1. 助成金・補助金の活用例
国や自治体では、中小企業が賃上げや職場環境改善を行う際に利用できる助成金や補助金をいくつか設けています。代表的なものとしては、業務改善助成金やキャリアアップ助成金などが挙げられ、要件を満たせば賃金引き上げと業務効率化をセットで進める際の費用を部分的に支援してもらえる可能性があります。 ただし、助成金には申請要件や期限が設定されていることが多いため、税理士や社労士と協力しながら準備を進めると申請がスムーズです。一度使ってみると、自社の投資に対するハードルが下がり、結果的に生産性向上にも寄与するケースがあります。経営者としては「助成金ありき」ではなく、今後の経営戦略に合致するかどうかを見極めたうえで活用を検討されるとよいでしょう。
2. IT化・業務効率化による生産性向上
人件費が増大する背景には、業務効率が低く付加価値があまり生み出せない構造的な問題も考えられます。単に賃金を引き上げるだけでは、経営の収益構造が改善されないままで、企業体力を損なう危険性があります。そこで、業務プロセスを洗い出して無駄を削減し、従業員一人あたりの生産性を向上させるという発想が不可欠です。 具体的には、POSレジやセルフレジを導入してレジ業務の負荷を減らし、従業員をより付加価値の高い仕事(顧客対応や企画など)に回す方法があります。また、勤怠管理システムの電子化によって事務作業を軽減し、正確な労働時間管理を可能にすれば、残業代の未払などのリスクも減らせます。さらに、在庫管理や顧客管理のクラウド化でデータを一元管理することで、重複してしまう作業や在庫ロスを削減し、コスト削減を図ることも可能です。
3. 労務管理の充実と従業員との連携強化
最低賃金アップへの対応策を実施するうえで、経営者と従業員の相互理解が何より重要です。ときに、賃上げに伴うコスト削減策として業務効率化を進めると、従業員側に「厳しい管理が始まるのでは?」という不安が生じるかもしれません。そこで、業務効率化の背景と狙いを丁寧に説明し、会社を働きやすくするための取組みであるというメッセージを共有すると、協力を得やすくなります。 また、就業規則や労働条件通知書を改定して、最低賃金の変更が生じた場合のルールや未払賃金を発生させないためのチェック体制を明確化すると、トラブル防止につながります。以上のように、労務管理の充実と従業員との連携強化を行うことで、従業員の納得感が高まり、離職率の低下やサービス品質向上という形で経営面にもプラスが期待できます。
4. まとめ
最低賃金の引き上げは、経営者にとってただのコスト増と感じられるかもしれません。しかし、助成金・補助金を上手に活用して一時的な負担を軽減したり、業務効率化で従業員の生産性を上げることで、長期的には利益を確保しながら会社を成長させる可能性があります。さらに、労働条件の見直しや従業員との丁寧な連携を行えば、職場の士気の向上にもつながるでしょう。 当事務所では、弁護士が労務面の法的リスクを回避するアドバイスを行い、税理士・社労士との協力によって助成金や給与テーブル見直しの実務サポートも提供可能です。最低賃金の引き上げへの対応を、単なるコスト増ではなく経営改革のチャンスと捉えてみたい方は、ぜひお気軽にご相談ください。