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2022/03/01

労基署対応について

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Question

 突然、労働基準監督署から連絡があり、監督官が立入調査を行うとのことでした。
(1)労働基準監督官が行う立入調査とはどういうものでしょうか。
(2)立入調査後の流れを教えてください。
(3)是正勧告がなされた場合、従わなければならないでしょうか。

Answer

 労働基準監督官の立入調査は、臨検監督ともいい、労働基準法や安全衛生法などの各種労働関係法令の遵守の有無を確認する目的で、会社の事業場に立入り、会社の労働実態を把握するため、帳簿・書類の提出を求めたり、使用者や従業員にヒアリングを行ったりするものです。
 仮に、立入調査の結果、法令違反が認められた場合、基本的には、直ちに罰則が適用されるものではなく、差し当たって、改善指導や是正勧告がなされますが、是正勧告に従わない等の悪質な場合には、会社や使用者に対して罰金や懲役などの刑事罰が科される可能性があります。

ポイント

  • ・労働基準監督官(労働基準監督署)が行う立入調査(臨検監督)は、会社が各種労働関係法令を遵守しているかどうかを確認する目的でなされるものであり、事業場の施設や労働環境の確認、帳簿・書類の提出の要求、及び使用者や従業員のヒアリング等を行います。
  • ・立入調査後、改善が必要な点について改善指導がなされ、法令違反が認められる場合には、是正勧告がなされます。この際、改善・是正等の実施事項ごとに期限が定められるため、期日までに指摘された点について改善・是正をした上で、労働基準監督署に是正報告書を提出します。
  • ・是正勧告等に従わない場合、労働基準法上、その法令違反の内容ごとに罰金又は懲役の刑事罰が定められており、使用者が逮捕、又は会社若しくは使用者に刑事罰が科されるおそれがあります。

目次

1.労働基準監督官が行う立入調査について

 労働基準監督署の労働基準監督官は、各種労働関係法令の遵守の有無の確認を目的として、事業場、寄宿舎その他の附属建設物に臨検し、帳簿及び書類の提出を求め、又は使用者若しくは労働者に対して尋問を行うことができるとされており(労働基準法第101条第1項)、会社における立入調査(臨検監督ともいいます。)を行う権限を有しています。
 立入調査については、会社側は拒否することはできず、基本的にはご質問のケースのように事前に労働基準監督署から電話等により連絡が来ることが多いですが、抜き打ちで会社に訪問するケースもございます。
 立入調査については、会社における労働関係に関する資料(就業規則・賃金規程等の社内規程、雇用契約書、給与明細及びタイムカードなどの労働条件や労働環境・労働実態が分かる一切の資料)の提出を求められます。また、労働基準監督官らからの使用者(会社の責任者)へのヒアリングはもとより、実際に事業場内の立入りや従業員へのヒアリング等がなされ、会社の労働実態を把握し、各種労働関係法令を遵守しているかどうかについての確認がなされることとなります。
 なお、この立入調査が行われる契機については、労働基準監督署における年度の監督計画に基づき、定期的になされる調査、労働災害が生じたときになされる調査、及び労働者の申告に基づきなされる調査等、様々なケースがあります。

2.立入調査後の流れについて

 立入調査により、会社の労働条件や労働環境・労働実態の確認がなされた後、労働基準監督署の労働基準監督官が会社において改善が必要な点を認めた場合、その点について改善指導がなされます。また、各種労働基準関連法令に抵触又は同法令の違反が認められる場合には、是正勧告がなされます。これらの改善指導や是正勧告がなされると、その改善指導や是正勧告の対象となる項目が記載された指導票や是正勧告といった書面が交付されます。また、当該書面においては、改善・是正等の実施事項ごとに改善・是正の期限が定められています。
 会社としては労働基準監督署(労働基準監督官)に対して、その実施事項ごとに指定された期限までに、改善・是正をし、改善・是正したことを書面(是正報告書)で報告する必要があります。
 なお、労働基準監督官が定めた改善や是正等を行う期限について、どうしても間に合わない場合は、その旨を労働基準監督官に相談することで、期日の変更や期限を延長してもらうことが可能な場合もあります。

3.是正勧告等に従わない場合のペナルティについて

 会社としては、労働基準監督官から立入調査の結果、各種労働関係法令違反が認められた場合であっても、極めて悪質な場合を除き、直ちに罰則等が科されるケースはなく、上記のとおり、まずは、各種労働関係法令違反の項目を指摘した是正勧告がなされます。
 ただし、労働基準監督官から是正勧告がなされた場合において、労働基準監督官が定めた期日までに是正報告書を提出せず、その是正勧告に従わなかった場合、その法令違反の内容ごとに定められた罰金刑又は懲役の刑事罰が科される可能性があります。たとえば、36協定を労働基準監督署に提出せずに時間外労働等をさせた場合には、「六箇月以下の懲役又は三十万円以下の罰金」の罰則が定められており(労働基準法119条第1号)、懲役刑も予定されていることから、決して軽微な罰則ではありません。
 なお、労働基準監督官については、労働基準法違反に関しては、刑事訴訟法における司法警察員の職務を行う(すなわち逮捕や刑事訴訟法上の捜査等をする権限を有する)とされており(労働基準法第102条)、立入調査や是正勧告がなされた場合については、会社としては慎重な対応を行う必要があります。

堀本 圭祐(ほりもと けいすけ)

本稿執筆者
堀本 圭祐(ほりもと けいすけ)
法律事務所 ASCOPE所属弁護士

本稿執筆者からのメッセージ

 以上のとおり、会社としては、労働基準監督署の労働基準監督官が行う立入調査及び是正勧告に関して、刑事罰が科される可能性があることはもとより、昨今のコンプライアンス重視の観点からも、十分な準備や慎重な対応を行う必要があります。
弊所では、立入調査や是正勧告等の対応も行っておりますので、詳しくは弁護士までご相談ください。

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