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2025/04/15

罰則だけじゃない?最低賃金法違反の事後的なトラブルと企業イメージの危機

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Question

 万が一、最低賃金を下回る賃金を支払ってしまった場合、企業にはどのような法的リスクがあり、どのようなペナルティを科される可能性があるのでしょうか。単なる罰則だけにとどまらず、従業員との信頼関係や企業の採用活動、取引先からの信用面など、会社の経営に与える影響も無視できないと聞きます。最低賃金を守ることの重要性はわかっていても、具体的にどのような場面でトラブルが起こり得るか、詳しく教えていただきたいです。

Answer

 最低賃金法は労働者を保護する観点から、使用者に強い拘束力を持つ法律であり、いかなる理由があっても最低賃金を下回る賃金を支払うことは許されません。最低賃金法に違反していることが発覚した場合、労働基準監督署からの是正命令や支払命令、公表といった行政処分を受ける危険性が生じるなど、法的リスクが大きいだけでなく、従業員から未払賃金(最低賃金額と実際に支払った賃金額の差額)を一括で請求される可能性も高まります。さらに、最低賃金法違反の事実が発覚した場合において、社会的に「ブラック企業」と認識されてしまうと、企業のイメージ低下だけでなく、従業員の採用や取引先への信頼にも悪影響を及ぼしかねません。

 最低賃金法に違反している事実が社外に広まると、SNSや 口コミ等で急速に拡散され、「最低賃金法に違反した企業」として世間に知れ渡るおそれもあります。こうした事態を避けるためには、日頃から就業規則や給与規程を最低賃金法と整合する形で管理し、最低賃金法を含め法令を順守している姿勢を社内や社外に示すことが重要といえます。万が一、「自社が最低賃金法に違反しているかもしれない」、「資金繰りが苦しいために最低賃金が払えない」という状況であれば、違反状態を回避しつつ経営を立て直す方策を、弁護士ら専門家とともに早急に検討すべきといえます。

ポイント

  • 是正勧告や法的処分だけでなく、取引先からの信用や従業員の採用などの面で長期的なダメージが懸念される
  • 従業員からの未払賃金の一括請求のリスクと企業イメージの悪化が深刻な経営問題を引き起こす
  • 就業規則の点検や賃金制度の法的整合性の確認を怠らず、法令順守の姿勢を徹底する

目次

1. 法的リスクと行政手続の流れ

 労働者からの申告等により、最低賃金を下回る賃金設定が疑われると、まず労働基準監督署から調査が行われる可能性があります。労働基準監督署による調査の結果、最低賃金法違反の事実が認められれば是正勧告が出され、期日までに不足分を支払うなどの自主的な改善を行わなければなりません。仮に改善が見られない、あるいは違反の程度が重大であったり、悪質と判断されれば、是正命令や企業名の公表、罰金など法的処分を受けるリスクが上がります。
 また、この段階で違反が公に知れ渡ると、社外の関係者(取引先や金融機関など)の信頼を損なうおそれもあるため、違法状態の早期発見と早期是正が何よりも重要となります。特に中小企業の場合、行政や金融機関との関係性が経営継続に直結することも少なくないため、軽視できません。


2. 未払賃金請求によるキャッシュフローへの影響

 従業員に支払っていた給与の内容が最低賃金法に違反していた場合、従業員から過去に遡って未払賃金(最低賃金額と実際に支払った賃金額の差額)を一度に請求するケースも珍しくありません。多くの従業員が同時に請求を受けた場合、総額として多額の支払いを迫られる可能性もあり、それが企業のキャッシュフローを一気に圧迫する危険性も無視できません。
 さらに、未払賃金に加えて遅延損害金を負担しなければならないほか、付加金といった制裁的要素を上乗せされる場合もあり、企業にとって予想以上の出費となります。利益率の低い業種や資金繰りの厳しい中小企業にとっては、このような支払が発生することは、企業の倒産の引き金となりかねません。


3. 企業イメージの低下と採用難・取引への波及

 最低賃金法違反の事実が一度明るみに出れば、SNSやインターネットの口コミサイト等でいわゆる「ブラック企業」と認識されるリスクが高まります。こうした悪評は迅速に拡散し、かつ削除も容易でないことが多いことから、採用面で人材が集まりにくくなるだけでなく、既存の社員にも「この会社は賃金すら守れていない」という悪印象を与えてしまい、従業員の離職率が上昇するおそれがあります。
 また、取引先や顧客からも「コンプライアンス意識が低い企業」と見做されてしまい、契約更新や新規案件の獲得が難しくなる可能性もあります。特に、社会的評価を重視する大企業や自治体との取引では、企業イメージの悪化が会社にとって致命的な打撃となりかねません。


4. まとめ

 最低賃金法違反は、企業にとって行政処分や従業員からの賠償請求のリスクだけにとどまらず、企業の信用失墜や採用難、取引関係への悪影響など多方面にリスクが波及する可能性がございます。このような悪印象は、一度公に広まってしまうと、解消するまでに長期を要する可能性が高く、企業の経営にとっては取り返しのつかないダメージを招くおそれもあります。
 こうした事態を避けるためにも、就業規則や賃金規程などを定期的に確認し、問題があれば速やかに是正することが欠かせません。
 当事務所では、弁護士が最低賃金法や労働基準法の遵守状況を精査し、違反リスクを未然に防ぐアドバイスを行うほか、税理士・社労士とも連携して賃金制度や労務管理の整備をサポートできます。少しでも懸念がある企業の方は、お早めにご相談ください。

法律事務所ASCOPE 監修

本稿執筆者
法律事務所ASCOPE 監修
法律事務所 ASCOPE所属弁護士

本稿執筆者からのメッセージ

 最低賃金違反は、企業が想像する以上に深刻なトラブルをもたらします。罰則や未払賃金の一括請求はもちろん、社外への評判拡散や社員のモチベーション低下が企業経営の根幹を揺るがす事態も引き起こしかねません。
 それでも日々の経営判断に追われ、会社体勢を見直す余裕が中々ない中小企業こそ、早めに法令遵守の体制を固めることで、リスクを最小限に抑えることができます。違反が起きてからでは遅いので、違反状態が起きる前に、弁護士ら専門家の支援を活用して、自社の給与体系や就業規則の妥当性を定期的にチェックしてみてはいかがでしょうか。

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