1.年休の買取りに関する基本事項について
年休制度(労基法39条)の基本事項については、別の記事で紹介したとおりですが、簡単におさらいをすると、年休は「6か月間継続勤務」し、「全労働日の8割以上出勤」した労働者に有給休暇を取得する権利を法律上付与する制度です。この年休制度の趣旨は、労働者に対し給料が保障された状態において休日を取得する権利を付与することで労働者の健康面に配慮するというものです。すなわち、法律は労働者に対し、現実に休日を取得させることを目的としているのであって、休日を与える代わりにお金を払えば良いとしているのではないということです。
したがって、年休が法律上付与されている部分については、現実に労働者に休日を与えなければならないのであり、年休の買取りを行って年休を取得させたことにするということは許されないということになります。これに違反すると労基法違反として罰則が科される可能性がある(労基法119条1号)ため注意が必要です。
2.年休の買取りが可能な場合について
原則として、年休の買取りはできませんが、以下のような例外的な場合に、年休を買取ることができます。厳密に言うと以下の⑵は法律上年休が付与された部分ではないのですが、一般的に「有休(年休)」として考えられていることが多いため、ここでは説明に加えています。
(1) 退職予定者の年休
例として、退職日が決まった従業員について、年休が25日残っているというケースを想定します。当該従業員は退職日までにできる限り年休を消化することとしましたが、引継ぎ等の関係で退職日までに14日間の年休を消化することができないということになりました。
このような状況下において、従業員から消化できなかった14日間の年休を会社側に買取るよう申出があった場合には、会社側がこれに任意に応じることは可能です。
なぜなら、この場合には、従業員が退職予定であるため、今後労働者が実際に年休を取得することができないからです。
なお、この場合に年休の買取り額については法律上額が定められているものではないので労使間で協議をして決定することになります。就業規則において年休を買取る場合の金額が定められている場合にはそれによるということになりますが、必ず月給の日割額を支払わなければならないというものではありません。
(2) 特別休暇に係る年休
法律上付与することが義務づけられている年休とは別に、会社が特別休暇として有給休暇を与えている場合があります。このような特別休暇については、そもそも会社が付与するかどうかについて自由に決めた部分ですので、買取るかどうかという部分についても自由に決めることができます。
(3) 時効消滅した年休
年休は、発生日から2年経つと時効により消滅します(労基法115条)。時効消滅した部分について会社側はこれを付与する義務はなくなりますので、どのように処理するかについて自由に決定できるということになります。