅刻した場合の対応
(1) 賃金控除の可否
前述のとおり、フレックスタイム制は、社員に始業・終業の時刻を決めさせる制度ですから、たとえ社員がコアタイムに遅刻してきたとしても、清算期間における総労働時間を満たしている場合には、賃金控除することはできません。 例えば、清算期間1か月、10時から15時までをコアタイムとしている会社において、従業員が11時に出社してきたとしても、その従業員が1か月の総労働時間分労働した場合には、賃金控除することはできません。
(2) それ以外の対応
もっとも、コアタイムの遅刻に何らの制裁も加えられないことになれば、コアタイムの遅刻が横行し、職場の秩序が乱れてしまいます。 そこで、以下のような対応が考えられます。
- ①就業規則等に、コアタイムの遅刻に対する制裁規定を設ける。
- ②皆勤手当等の制度を設けて、コアタイムに遅刻しないことを推奨する。
- ③コアタイムの遅刻を賞与の査定に反映する旨、賃金規程に記載する。
まず、①については、就業規則に列挙される減給事由に「コアタイムに●回遅刻したこと」等の条項を追加することで、導入することが考えられます。もっとも、減給額や処分に至る手続等の事情によっては減給処分が無効とされる場合もあり得ますので、実際に減給処分を行う際には弁護士にご相談いただくことをお勧めいたします。 また、②については、以下のとおり規定することが考えられます。
そして、③の規定例としては、以下の規定の仕方が考えられます。