HOME人事労務ラボその他 > カートシステムにおける「最終確認画面」への表示について

2024/12/10

カートシステムにおける「最終確認画面」への表示について

Twitter facebook

目次

【本稿は2023年10月号のニュースレターにて執筆されたものを一部更新して掲載しております】
 ASCOPEでは企業活動に関わる法改正や制度の変更等、毎月耳よりの情報をニュースレターの形で顧問先の皆様にお届けしております。
 会社法務に精通した社会保険労務士、顧問弁護士をお探しの企業様は、是非ASCOPEにご依頼ください。

1 本紙作成の目的について

 令和3年6月1日、特定商取引に関する法律(以下、単に「特定商取引法」といいます。)の改正があり、令和4年6月1日以降、EC事業(BtoC取引のECサイトを運営されている事業者様が対象となりえます。)においてカートシステム(ECカートソフトウェアを利用したオンライン上の決済システムをいいます。)を利用する事業者様(以下では単に「EC事業者」といいます。)は、カートシステムの最終確認画面(インターネット通販において、消費者がその画面内に設けられている申込みボタン等をクリックすることにより契約の申込みが完了することとなる画面が該当)において一定事項(※後記2ご参照)を記載しなければならないことになりました。
 EC事業者が、上記義務に違反することなどにより一定事項に関して消費者に誤認を与える表示をした場合、消費者は当該取引を取り消すことができることになりました。
 そこで、本紙では、法改正によりカートシステムの最終確認画面に記載することが必要となった事項を整理するとともに、これらに対応していない場合にEC事業者が被る不利益について、具体例も交えご案内いたします。

2 カートシステムの最終確認画面に記載すべき事項

 最終確認画面において記載すべき事項は以下のとおりです。

① 分量:
 商品の数量・役務の提供回数等のほか、定期購入契約の場合は各回の分量
② 販売価格・対価:
 複数商品を購入する顧客に対しては、支払総額も表示
※定期購入契約の場合は2回目以降の代金も表示
③ 支払の時期・方法:
 定期購入契約の場合は各回の請求時期も表示
④ 引渡・提供時期:
 定期購入契約の場合は次回分の発送時期等についても表示
⑤ 申込みの撤回・解除に関する事項:
 返品や解約の連絡方法・連絡先、返品や解約の条件等について、顧客が見つけやすい位置に表示
⑥ (申込期限がある場合)申込期限:
 季節商品のほか、販売期間を定めて期間限定販売を行う場合には、その申込期限を明示

*消費者庁ホームページ「貴社カートシステムでの改正法への対応について」(令和5年10月31日現在)から引用

3 「最終確認画面」に上記2記載の事項を記載しない場合や誤認を与える表示をした場合

(1)取消権の行使

 EC事業者が上記2記載の事項につき、記載をしなかったり、誤認を与える表示を行った場合に、消費者が誤認をして申込みをしたときは消費者は当該取引について取消権を行使できるものとなりました(同法15条の4)。

(2)具体的な事例の検討

 BtoC向けのECサイトにおいて、決済にカートシステムを採用しているところ、カートシステムの最終確認画面に「申込みの撤回・解除に関する事項」(購入した商品の返品はできないこと)を表示していなかった。
同サイト上で商品を購入した消費者から、当該商品が返品できないことについて、最終確認画面の見つけやすい位置に表示がされていなかったために「申込みの撤回・解除に関する事項」を誤認したとして、購入申込みを取り消したいと要望があった。
 ECサイトの運営事業者としては、「最終確認画面」には返品できない旨表示をしていなかったものの、当該商品の商品ページには「この商品は返品できません。」と記載をしていたので、消費者が誤認することなどなかったと考えている。
このようなケースで、EC事業者は返品に応じる必要があるか。

 この事例は、カートシステムの最終確認画面(購入を確定させる画面)には返品できないことを表示していなかったものの、商品を購入する際に表示される商品ページには「この商品は返品できません。」と記載していたというものです。
 このような場合においても、EC事業者は一定事項につき記載をしなかったとして、消費者からの申込みの取消し(返品)要望に応じる必要があるかどうかが問題となります。
 結論としては、本事例では最終確認画面に返品できない旨の記載が一切なく、消費者は記載がないことにより当該事項を誤認して購入したと述べていることからすれば、特定商取引法第15条の4の取消権を行使された場合には、EC事業者は返品に応じなければならないリスクが高いものと考えられます。
 たしかに、ECサイト上の最終確認画面までの商品ページ自体には「この商品は返品できません。」と記載されており、通常、商品ページを見た消費者は当該商品が返品できないとの表示を確認することから、最終確認画面に申込みの撤回等に関する記載がなかったとしても「申込みの撤回・解除に関する事項」を誤認することはなかったと考える余地もありそうです。
 しかし、今回の改正法については、EC事業者に対して、決済にかかる「最終確認画面」に一定の事項を記載するよう義務付け、もってECサイト利用者(消費者)に当該事項につき誤認を生じさせないこと企図したものであることからすれば、最終確認画面に記載されていなかった事実は、それ自体消費者の誤認を生じさせるものとして、裁判所で争われた場合には取消権の行使が認められるリスクが高いと考えられます。

4 表示方法のご案内

 以上述べたところを踏まえると、消費者に対する誤認を生じさせないという観点からは、2に記載した事項(法第12条の6第1項第2号、同法第11条第第5号所定の事項)は、最終確認画面上に網羅的に記載することが望ましいといえます。
 もっとも、カートシステムの仕様等により、最終確認画面上に全てを記載することでかえって消費者に分かりづらくなるなど、最終確認画面に全て記載する方法が相当でない場合も想定されます。
 そのような場合には、
① 最終確認画面上には商品や価格等の基本的な事項を表示し、
 かつ、
② 最終確認画面内にリンクを設け、リンク先を確認することを利用者(消費者)に求める表示をし、必要な記載事項はリンク先で容易に確認できるようにする といった対応方法も考えられます。

以上の記載方法、その他「最終確認画面」を通じて掲載する必要がある事項につきましては、消費者庁作成の資料が参考となりますので、併せてご参照ください。

以上

田畑 優介(たばた ゆうすけ)

本稿執筆者
田畑 優介(たばた ゆうすけ)
法律事務所 ASCOPE所属弁護士

労働問題に関する
このようなトラブル
悩んでいませんか?

お問い合わせ

ご相談は以下まで、
お電話・メール・LINEにて受付ております。

相談のご予約はLINEが便利!

法律事務所ASCOPEを友達に追加しよう!

対応時間:平日10時~19時

「友だち追加」ボタンをタップ頂くことで
ご登録頂けます。

受付では、
一旦下記についてお聞きいたします。

法人名(ご担当者名)/ 所在地 / 電話番号 / 相手方氏名(コンフリクト防止のため)/
相談内容の概要(相手方代理人名、次回期日、進捗状況等)/
ご来所可能日時

TOP